「クロスファイア」
2000年6月10日公開。
主演の矢田亜希子が超能力者に。
原作:宮部みゆきのミステリー・ファンタジー小説「クロスファイア」
脚本:山田耕大、横谷昌宏、金子修介
監督:金子修介
主題歌:Every Little Thing 『The One Thing』
キャスト:
- 青木淳子:矢田亜希子 - 主人公。念力放火能力(パイロキネシス)を持つ異能者。普段はOLとしてひっそり暮らしている。
- 少女時代の淳子:仲根紗央莉
- 多田一樹:伊藤英明 - 淳子の同僚。淳子に好意を持つ。
- 石津ちか子:桃井かおり - 寺町東署の刑事。部下の牧原と共に女子高生連続殺人事件と焼死事件の謎を追う。
- 牧原康明:原田龍二 - 寺町東署の刑事。幼い頃の淳子に弟を殺された過去を持つ。
- 倉田かおり:長澤まさみ - パイロキネシスやサイコメトリー、念写能力を併せ持つ異能者。養護施設で暮らしている。
- 木戸浩一:吉沢悠 - 相手に触れて意志を自在に支配する「押す」力を持つ。同じ異能者として淳子に接触を図る。
- 小暮昌樹:徳山秀典 - 未成年犯罪者グループの首謀者。人を殺すことが趣味の極悪人で、マスコミの前でも大口を叩く。
- 長谷川芳裕:永島敏行 - 警視庁刑事部部長。
- 野坂永治:石橋蓮司 - 寺町東署の署長。
- 小暮泰三:本田博太郎 - 昌樹の父で、高名な社会評論家。
- 多田雪江:浜丘麻矢 - 一樹の妹。淳子と親しくなるが、小暮グループに惨殺される。
- 青木美幸:筒井真理子 - 淳子の母で故人。淳子を戒めながら育てた。
- 浅羽利光:螢雪次朗 - 光文社で働く週刊誌記者。小暮グループの取材を行っていた。
- 高田一郎:宮地謙典 - 未成年犯罪者グループの一員。
- 高田二郎:森本英樹 - 未成年犯罪者グループの一員。
- 叶仁志:大川知英 - 未成年犯罪者グループの一員。
- 上杉:TOMO - 未成年犯罪者グループの一員。
- 三田奈津子:日下部留美 - 浅羽の助手。
- 神崎:水木薫 - かおりを育て上げた養護施設の職員。
- 藤木裕太朗:谷原章介 - 野坂の部下で右腕的存在。
あらすじ:
ひっそりとしたOL生活を送る淳子(矢田亜希子)には、人には言えない不思議な力があった。
それは、念力で物や人を燃やす念力発火能力=パイロキネシス。
ある日、淳子がほのかな想いを寄せている同僚・一樹(伊藤英明)の高校生の妹・雪江が惨殺された。
犯人は、女子高生連続殺人事件の容疑者である木暮昌樹(徳山秀典)とそのグループ。
だが、未成年である彼らは社会的な制裁を逃れ、更なる事件を繰り返すのであった。
そんな昌樹たちに一樹は復讐を誓うが、それを知った淳子は彼の代わりに、押さえていたパイロキネシスを使って制裁を加えることを決意する。
ある日、相手に触れて意志を自在に支配する=”押す”力を持つ、浩一という青年が淳子の前に現れた。
彼は、淳子に協力し昌樹たちの居場所を教えてくれるが、彼女は後一歩のところで昌樹を逃がしてしまう。
一方、寺町東署の刑事・石津ちか子(桃井かおり)と牧原康明(原田龍二)は、女子高生連続殺人事件の容疑者たちの焼死事件と淳子の関連に気づき、捜査を開始していた。
そんな中、パイロキネシスと触れるだけで相手の心を読むサイコメトリー、そして念写能力を併せ持つ異能力者・かおり(長澤まさみ)によって、一連の事件の黒幕が警視庁刑事部部長・長谷川(永島敏行)であることが判明する。
法で裁けない犯罪者を裏で制裁するうち、自分を神だと思うようになった長谷川。
彼は”ガーディアン・エンジェル”なる秘密組織を構成し木暮たちに人殺しをさせる一方で、浩一たち能力者を操り、人の命を恣に弄んでいたのだ。
そんな彼の歪んだ行状を知った淳子は、たったひとりで長谷川たちに闘いを挑んでいく。
閉園間際の遊園地、人質に取られたかおりを救い、木暮昌樹を灼き殺す淳子。
だが、彼女は長谷川の撃った凶弾に倒れ、自ら放った炎に包まれてしまう。
それから数日後、事件の記者会見場で長谷川が焼死した。
淳子は、火になって生き続けていたのだ。
コメント:
宮部みゆきのミステリー・ファンタジー小説の映画化。
超能力を持ってしまった者の悲しみを描き、深い感動を与えるサスペンス・ドラマである。
矢田亜希子が超能力を持つヒロインを演じ、恐ろしいまでの輝きを放っている。
デビューしたばかりの長澤まさみが陰のある異能の少女を演じており、まだあどけないながら存在感を示している。
本作のテーマは「パイロキネシス」だ。
念力発火能力と訳されることもあるという。
この超能力を持て余す孤独な女性・淳子を矢田亜希子が演じている。
身体に溜まり、蓄積して行く熱を放出する為に、毎晩プールへ通う 両腕を一気に水へ突っ込む。
すると、瞬く間に水は温度を上げ、やがて沸騰するほどまでに上昇する。
突然現れるあり得ない光景に、観る者はこの映画の恐ろしさを感じる。
自らの存在を否定するかのように世間から距離を置きひっそりと暮らす淳子。
母親からはその力を封印し人の目に触れさせないようにしつけられた。
望まない力を持ってしまった者の孤独と悲しみが伝わってくる。
観る者は、そんな彼女に知らず知らず感情移入して行く。
そんな淳子の身近な人間が乱暴され殺される事件が起こる。
淳子の正義感がメラメラと燃え始め、悪徳非道な犯人を見つけ出す決意をし、自ら危険な世界に足を踏み入れて行くのだ。
この感情の変化を描くキャメラが良い。
着地点はやや荒唐無稽ながら、キャストの豪華さと温かみで魅せるエンドまでの途中経過も良い。
伊藤英明と矢田亜希子との儚い恋物語も見所だ。
所帯じみた叔母さん刑事の石津ちか子は宮部作品ではお馴染みだが、本作では原作と違う外見の桃井かおりが演じている。
後輩刑事の牧原康明(原田龍二)とのからみも実に味がある。
これがとても良い。
やはり、桃井かおりという女優は自分の個性をしっかり認識している。
原作とは異なる新たなキャラクターで観客を魅了させることができるのだ。
この映画は、長澤まさみの映画デビューとなった記念すべき作品だ。
パイロキネシスやサイコメトリー、念写能力を併せ持つ恐るべき少女を演じている。
パイロキネシスというのは、念力で火を発生させることのできる能力である。
サイコメトリーとは、物体に残る人の残留思念を読み取る能力のことだ。
デビュー作からこんな化け物のような人物を演じているのは、将来この女優が大化けすることを予感させる。
長澤まさみは、第5回(1999年度)東宝「シンデレラ」オーディションに応募し、35,153人の中から2000年1月9日に当時、史上最年少の12歳(小学6年生)でグランプリに選ばれ、芸能界入りした。
そして、同年すぐに本作でデビューしてから、順調にテレビドラマと映画の世界で成長し、2020年度日本アカデミー賞で最優秀主演女優賞を獲得するまでになっている。
今後もこの人の卓越した演技力に期待したい。
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