1964年5月9日公開。
佐久間良子の代表作。
キネマ旬報ベスト・テン第6位。
配給収入:2億5400万円(1964年度ランキング第4位)。
原作:水上勉「越後つついし親不知」
脚本:八木保太郎
監督:今井正
キャスト:
- 佐分権助:三國連太郎
- おしん:佐久間良子
- 瀬神留吉:小沢昭一
- 九谷育三:田中春男
- 佐藤:佐藤慶
- 伊助:殿山泰司
- 山田:杉義一
- おさと:清川虹子
- おいし:北城真記子
- 留吉の母:北林谷栄
- 伊助の母:五月藤江
- おしんの母:木村俊恵
- 坊ちゃん:石橋蓮司
- 飯屋の親爺:中村是好
- 客の遠藤:東野英治郎
- 古谷きよ:高橋とよ
- 大地主の旦那様:松村達雄
- 大地主の奥様:沢村貞子
あらすじ:
伏見大和屋酒造の杜氏は、遠く越後杜氏であった。
日支事変の始った昭和十二年、瀬神留吉と佐分権助の二人は、農閑期を利用して出かせぎにきていた。
留吉はおとなしい真面目な働き者で、年が明けると杜氏の大将格である船頭に抜擢されることになっていた。
権助は評判の美しい嫁をもち、昇進もする留吉をねたんでいた。
留吉より一足先に故郷に帰った権助は、留吉の兄・伊助から、シベリア時代に女を抱いた話を聞くと、家への帰り道で留吉の嫁おしんに会うと、慾情をそそられ、火葬場でおしんを犯した。
この時からおしんには夫・留吉や姑に言えぬ苦しみができた。
一方留吉は、大和屋で年間を通して一番の働き者と表彰されたが、心ない権助の作り話に、おしんがコモ買い人の佐藤と関係していると聞かされ、痛飲するようになった。
越後では、おしんが、権助の子を身ごもっていた。
人の目につくことを恐れたおしんは、日夜子供をおろすことに心をくだいたが、とうとうそのままで夫留吉を迎える日がきた。
三月親不知に帰って来た留吉は、佐藤とのことを問い詰めたがおしんの澄んだ目に愚かしい疑いを恥じた。
夫婦仲は、人がうらやむばかりであった。
ある日おしんの妊娠を知った留吉は、大喜びだったが、産婆から妊娠したのは十二月だと知らされた留吉は、自分が十二月には伏見に居り、あの権助が帰郷していたことを思い出した。
激しい怒りに身をふるわす留吉。
ついに水田でおしんに問い詰め、泥の中におしんを倒していた。
近くの炭小屋の中、美しい白ろうのような死顔をみせるおしんを、留吉はいつまでもいとおしんだ。
やがておしんの身体を蟻がむしばむ頃、おしんの死体をかまどの中に入れると、留吉は下山した。
折りしも出征兵士として送られる権助を見かけた留吉は、権助を道連れに谷底へと身を投げたのであった。
コメント:
原作は、水上勉の代表作である、1962年(昭和37年)に発表された同名小説。
裏日本で起こった悲しい事件に翻弄される一人の女性を描いた壮絶な物語である。
佐久間良子にとって本作は彼女の代表的作品となった。
美人で品があり、若くくして東映の有望女優として注目されてきたが、前年公開の「五番町夕霧楼」と共に、水上勉作品のヒロインを演じられる女優としてしっかり認識されるに至った貴重な映画だ。
モノクロフィルムに焼き付けられた波濤吹きすさぶ荒れた日本海の冬景色は重苦しく、ド演歌が聞こえてきそうな情景である。
そんな冬ざれた鈍い鉛色の風景で展開される凄惨な悲劇。
巨匠・今井正監督ならではのピーンと張りつめた透徹したリアリズムが際立つ。
三國連太郎と小沢昭一という演技派名優同士による対照的な二人のキャラクター。
そして何よりも佐久間良子のイノセントな美しさ。
この作品は、水上勉が著した日本女性の美しさを如何に映像化するか今井正監督が練りに練った演出の成果が発揮されている。
美しいものを汚さずに大切に扱おうとする小沢昭一。
美しいからこそ汚したくなる三國連太郎。
それが最後の崩壊へと繋がるのであろう。
シェイクスピアの「オセロ」のような世界である。
杜氏として出稼ぎに行った夫・留吉(小沢昭一)の同僚・権助(三國連太郎)に手込めにされた妻のおしん(佐久間良子)が、子供を身ごもったことから悲劇が起こる。
おしんが夫・留吉に殺され、最後は隆吉が権助と共に谷底に身を投げて全員この世から消えるという結末になっているのだ。
おしんを強姦する権助には、アクの強い三國連太郎がぴったりだ。
気の弱そうで真面目だが、思いつめるととことん追求する執拗な性格の留吉を演じるのが小沢昭一。
美人で評判の、薄幸の妻・おしんにぴったりの佐久間良子
この3人が、それぞれの持ち味を生かして熱演している作品だ。
三國連太郎の欲情のおもむくままに雪の中でおしんを犯す場面は凄まじい。
こういう役柄は絶対に三國連太郎が最適だ。
欲望の塊になって犯罪を犯してしまう人間の業を演じさせたら日本一。
本作と同じく水上勉原作で、翌年に公開された「飢餓海峡」にも通じる部分だ。
小沢昭一が泥田の中でおしんを責め、殺してしまう場面は印象深い。
この俳優は、さまざまな人気作品に出演しているが本作がベストとの声もある。
越後の酒造りの杜氏で懸命に仕事をする真面目な性格と妻を溺愛する異常な姿を熱演している。
「親不知」は、「おやしらず」と読む。
新潟県糸魚川市の西端に位置する崖が連なった地帯である。
親不知と子不知に分かれるが、この2つを総称した名称も親不知である。
「親不知」の名称の由来として、一説では、断崖と波が険しいため、親は子を、子は親を省みることができない程に険しい道であることから、とされている。
筒石(つついし)という場所は、こんな所にある:
このような新潟県にある寂しくて日本海の荒波と断崖絶壁によって孤立している田舎である。
こんなところで起こった男女間の不幸を描いているのがこの映画なのだ。
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