「人類資金」
2013年10月19日公開。
日本軍の秘密資金M資金を巡る争いを描いた異色作。
興行収入:4.17億円。
原作:福井晴敏「人類資金」
脚本:福井晴敏、阪本順治
監督:阪本順治
キャスト:
- 真舟雄一 - 佐藤浩市
- M(笹倉暢人) - 香取慎吾
- 石優樹(セキ・ユーキット) - 森山未來
- 高遠美由紀 - 観月ありさ
- 本庄一義 - 岸部一徳
- 鵠沼英司 - オダギリジョー
- 酒田忠 - 寺島進
- 辻井 - 三浦誠己
- 笹倉雅実 - 松崎謙二
- 黒瀬 - 橋本一郎
- 武井 - 伊藤紘
- 秋葉 - 信太昌之
- 台湾の投資家 - 侯偉
- お付きの通訳 - 原田麻由
- 権藤 - 芹沢礼多
- 若松 - 川屋せっちん
- 真舟の父 - 峰蘭太郎
- 内閣官房長官 - 重松収
- 北村 - 石橋蓮司
- ハリー遠藤 - 豊川悦司
- 遠藤治 - ユ・ジテ
- ハロルド・マーカス - ヴィンセント・ギャロ
- 笹倉暢彦 - 仲代達矢
あらすじ:
1945年、敗戦を不服とする反乱兵たちが日本軍の秘密資金を持ちだしていた。
総量600トンにも及ぶ金塊を回収しに来た笹倉雅実大尉は、この先、資本という怪物を相手に戦うことになると見据え、金塊を軍に戻さず海へ沈める。
2014年、父と同じくM資金詐欺の道を進む真舟雄一(佐藤浩市)は、相棒の酒田(寺島進)といつものように交渉を進めようとしたところ、彼を追っている北村刑事(石橋蓮司)が現れる。
逃げようとする真舟に石優樹(森山未來)と名乗る男が近づき、“財団”の人間が真舟を待っているので同行してほしいと告げる。
日本国際文化振興会、前身は日本国際経済研究所というその“財団”の名は、何者かに謀殺された父が死の間際にためていたノートの中にあり、真舟自身も詐欺をするときに使っているものだった。
M資金は実在するのか、実在するなら一体何なのか。真舟は石の言葉に導かれるように“財団”のビルへ向かう。
そこへ、防衛省の秘密組織に属する高遠美由紀(観月ありさ)とその部下・辻井(三浦誠己)らが現れ、真舟を阻止しようとする。
逃げる真舟と石に向かい、このままでは消されると忠告する。
翌朝、真舟と石はあるビルへ向かい、そこで本庄一義(岸部一徳)と会う。
本庄は、M資金を10兆円盗み出すことを真舟に依頼。報酬は50億用意するとのことだった。
仮の名を“M”(香取慎吾)という真の依頼者も現れ、かつて日本復興のために使われたものの今や単なる投資ファンドになり下がっているM資金を盗み出し、マネー経済の悪しきルールを変えたいと話す。
カネでカネを買うマネーゲームが世界を空洞化させており、そんな世界を救いたいという“M”に共感する真舟。
破格の報酬とM資金の正体を知りたいという欲求が合わさり、真舟はこの話に乗ることにする。
現在M資金は投資顧問会社代表を務める笹倉暢彦(仲代達矢)が率いる“財団”によって管理されているが、その実権はニューヨークの投資銀行が掌握。
M資金を盗み出すために、真舟らは世界規模のマネーゲームを企てる。
そんな彼らは、先物取引で失敗し、財務操作を重ねて損失隠しをしている財団の極東支部となっているロシア・極東ヘッジファンド代表の鵠沼(オダギリジョー)に目を付ける。
計画が順調に進んでいるように見えたが、たった一つミスをおかしたことから事がうまく運ばなくなる。
そんな異常な動きをニューヨーク投資銀行のハロルド・マーカス(ヴィンセント・ギャロ)が察知し、すぐさま清算人(ユ・ジテ)と呼ばれる暗殺者を真舟や石のもとに送り込む。
真舟や石は監視され、追い詰められていく……。
コメント:
M資金という謎の資金をテーマにした異色作。
原作は、福井晴敏の同名小説。
M資金をめぐる陰謀と戦いを活写した作品。小説は2013年7月から講談社文庫で刊行された。
2005年、映画『亡国のイージス』で福井と阪本順治が原作者と監督として出会ったことが小説を書き下ろすこととなった発端である。
阪本が長年温めていたテーマである「M資金」を題材に再びタッグを組むことを福井に提案した。
一方、福井もかつてデビュー前の習作で「M資金」を描いていたことからこの提案に共鳴し、小説と映画の連動企画として動き出すこととなった。
『KT』、『亡国のイージス』を演出した阪本順治監督。
本作のアクション場面は、前作よりも堂々としたもので、こっちの感情が途切れることなくスッと物語に入り込める。
だが、最後まで見て、良かったと思えるレベルには全く達していない。
森山未だけが光っている。
M資金という鵺のようなアイコンでもって物語を引っ張っていくが、何しろ森山未来がイカしている。
M資金という鵺のようなアイコンでもって物語を引っ張っていくが、何しろ森山未来がイカしている。
『世界の中心で、愛をさけぶ』でも全力で役者だったが、本作はとにかくカッコいい。
森山未來に全力投球したからか、ほかの登場人物が魅力に欠ける。
森山未來に全力投球したからか、ほかの登場人物が魅力に欠ける。
というか、M資金の管理がせせこましくて何とも辛い。
M資金の管理人のおじさんたる仲代達矢も結局何をしようとしているのかよくわからない。
詐欺師の佐藤浩市なども曖昧模糊としてしまっている。
観月ありさ、岸部一徳、オダギリ・ジョーも出演しているが、中途半端な役柄だ。
富をどのように分配したら良いのか?
金融ばかりがリードするような世界で良いのか?
そういう事を問いかけたいというのがテーマなのかも知れないが、それが描けていない。
富をどのように分配したら良いのか?
金融ばかりがリードするような世界で良いのか?
そういう事を問いかけたいというのがテーマなのかも知れないが、それが描けていない。
大コケとなったこの映画。
その原因は、脚本の稚拙さとミスキャスティングだ。
まず、タイトルからして全然ダメ。
「M資金」を巡る作品でありながら、なぜか「人類資金」などという意味不明のタイトルになっている。
原作がこの名前だから、仕方なくそのままにしたのか。
愚かだ!
如何にして観客を引き寄せるかのイロハのイがわかっていない。
脚本の拙い。
驚くような場面が丸で用意されていないのだ。
次は、ミスキャスティングだ。
最悪は、「M」を演じた「香取慎吾」。
この人は、SMAPのメンバーの一員として有名になってしまっただけの人間で、タレント性ゼロ!
単なるでかい図体のカワイ子ちゃんが、大人の年齢になっただけだ。
この映画は、Mと名乗る人物の存在感こそ最重要で、この配役が間違ったことにより、全部だめになってしまっているのだ。
「M資金を巡るこの世界を変えたい」という悲願を訴える人物が、こんな最低レベルのタレントに演じられるはずもない。
香取は、昨年末にも、NHKテレビドラマで山本五十六を演じたが、全くお話にならない演技だった。
どうしてNHKはジャニーズを多用するのか訳が分からないが。
これまで佐藤浩市は、呼ばれたら出演するというサービス精神旺盛な俳優人生を送ってきたようだが、今後はしっかり作品の献立であるシナリオ、スタッフ、共演予定者を見定めて、良作にだけ出演すべきだろう。
とにかく、この作品は駄作になってしまった。
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