「狼たちの午後」
(原題: Dog Day Afternoon)
1975年9月21日公開。
実際の銀行強盗事件を映画化。
アル・パチーノ主演のサスペンス作品。
興行収入:$50,000,000。
受賞歴:
1975年 第29回 英国アカデミー賞 主演男優賞(アル・パチーノ)
原作:
P・F・クルージ 、 トーマス・ムーア |
脚本:フランク・R・ピアソン
監督:シドニー・ルメット
出演者:
アル・パチーノ 、 ジョン・カザール 、 チャールズ・ダーニング 、 ジェームズ・ブロデリック 、 クリス・サランドン 、 ペニー・アレン 、 キャロル・ケイン 、 サリー・ボイヤー 、 ランス・ヘンリクセン
あらすじ:
1972年8月22日。ニューヨークは36度といううだるような暑さだった。
その日の2時57分、ブルックリン三番街のチェイス・マンハッタン銀行支店に3人の強盗が押し入った。
強盗は10分もあれば済むはずだった。
だが3人の1人、ロビーがおじけづき、仲間をぬけた。
しかし、ソニー(アル・パチーノ)とサル(ジョン・カザール)にとってそれ以上に予想外だったのは、銀行の収入金が既に本社に送られた後だったことだ。
残された1100ドルの金を前に途方に暮れるソニーのもとに突然、警察から電話が入った。
銀行は完全に包囲されているから、武器を捨てて出てこいというのだ。
事態は急変した。
警官とFBI捜査官250人を超す大包囲網の中で、追いつめられた平凡な2人の男は牙をむいた。
銀行員9人を人質にしたのだ。
3時10分を少し廻ったところだ。
つめかけるヤジ馬、報道陣の中でモレッティ刑事(チャールズ・ダーニング)の必死の説得が行われた。
だが時間は無駄に流れていった。
ソニーたちの説得に昇進をかけるモレッティの心をよそに、すべて2人の言いなりになければならない警察側とTV報道のインタビューに応える狂人側という状態で、次第にソニーとサルは群衆たちから英雄視され始めた。
周りがどっぷり夕闇につかった頃、銀行内では犯人と人質たちとの間に奇妙な連帯感のようなものが芽ばえてきた。
ついに今まで静観していたFBIのシェルドン(ジェームズ・ブロデリック)が動き出した。
モレッティとは対照的に冷静な態度でソニーに近づき、犯罪者の心理を見すかしたように優しく、そして時には力強い口調でソニーに投降を勧めてきた。
ソニーとしてもこの説得に心が動かなかったわけではなかったが、一途に成功か死かのいずれかしかないと信じ込んでいるサルを裏切ることは出来なかった。
ソニーの母と妻と愛人たちによる説得工作もすべて失敗に終わった警察側は、ついにソニーたちの要求通り国外逃亡用のジェット機を用意せざるをえなかった。
銀行から空港まで、息づまるような緊張に充ちた移動が開始される。
警官が運転するマイクロバスが空港に到着し、拳銃を持ったサルが降りようとしたとき、一瞬のスキを狙って警官が発砲した銃弾はサルのひたいを撃ち抜いた。
--そして現在、捕えられたソニーは20年の刑を受け、服役中である。
コメント:
焼けつくような白昼のニューヨーク・ブルックリンの街の銀行を襲った2人組の強盗と警察の対決を描く。
1972年8月22日にブルックリンのチェース・マンハッタン銀行支店でおこった実際の事件を元にしたサスペンス映画。
無計画に銀行を襲った結果、篭城せざるを得なくなった二人の強盗。
警官隊に包囲される中、やがて強盗と人質の間に奇妙な連帯感が芽生え始める。
アル・パチーノをはじめ、それぞれのキャラクターを演じる役者が秀逸。
良質の舞台劇をも思わせるルメット監督の演出がアメリカ社会の構図を浮き彫りにしていく様は見事だ。
防犯カメラ、レジに仕込まれた赤外線装置に帳簿、それらに対して周到に準備して簡単に済むはずだった銀行強盗。
しかし、いざ実行の段階で一人が脱落。
おまけに金庫の中はわずかな金額しかない。
躓き始めたとたん警察に包囲されてしまう。
銀行員を人質に立てこもりを決めるが・・・。
強盗の二人、人質の銀行員たち交渉にあたる刑事にFBI。
登場人物が巧みに描かれている見事なサスペンス。
話が進むにつれてベトナム戦争帰還兵、同性愛などアメリカの病んだ部分が明らかにされて行き、ドラマに深みが加わっていく。
幕が下りるまで気の抜けない映画。
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