「霧の旗」
1977年12月17日公開。
松本清張原作のリメイク作品。
配給収入:8億8900万円(ランキング第8位)。
原作:松本清張「霧の旗」
脚本:服部佳
監督:西河克己
キャスト:
- 柳田桐子:山口百恵
- 阿部啓一:三浦友和
- 大塚欽三:三國連太郎
- 柳田正夫:関口宏
- 杉浦健次:夏夕介
- 山上武雄:石橋蓮司
- 河原信子:児島美ゆき
- 奥村恵之助:桑山正一
- 白鳥弁護士:大和田伸也
- 大塚芳子:加藤治子
- 河野径子:小山明子
- 谷村編集長:神山繁
- 兵童代議士:金田龍之介
- 岡刑事:玉川伊佐男
- 渡辺キク:原泉
- 矢代早苗:西村まゆ子(新人)
- 西村:林ゆたか
- 山川:若杉透
- 久岡:安西拓人
- 検事:高橋昌也
あらすじ:
柳田桐子(山口百恵)が「週刊社会」の編集記者・阿部啓一(三浦友和)に初めて出逢ったのは、東京の大塚欽三法律事務所の中であった。
高利貸し殺しの容疑で逮捕された兄・正夫(関口宏)の無実を信じる桐子は、高名な弁護士である大塚(三國連太郎)を頼って、九州の片田舎から上京したのである。
しかし、桐子の必死な願いにも拘らず、大塚は桐子の依頼を冷たく拒否するのだった。
早くから両親を亡くした桐子兄弟には、大塚の要求する高額な弁護料を用意することができなかったのである。
医大の寄付金問題に関する件で事務所に取材にきていた啓一は、大塚の高慢な態度に激しい憤りを感じ、桐子に同情の言葉をかけるのだった。
正夫にはとうとう死刑の判決が下る。
そして、正夫は控訴中に刑務所で獄死してしまった。
九州に帰っていた桐子は上京し、銀座のクラブでホステスとして働き始める。
桐子はそこで、同僚と飲みにきていこ啓一に再会した。
正夫の無実を説く啓一の言葉が、桐子の胸には辛く響いた。
その頃、啓一は、大塚が正夫の公判記録を洗い直していることを知った。
啓一は桐子に会うと、正夫の無実を確信しているからこそ大塚が公判記録を改めているのだと熱っぽく語った。
しかし、たとえ無実が証明されたとしても、正夫が帰ってくるわけではなかった。
桐子は、不幸な人間に関っていたらあなたも不幸になると言って、啓一に別れを告げた。
それが啓一に対する桐子の愛だった。
啓一は、桐子を幸せにしてあげたいと強く思った。
そんな時、桐子の店にもきたことのある杉浦(夏夕介)という男が、マンションで殺されるという事件が起こった。
杉浦の友人であるクラブ経営者・河野径子(小山明子)が犯人として捕ったが、桐子には径子が犯人でないことが分っていた。
径子がマンションを訪れる前に、ひとりの男が部屋から出て行くのを、たまたま目撃していたのである。
桐子の手元には、その男が落として行ったライターもあった。
しかし桐子は、証人として名乗り出ることをしなかった。
径子が大塚の愛人であると知ったからである。
スキャンダルが表面化して社会的地位が危うくなった大塚は、毎日のようにクラブに通い、径子のために証言してくれと桐子に頼んだ。
しかし、桐子には兄を見殺しにした大塚を許すことができなかった。
啓一が桐子の将来を思って結婚まで申し込んでくれたが、桐子は、九州にいた頃に受け取った啓一からの手紙を胸に、復讐へと立ちあがった。
ある晩、ついに桐子は大塚を自室に誘い、女であることを武器に、彼を罠にはめることに成功するのだった。
コメント:
松本清張の同名小説の映画化第2作である。
雑誌記者との愛も捨て、獄死した兄の弁護を断った弁護士に復讐する女の姿を描く。
山口百恵の復讐する女の姿が凄まじい。
白樺林の週刊誌記者(三浦友和)の独白で始まり、やはり白樺林の桐子(山口百恵)の独白で終わる映画になっている。
小学校教師の兄(関口宏)と妹=桐子(山口百恵)は、幼い時に両親を亡くして二人で暮らしてきた兄妹。
兄が殺人犯の汚名をきせられたまま獄死して、桐子が弁護を頼んだのに断った大塚弁護士(三國連太郎)に体当たりで復讐する物語自体は、ほぼ松本清張の原作どおり。
配役の面白さが重要。本作は、弁護士が三国連太郎、愛人が小山明子、兄が関口宏。
この映画は百恵・友和コンビの6作目なので、友和演じるジャーナリストは、桐子(百恵)を支え結婚まで申込む重要な役になっている。
また、冒頭のクレジットの中で、兄妹の子供時代からのエピソードを入れていかに大切な兄かを表現するような工夫がされている。
65年版では、ヒロイン・桐子が倍賞千恵子で、復讐される相手の弁護士役が滝沢修で、人格者という感じがする。
リメイクの本作では、桐子が山口百恵で、弁護士役が三國連太郎だ。
この三國は、金儲け主義のギラギラした悪徳弁護士にしか見えない。
大雨の中土下座して、そのまま桐子のマンションに行くところは、まんま'10年のテレビ版にも使われている。
マンションで桐子に誘惑されるシーンは、65年版は桐子が迫って弁護士はなりゆきで応じるように描かれているが、本作では三国が「いいんですか?」と百恵に積極的に迫るので、印象が全然違う。
クールな役を演じる百恵は、当時はまだ18歳なのだが、きれいで非常に女として魅力的だ。
山口百恵という人の、歌手としてのみならず、女優としての表情、立ち居振る舞い、演技力は素晴らしい。
なぜこんな天才的な演技力があるのに、結婚して、芸能界から完全に消え去ったのが、今考えても残念でならない。
三浦友和が家庭に入り、専業の主夫・イクメンになれば日本の芸能界のためになったのではないか。
勝手な願望ではあるが。
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