「刑事ジョン・ブック/目撃者」
(原題: Witness)
1985年2月8日公開。
アーミッシュの人々と触れ合うことになる刑事を描く異色サスペンス。
興行収入:$68,706,993。
受賞歴:
1985年 第39回 英国アカデミー賞 作曲賞
1985年 第28回 ブルーリボン賞 外国作品賞
1985年 第58回 アカデミー賞 作品賞
脚本:ウィリアム・ケリー 、 アール・W・ウォレス
監督:ピーター・ウィアー
出演者:
ハリソン・フォード 、 ケリー・マクギリス 、 ルーカス・ハース 、 ダニー・グローバー 、 ジョセフ・ソマー 、 アレクサンダー・ゴドノフ 、 ジャン・ルーブス 、 パティ・ルポン 、 ヴィゴ・モーテンセン
あらすじ:
ペンシルヴァニア州の片田舎。文明社会から離れ、厳格な規律に従って今なお17世紀の生活様式で暮らしている信徒一派アーミッシュ(アンマン派信徒)の村で、ジェイコブ・ラップの葬儀が行なわれていた。
未亡人となった妻レイチェル(ケリー・マクギリス)と6歳の息子サミュエル(ルーカス・ハース)、そして父親のイーライ(ヤン・ロービッシュ)は、隣人達の助けで、なんとか農場での暮らしを続けることができた。
数カ月後、レイチェルは、サミュエルと共に妹の住むボルチモアに旅する決心をした。
レイチェルにほのかな慕情を抱くダニエル(アレクサンダー・ゴドノフ)らに見送られ、2人は汽車に乗り込んだ。
フィラデルフィア駅で乗り継ぎの列車を待つ間にトイレに入ったサミュエルは、恐ろしい殺人事件を目撃した。
フィラデルフィア警察のジョン・ブック警部(ハリソン・フォード)と彼のパートナー、カーター(プレント・ジェニングス)は、サミュエルから事情を聞き出すため、彼ら母子を署に案内し容疑者の確認を求めた。
その夜はブックの妹イレーン(パティ・ルポーン)の家で明かしたレイチェルとサミュエル。
翌日、1枚の写真がサミュエルの目にとまった。
それは、麻薬事件の成績を賛えられた麻薬課長マクフィー(ダニー・グローヴァー)の新聞の切り抜き記事で、サミュエルは彼が犯人だとブックに告げた。
早速、そのことを警察副部長シェイファー(ジョセフ・ソマー)に伝えるブック。
警察本部から大量の麻薬が消えた事件にもマクフィーが関係していのではないかとも指摘した。
自分のアパートに戻ったブックは、マグナム銃を掲げたマクィーに急襲され負傷した。
シェイファーもマクフィーの仲間であることに気づいたブックは、傷つきながらイレーンの家に行き、サミュエルとレイチェルに出発の準備を促すとともに、カーターに連絡し、ファイルから親子の名をはずし、2人の悪徳警官に気をつけるよう忠告した。
ブックは、母子を農場に送り届けたが、その帰り傷が悪化し気を失う。
イーライが呼んだ療法師のおかげで数日後、ブックは回復した。
同じ頃、フィラデルフィアでは、シェイファー、マクフィー及び仲間のファーシー(アンガス・マッキネス)がブックらの居所を突きとめようと躍起になっていた。
しかし、アンマン派信徒達は外界との接触がなく、彼らの許に身を隠しているブックを見つけるのは、殆ど不可能であることを彼らは知った。
一方、体力が回復したブックは農場での手伝いを申し出て、牛の乳しぼりに励んだりしていた。
そうした日々を送るうちに、ブックはレイチェルと心を通わせるようになり、ある夜、2人はいっしョにダンスを踊った。しかしレイチェルはブックを好きになるわけにはいかなかった。
もしそうなったら、アーミッシュの規律に従い、彼女は教会から追放される運命にあるのだ。
村の納屋建設に加わって大工仕事に精を出した日の夜、ブックは入浴中のレイチェルと居合わせるが、ただ立ちつくすだけだった。
翌朝、ブックは、カーターが殺されたことを町からかけた電話で知り、シェイファーへの復讐を誓った。
その帰り道、チンピラにからまれたダニエルの態度から、彼らの非暴力主義を目の当たりにしたブックは、我慢できずにチンピラを殴ってしまった。
この事件から、シェイファーらがブックの所在をつきとめた。
ペンシルヴァニアの田舎道にシェイファー、マクフィー、ファーシーらがやって来た。
やがて、ブックと彼らとの死闘が開始された。
マクフィーとファーシーを倒したブックに、レイチェルを人質にとったシェイファーの悪の手がのびた。
だがその時、非暴力を訴えるアンマン派信徒たちがやってきて、彼らの無言の力にシェイファーは遂に屈したのだった。
コメント:
タイトル通り殺人事件の「目撃者」となったアーミッシュの少年とその母親を守ろうとする刑事の格闘を描いたサスペンス映画である。
その一方で、キリスト教の非主流派として非暴力で前近代的な生活を営むアーミッシュと刑事との文化的交流や恋愛模様を描いたヒューマンドラマとしての色合いが強いのも特徴的である。
レイチェル役のケリー・マクギリスが素晴らしい。
義父役、子役などそれぞれの役者も、リアリティがあり見応え十分。
事件よりもアーミッシュという独特な世界での美しくも儚いラブ・ストーリーである。
オープニングの駅のトイレ内での殺人シーンを目撃する少年の姿が衝撃的だ。
エンディングでのハリソン・フォードと敵役のシェイファー一味との殺し合いの場面もすごい迫力。
ハリソン・フォードとケリー・マクギリスとの熱愛シーンは現実感があり、最高のラブシーンになっている。
熱愛関係になるアーミッシュの女性を演じたケリー・マクギリスは、ゴールデン・グローブ賞及び英国アカデミー賞にノミネートされた。
本作後は、ご存じ「トップ・ガン」で、トム・クルーズと恋仲になるチャーリーを演じて一世風靡することになる。
アーミッシュとは、アメリカ合衆国のペンシルベニア州や中西部、カナダのオンタリオ州などに居住するドイツ系移民の宗教集団である。
アメリカのキリスト教者共同体だが、 移民当時の生活様式を保持し、農耕や牧畜によって自給自足生活をしていることで知られる。原郷はスイス、アルザス、シュワーベンなど。
2020年時点での推定人口は約35万人とされている。
アーミッシュには「オルドゥヌング」という相当変わった戒律があり、原則として快楽を感じることは禁止される。
以下のような規則を破った場合、懺悔や奉仕活動の対象となる。
改善が見られない場合はアーミッシュを追放され、家族から絶縁される。
- 屋根付きの馬車は大人にならないと使えない。子供、青年には許されていない。
- 交通手段は馬車(バギー)を用いる。これはアーミッシュの唯一の交通手段である。
- アーミッシュの家庭においては、家族のいずれかがアーミッシュから離脱した場合、たとえ親兄弟の仲でも絶縁され、互いの交流が疎遠になる。
- 怒ってはいけない。
- 喧嘩をしてはいけない。
- 読書をしてはいけない(聖書と、聖書を学ぶための参考書のみ許可される)。
- 賛美歌以外の音楽を聴いてはいけない。
- 避雷針を立ててはいけない(雷は神の怒りであり、それを避けることは神への反抗と見なされるため)。
- 義務教育以上の高等教育を受けてはいけない(大学への進学など)。
- 化粧をしてはいけない。
- 派手な服を着てはいけない。
- 保険に加入してはいけない(予定説に反するから)。
- 離婚してはいけない。
- 男性は口ひげを生やしてはいけない。
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