仲代達矢の映画 「影武者」 黒澤明の代表作! 世界のクロサワを再度実現した大作! 仲代達矢主演! | 人生・嵐も晴れもあり!

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「影武者」

 

 

影武者_特報&予告篇

 

1980年4月26日公開。

興行収入:27億円(1980年第1位)。

日本映画の歴代映画興行成績(配給収入)1位。

 

受賞歴:

 

部門 対象 結果  
カンヌ国際映画祭 パルム・ドール 黒澤明 受賞  
アカデミー賞 外国語映画賞   ノミネート  
美術賞 村木与四郎 ノミネート
ゴールデングローブ賞 外国語映画賞   ノミネート  
英国アカデミー賞 作品賞   ノミネート  
監督賞 黒澤明 受賞
撮影賞 斎藤孝雄、上田正治 ノミネート
衣装デザイン賞 百沢征一郎 受賞
ブルーリボン賞 作品賞   受賞  
主演男優賞 仲代達矢 受賞
新人賞 隆大介 受賞
毎日映画コンクール 日本映画大賞   受賞  
監督賞 黒澤明 受賞
男優演技賞 仲代達矢 受賞
美術賞 村木与四郎 受賞
音楽賞 池辺晋一郎 受賞
日本映画ファン賞   受賞
キネマ旬報ベスト・テン 日本映画ベスト・テン   2位  
助演男優賞 山崎努 受賞
報知映画賞 作品賞   受賞  
助演男優賞 山崎努 受賞
ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞 外国語映画トップ5   受賞  
セザール賞 外国映画賞   受賞  
ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞 外国監督賞 黒澤明 受賞  
外国プロデューサー賞 ジョージ・ルーカス
フランシス・フォード・コッポラ
受賞
ナストロ・ダルジェント賞 外国監督賞 黒澤明 受賞  
サン・フェデーレ賞     受賞  
ベルギー映画批評家協会賞 監督賞 黒澤明 受賞

 

 

影武者 プレビュー (三人の信玄シーン)

 

 

脚本:黒澤明・井手雅人

監督:黒澤明

 

出演者:

仲代達矢、山崎努、萩原健一、根津甚八、油井昌由樹、隆大介、大滝秀治、桃井かおり、倍賞美津子

 

 

あらすじ:

甲斐武田「風林火山」の軍が、三州街道を粛々とゆく。

攻めあぐんだ三河の家康の砦、野田城を落城寸前まで追いこみながら、急に和議を結んで、ふたたび甲斐に帰るところであった。

孫子の旗を立てた信玄(仲代達矢)が悠然と馬を進めている。

だが、実はそれは信玄ではなかった。

信玄に風貌生きうつしの弟、信廉(山崎努)であった。

まことの信玄は、野田城攻めの一夜、勝利を目前にしながら、鉄砲で狙撃され、「われ死すとも、三年は喪を秘し、領国の備えを固め、ゆめゆめ動くな」との遺言を残し世を去った。

信玄狙撃の報は各大名に伝わり、みな甲斐に注目した。

信玄なくば、戦国の版図は一変する。

死を秘すことは難事であった。

信廉はかねてから、信玄と瓜二つの男(仲代達矢)を用意していた。

その男は無頼の盗人で、磔刑になるところを、あまりの酷似に、ひろいあげて刑を免じ、養っていたのだ。

口のきき方も馬の御し方も心もとないこの男は、当然武田の総大将の柄ではなかった。

しかし、信玄の遺骸を秘めた大甕を朝もやの諏訪湖に葬る感動的な光景を目撃した“影の男”は、信玄の影武者になることを決意する。

敵をあざむくためには、まず味方をあざむかねばならず、その事情は側近のごく僅かな者にしか、知らされなかった。

信廉、勝頼(萩原健一)らが胆を冷やすことも幾度となくあったが、なんとかきりぬけ、“影”は次第に威厳のようなものをそなえるようになっていく。

こうした成行に、内心いら立っていたのは勝頼であった。

信玄は世継ぎを竹丸と決めていた。

嫡子ではなくとも実子でありながら、家を継げぬ不満に、形の上のみとはいえ、“影”への服従が輪をかけた。

その頃、家康は武田への攻撃を計画し、兵を進めた。

これにどう対処すべきか、重臣たちの評定は続き、“影”は主戦派の勝頼を制して「動くな、山は動かぬぞ」と結論を下した。

心中、大いにゆれ動く勝頼は、ついに独断で兵を動かした。

勝頼軍のみで落とせるとはとても思えず、武田軍はやむを得ず、「風林火山」の旗を立てて、勝頼軍の後方に陣をかまえた。

戦いは激烈をきわめたが、勝利は、信玄の“影”の上におとずれた。

こうしてすっかり影になりきった彼に不慮の事態が起ったのは、遺言の三年が過ぎようとする頃だった。

信玄だけが御し得た荒馬「黒髪」からふり落とされたとき、川中島での刀傷がないのを側室たちに発見されてしまったのである。

信玄の死は公表され、勝頼が武田の当主となり、“影”はただの男に戻った。

天正三年春、勝頼は武田の全軍二万五千を率いて長篠に向う。

その進軍の傍をあの“影”が身をかくしながらついてゆく。

五月二十一日、信長、家康の連合軍と勝頼の武田軍との戦いの火ぶたが切られた。

連合軍の鉄砲という新兵器に、伝統を誇る武田の「風林火山」の陣立てはたちまちくずれていく。

戦いの中を、叫びをあげてとびだしていった男がいる。

“影”である。

その姿は、万雷のような銃声とともに地上にもんどりうって倒れていった。

 

 

コメント:

 

10年前公開の「どですかでん」の興行成績が悪く、自信を喪失して、自殺未遂までした黒澤明は、ようやくこの「影武者」の大成功で、晴れて名実ともに日本一の映画監督という評価を得ることとなった。

 

三人の信玄シーンが極めて象徴的。

男三人が座している。それを正面からカメラが捉える。

中央に信玄、左に信玄の弟で彼の影武者も務めている信廉。

この二人もよく似ているが、右にいる男は信玄と瓜二つだ。

泥棒で処刑されるところを信玄に瓜二つなので役に立つかもしれないと、信廉が拾って来たのだ。

このファーストシーンは動きはないが、強烈に印象に残る。

これぞ黒澤映画。

 

本作は主役交代というスキャンダラスなニュースで、公開前から話題を振りまいた。

当初予定されていた主役は勝新太郎。

確かにふっくらとしたイメージの信玄にはぴったりだ。

弟の信廉役には勝の実兄の若山富三郎が予定されていたが、若山が体調を理由に断り、山崎努が信廉をやることになった。

ふっくらとはしていない山崎は勝に似せるため、口に詰め物まで施したという。

ところが、その勝が黒澤監督と大ゲンカの末、降りてしまったのである。

YouTubeに残っている特報シーンで勝新太郎の信玄が見れるのは面白い。

 

結果として、ふっくらしていない仲代達矢が信玄をやることになった。

今度は仲代が山崎に似せるため、口に詰め物を施したという。

一流の俳優のプロ意識の高さは並大抵ではない。


しかし、この努力のおかげとメイクの効果もあり、仲代と山崎が見分けがつかないほどよく似ている。

軍議のシーンで、信玄の息子の勝頼が信玄が隣にいるのに、早く父上に報告をすべきと言うのでおかしいなと思ったら、隣にいるのは影武者役の信廉だったのだ。

この二人がよく似ているからこそ、仲代の一人二役がさらに引き立つことになった。

仲代はもちろんのこと、山崎の助演が光っている。


大量のエキストラと馬を投入した合戦シーンも見どころの一つだ。

残念ながら夜の合戦シーンでは敵味方の判別が難しいが、かがり火しかなかった戦国時代では当然のことかもしれない。

クライマックスとなる長篠の戦いではスローモーションが多用され、立ち上がろうともがく馬がゆっくりと崩れて行く姿が敗戦の悲惨さを伝える。
黒澤監督渾身の壮大な戦場絵巻で、影武者にされた男の悲喜劇でもある。

 

 

かつて、低い視座から人間の熱い息吹を生々しく活写した「ヒューマニスト黒澤明」のバイタリティに満ちた語り口はこの映画にはない。

その代わりに、登場人物の織り成す哀歓を醒めた視線で見詰め、審美的な画面に投影した「画家黒澤明」のスタティックな語り口である。

戦争という愚行の虚しさを陰影深く紡ぎ出した終幕をはじめ、時代情緒をリアリスティックに再現した映画美術や、仲代達矢をはじめとした俳優陣の堂に入った演技、そして、能をベースにした黒澤明のスタイリッシュな語り口が心に残る歴史劇だ。

 


 

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