「柳生武芸帳」
1957年4月14日公開。
五味康介原作の柳生武芸帳第1作。
原作:五味康介
脚本:稲垣浩、木村武
監督:稲垣浩
キャスト:
霞の多三郎:三船敏郎
夕姫:久我美子
於季:香川京子
りか:岡田茉莉子
柳生又十郎:二代目中村扇雀 (四代目坂田藤十郎)
柳生但馬守:大河内伝次郎
徳川家光:十代目岩井半四郎
柳生友矩:平田昭彦
柳生十兵衛:戸上城太郎 (松竹)
伊豆者誠玄:清水元
浅海源九郎:西条悦朗
大久保彦左衛門:左卜全
喜内:桜井巨郎
幼君千代松:久保賢
望月庄左衛門:上田吉二郎
松平伊豆守:小堀明男
芹川相模:大友伸
沖田四郎五郎:久世竜
久我武左衛門:香川良介
五升賀源太:土屋嘉男
室屋典膳:田島義文
長浜主馬亮:向井淳一郎
左文字修造:山本廉
横川千八郎:池田兼男
深見友之丞:草間璋夫
楓:三田照子
金作:平奈淳司
山田浮月斎:東野英治郎
鬼我兵吾:大橋史典
青木小次郎:大塚国夫
箒の又兵衛:谷晃 弓
削三太夫:熊谷二良
小野玄人:小杉義男
浪人加目田:稲葉義男
霞の千四郎:鶴田浩二
あらすじ:
正保四年--
徳川幕府の安泰を秘めた柳生武芸帳は、柳生・藪大納言・鍋島の三家に一巻ずつ所蔵されていた。
ところが、鍋島家の分が鍋島家にとりつぶされた竜造寺家の遺児・夕姫(久我美子)の手に渡ると、肥前の術者・山田浮月斎(東野英治郎)は多三郎(三船敏郎)、千四郎(鶴田浩二)の兄弟を使って、これら武芸帳を奪おうとする。
千四郎は江戸の柳生屋敷を、多三郎は夕姫を狙うが、彼はやがて夕姫を恋するようになった。
夕姫は江戸へのぼり、藪大納言家から大久保彦左衛門(左卜全)の手に移った一巻をうばうため、柳生家の友矩(平田昭彦)、又十郎(中村扇雀)の兄弟と、於季(香川京子)を相手に争うことになる。
又十郎は夕姫に化けて大久保邸を訪れ、武芸帳を発見するが、千四郎にはばまれ、巻物は二人の手によって真二つに引き裂かれた。
この頃、多三郎は夕姫を恋した件で破門され、又十郎も無意味な武芸帳争奪に嫌気がさして、柳生家を後にした。
一方浮月斎は、夕姫一党をたずね、力をあわせて一挙に柳生家を襲おうと計画する。
期日は十五日と定められたが、それを早くも知った柳生一党は夕姫一党を急襲して大乱闘となった。
その時多三郎は、馬をかってこの乱闘に加わり、夕姫を救うと役人たちの十手を逃れて、江戸から離れた渓流に達した。
そこで、この武芸帳をめぐる無意味な争いをやめさせるため自首して出ようとする多三郎を、夕姫は強くおし止め、二人は筏に乗っていずこへともなく立ち去って行った。
コメント:
剣豪小説の第一人者・五味康祐の原作を初めて映像化した作品。
柳生一族に関する映画といえば、千葉真一の主演作品が最も知られているが、三船敏郎主演のこの映画が最初になるようだ。
「柳生武芸帳」とは世に三巻存在し、夫々の内容は一見左程重要ではないのだが、それら三巻が揃うと、俄然危険物になるということになっている。
徳川と天皇家を巡る暗黒の秘密が記されており、これが表に出ると柳生家の問題にとどまらず将軍家・天皇家を大きく揺るがす事になるので、厳重に封印されているのだ。
原作は登場人物が多すぎて物語は破綻しているため、映像化に際しては誰の視点で描くかがポイントになる。
後発の近衛十四郎が主役の東映版は、柳生十兵衛をヒーローとした剣豪もの。
一方こちらの東宝版は、霞の多三郎、千四郎の兄弟を主人公にしており、柳生家と対立する視点から描いているのだ。
多三郎を三船敏郎、千四郎を鶴田浩二という豪華な顔合せ。
これほど似ていない両者を兄弟役に据えるのが面白い。
柳生武芸帳争奪戦に参加するのは、山田浮月斎(東野英治郎)と配下の多三郎・千四郎、そして柳生の但馬守(大河内傳次郎)をカシラとする十兵衛(戸上城太郎)、友矩(平田昭彦)、又十郎(中村扇雀)、於季(香川京子)の兄弟。
御家取りつぶしに遭つた竜造寺家の遺児の夕姫(久我美子)が持つ武芸帳を皆がねらうという構図だ。
誰が味方か誰が敵か、今日の敵は明日の味方、騙し合い、化かし合いの末、柳生の又十郎は武芸帳を奪う意義が分からず、多三郎は夕姫と恋仲になり、夫々離脱する。
東宝版「柳生武芸帳」は、本作と続篇たる「柳生武芸帳 双龍秘劒」の二作からなっていて、一作目は三船敏郎と久我美子の恋愛物語の側面もある。
一方武芸帳の争奪戦もかなり丁寧に描かれており、重しとして柳生宗矩の大河内傳次郎、家光の岩井半四郎、松平伊豆守の小堀明男らが存在感を示している。
大久保彦左衛門の左卜全もその狸ぶりを好演している。
女優陣も久我美子、香川京子、岡田茉莉子と揃って豪華である。
岡田茉莉子は、中村扇雀扮する又十郎の恋人・りかを演じている。
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