「カオス」
2000年10月21日公開。
原作:歌野晶午『さらわれたい女』
脚本:斎藤久志
監督:中田秀夫
キャスト:
- 萩原聖人:便利屋・黒田五郎
- 中谷美紀:佐織里、津島さと美
- 光石研:小宮山隆幸
- 國村隼:浜口警部
- 田中哲司:三浦刑事
- 夏生ゆうな:相馬るみ
あらすじ:
ある高級レストランで食事をしていた実業家の小宮山隆幸(光石研)とその妻・佐織里(中谷美紀)。
夫が支払いをしている間に妻は先に外へ。
支払いを済ませ、隆幸も外へ出るが、既に妻の姿は見当たらなかった。
先に帰ったのだと思い、会社へ戻るが、間もなくして「妻を誘拐した」と連絡が入る。
実はこの誘拐劇は佐織里による狂言だった。
便利屋の黒田に報酬100万円を条件に引き受けてもらったのだ。
ほとんどの手筈を佐織里が整え、黒田はそこにリアリティを持たせるために様々な小細工をする。
佐織里のシナリオ通りに事件は進んでいくが、用足しに出かけていた黒田の元へ、事件の顛末を知っている、と脅迫電話がかけられる。
急いで佐織里が身を隠しているアパートへ向かうと、佐織里は既に亡くなっていた。
途方に暮れる黒田。
しかしある時、佐織里と瓜二つの女、さと美(中谷美紀)を見つけた黒田はさらなる深みへとはまっていく…。
事件の真実は一体どこに!?
コメント:
狂言誘拐に巻き込まれた便利屋と、それを依頼した魅惑的な女性の危険な愛の行方を描いたサスペンス。
監督は、『リング』シリーズの中田秀夫。
サスペンス・スリラーとして細部まで神経の行き届いた演出によって観客を恐怖のカオスへと突き落としてくれる。
サスペンス好きにとってもホラー好きにとっても楽しめる一作になっている。
妻(中谷美紀)の誘拐という事件が実はその妻による狂言誘拐であったという第一のヒネリ。
誘拐を頼まれた便利屋(萩原聖人)が妻だと思っていた女は実は夫の愛人であり妻はすでに夫によって殺されていた・・・という第二のヒネリ。
ふたつのツイストが心地よく観客を翻弄してくれる。
しかもそれが映像的にインパクトを持って提示されることでなんとも得体の知れない恐怖が立ち上がってくる。
特に妻、佐織里の本当の容姿が愛人のさと美とよく似ている(でも微妙に違う)ということがわかるところが怖い。
これが佐織里だったとするとあの女は・・・。
この愛人を悪びれることなく演じた中谷美紀がよい。
内面に様々な思いを燻らせた女を見事に演じていて彼女の魅力を100%引き出してみせた映画である。
映画は終盤にもうひとヒネリ用意して観客を絶壁から突き落としてくれる。
『リング』シリーズで中谷美紀を知り尽くしている中田監督ならではの、エンタテイメント精神に貫かれた一作だ。
狂言誘拐を目的にしたストーリー。
当然そこには裏があるわけで、加害者や被害者、そして手を貸す者にまで思惑が透けて見える。
全容は入り組んではいるが、それは過去と現在を交互に見せているからであり、やはり迫っていく女性のキャラにこそ個性が見える。
中谷美紀のサイコなキャラは、時折ハッとさせる表情を作り出す。
そこに中田監督も演出を聞かせているようで、包丁越しの視線などその最もたるもの。
見どころは、なんといっても中谷美紀の美しい表情とたたずまい。
当時24歳の中谷美紀がとにかく美しい。
サイコの彼女にも会えるし、それとは違う、愛らしく、色っぽい姿もたまらない。
中谷ファンなら絶対観るべし!
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