「大菩薩峠」
1966年2月25日公開。
中里介山の同名小説を映画化。
脚本:橋本忍
監督:岡本喜八
出演者:
仲代達矢、新珠三千代、加山雄三、内藤洋子、藤原釜足、西村晃、佐藤慶、田中邦衛、中谷一郎、中丸忠雄、三船敏郎
あらすじ:
幕末。
大菩薩峠の頂上で、一人の老巡礼が何の理由もなく殺された。
斬ったのは、黒の紋服に“放れ駒”の紋が印象的な深編笠の男・机竜之助(仲代達矢)だ。
この老人といっしょにいた孫娘お松は、折りから通りかかった盗賊、裏宿の七兵衛(西村晃)に救われた。
竜之助は、帰宅して間もなく、宇津木文之丞(中谷一郎)の妻お浜(新珠三千代)の訪問をうけた。
お浜の夫、文之丞はかつて竜之助と同門で剣を学んだ仲だが、御嶽神社の奉納試合で、竜之助と立ち合うことになっていた。
竜之助の父、弾正も、残忍なまでに殺気のみなぎる竜之助の“音なしの構え”を恐れ、文之丞に勝ちをゆずるように説き、お浜もそれを懇願した。
しかし虚無的な影を深くやどした竜之助は、無理矢理お浜の操をうばったうえ、文之丞を殴殺し、お浜と共に江戸へ出奔した。
それから二年。
吉田竜太郎と名を変えた竜之肋は芝飯倉の長屋の一隅にお浜と子供の郁太郎と共に暮していた。
そうしたある日、竜之助は、直心影流、島田虎之助(三船敏郎)の道場で、見事な剣さはきでひときわ目立つ若い剣士、宇津木兵馬(加山雄三)を知り、他流試合を申し込んだ。
この兵馬は竜之助が以前殴殺した文之丞の弟であった。
兵馬は、ふとしたことから江戸でお松(内藤洋子)を知り、共に竜之助を討つために腕をみがいていたのだった。
一方竜之助は、金のために新徴組に加わり邪剣をふるっていたが、ある日島田虎之助に出くわし、その豪剣と、偉大な人間性にうたれた。
竜之助の激しい心の動揺をよみとった虎之助は、兵馬に必殺の突きを武器に、相打ちを覚悟で竜之助に立ち向うことをすすめ、竜之助に果し状を送った。
一方、いまでは夫婦とは名ばかりで、互いに憎悪し合う破綻の生活を送っていたお浜も、ついに竜之助のあまりの冷酷さにたえきれず、竜之助を刺そうとしたが、逆に竜之助の狂刃に倒れた。
文久三年春。
京都新選組が生まれた。
島原の槌屋では、近藤(中丸忠雄)、土方、斎藤などの隊士が集り、芹沢(佐藤慶)暗殺と共に、手あたり次弟に狂刃をふるう竜之助の命を奪う密謀をしていた。
一方、芹沢も竜之助を誘い、兵馬の首とひきかえに近藤暗殺をそそのかした。
が、ちょうど話を立ち聞きしていたお松は、芹沢につかまり、竜之助にあずけられた。
そこで竜之助は、お松から大菩薩峠での悪夢のような昔話を聞かされた。
竜之助は、ここで初めて、お松が自分が殺した老巡礼の娘であることを知り、煩悩になやまされ、狂ったように白刃を振りまわした。
そこへ新選組が乱入した。
地獄絵図の中、全身に手傷をうけたまま逃げのびた竜之助は、とおりすがりの老爺に助けられ、木津街道を一人どこまでもどこまでも歩いていくのだった。
コメント:
白と黒の計算され尽くした構図がスタイリッシュな時代劇。
非業の宿命を背負い邪剣を降ることでしか生き長らえない龍之介を、仲代達矢が自身の目力を存分に活かし、完璧に演じ切る様は凄まじい。
ラストの立回りシーンは、あれだけの多人数を相手になし得るか否かはともかく、日本映画史上に残る凄絶さだ。
刀を合わすことなく仲代達矢の精神を崩壊に追い込む三船敏郎の貫禄は流石だ。
黒澤映画で何度も対決してきた仲代達矢と三船敏郎のシーンはやはり格別。
主役の仲代達矢の堂に入った立ち廻りには圧倒される。
キャストも当時の大物で固めて、見応え十分だ。
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