「スローなブギにしてくれ」
1981年3月7日公開。
ふと知り合った二人の男と一人の女を描く。
配給収入:3億8500万円。
原作:片岡義男「スローなブギにしてくれ」
脚本:内田栄一
監督:藤田敏八
音楽:南佳孝
キャスト:
- さち乃:浅野温子
- ゴロー:古尾谷雅人
- ムスタングの男:山崎努
- 敬子:浅野裕子
- 由紀江:竹田かほり
- クイーンエリザベスのマスター:室田日出男
- さち乃の母春代:春川ますみ
- 花絵:赤座美代子
- 花絵とムスタングの男の娘マリ:小林綾子
- ハーレーの女:宮井えりな
- 弁護士:伊丹十三
- 飲み屋の主人:奥田瑛二 ※ノンクレジット
- クイーンエリザベスの常連:岸部一徳
- クイーンエリザベスの常連:鈴木ヒロミツ
- クイーンエリザベスの常連:きくち英一
- 作業服の男A:高橋三千綱
- 作業服の男B:和泉聖治
- 自転車に乗る男:角川春樹
- テレビカメラマン:林美雄
- 老父:浜村純
- 老母:滝奈保栄
- 刑事:石橋蓮司
- 牛どん屋の店長:鶴田忍
- 宮里輝男:原田芳雄
あらすじ:
夕暮の第三京浜。
白いムスタングから仔猫と若い女の子が放り出され、後ろから来たオートバイの少年に救けられた。
こうして出会ったゴロー(古尾谷雅人)とさち乃(浅野温子)は一緒に暮しはじめた。
ムスタングの男(山崎努)は、福生の旧米軍ハウスに住み、仕事仲間の輝男(原田芳雄)と敬子(浅野裕子)のカップルと同居している。
敬子には、どちらが父親かわからない子供がいるが、今は妹の由紀江(竹田かほり)が面倒を見ている。
三人は奇妙な均衡の中で暮していた。
ある朝、輝男がジョギング中に心臓発作で死んでしまった。
一方、さち乃は行きつけのスナック、クイーンエリザベスでバイトをはじめた。
ゴローはバイト先で喧嘩して仕事を辞めてしまい、またさち乃と客の仲を嫉妬してふらりと何処かへ出かける。
その寂しさからさち乃はムスタングの男に連絡を取り、季節外れの高原ホテルに旅行に出かける。
実はムスタングの男がこのホテルに来た目的とは、別居中の妻との離婚の書類にハンを押すためと、子供のピアノの発表会を見に行くためだった。
さち乃は、男が泥酔して帰って来たことと、子供から電話がかかってきたことから事情を察するのだった。
再びゴローとさち乃の生活が始まった。
ある日、さち乃が作業服の男たちに強姦された。
ゴローは、傷ついたさち乃に心無い言葉を投げかける。
その後ゴローは、必死で男たちを捜して目茶苦茶に叩きのめした。
ごきげんなゴローにさち乃は「あたしよりも仇を討つことしか考えないの」と咳く。
たまらずさち乃は再びムスタングの男と会い、彼の家に身を寄せることになる。
しかしそこには敬子と由紀江と赤ん坊が同居しており、さち乃はそんな生活に馴染めず、結局ハウスから去って行く。
彼女が出ると同時に、敬子は男と別れることを決意し、由紀江と赤ん坊を連れて出ていく。
消えたさち乃を求めて、ムスタングの男はゴローを訪ねる。
ところがゴローは、例の作業服の男たちに襲われ、中へ割って入った男は腹を刺されてしまう。
三ヵ月の重傷。
病院に見舞いに来たさち乃は、今度こそキッパリと男に別れを告げるのだった。
スナックでしょげているゴローのところにさち乃が戻って来た。
素直に喜べないゴローに、マスターが選んだ曲は「スローなブギにしてくれ」。
やがて再び夏が来た。
さち乃はゴローの子供を身ごもっていた。
そんな時、海から引き揚げられた白いムスタングには女の死体があった。
助かった男に、刑事が女との関係を聞くと、男はこう答えるのだった。
「拾った、今度は猫は連れてなかった・・・」
コメント:
原作は、片岡義男の短編青春小説。オートバイに乗る高校生の少年と、猫を溺愛する家出少女の出会いと不器用な同棲生活を描いた作者の代表作のひとつである。
『野性時代』(角川書店)1975年8月号にて発表され、第2回野性時代新人文学賞を受賞、第74回直木賞候補作となった。
何といっても、この映画の主題歌にもなった南佳孝の同名の曲が大ヒットしたことが記憶に新しい。
流行っていた片岡義男の小説、お洒落なミュージシャン・南佳孝、憧れた原田芳雄、山崎努。
絵に描いたような角川映画真っ盛りの作品だった。
ムスタングを乗り回している中年男(山崎努)と捨て猫を拾ってくる女子高生(浅野温子)、それにバイク愛好家の若者(古尾谷雅人)という、三者の恋物語。
ムスタングは妻子がいながら別居して別の男女と共同生活、女子高生はいわゆるズベ公だが、セックスには割と固い。
ライダーは定職を持たず、気ままに生きている若者。
女子高生は捨て猫を拾ってくるが、たぶん自分の境遇と重ね合わせているのだろう。
ムスタング親父は世をすねているような感じ。
この3人がいろいろあって、あっちへ行ったりこっちへ来たり。
何を言いたいのか分からない感じだが、藤田敏八の映画の中では一番分かり易い青春ものだ。
主役の浅野温子が最高!
当時彼女はちょうど20歳。
こういうずべ公的な役どころが似合っていて、好感が持てる。
当時の映画というのは、自分自身の周りにいる人たちとは異なる人物と、異なる世界が観れる、独特の場だった。
特に、絶対にしてはいけない殺人とか強姦のような行為を映像で密かに見られる所だったのだ。
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