「考える葉」
1962年5月16日公開。
太平洋戦争中の日本に秘蔵された財宝、隠匿物資をめぐる連続殺人事件を描く。
原作:松本清張「考える葉」
脚本:棚田吾郎
監督:佐藤肇
出演者:
江原真二郎、鶴田浩二、 磯村みどり、 木村功、久保菜穂子、 八代万智子、 三津田健、 仲谷昇、 柳永二郎、 永田靖、 亀石征一郎
あらすじ:
崎津弘吉(江原真二郎)が井上代造(鶴田浩二)と知り合ったのは刑務所だった。
田舎ものの弘吉に井上はなぜか大変な好意を示した。
釈放された弘吉を自分の家に下宿させ、大日建設の保安員にまで世話した。
弘吉が就職した日、大日建設の溝に他殺死体が発見された。
大原鉄一という浮浪者で、大原は大日建設用地に戦時中の隠匿物資を掘りに来たことが判った。
その六日後、弘吉は井上からある地点で、ある男から物を貰ってこいといわれた。
弘吉が指定場所に立った時、黒い人影が弘吉にピストルを渡して消えた。
呆然とする弘吉の手に手錠がかけられた。
その頃、パラス・ホテルではムルチ射殺事件が発生していた。
ムルチは戦時中、日本軍が掠奪して内地に運んだ物資を調査に、東南アから来日した国賓である。
ムルチといた洋子(久保菜穂子)をはじめ目撃者は、口を揃えて弘吉が犯人であると証言した。
にも拘わらず弘吉は翌日釈放された。
弘吉は井上の家に帰って来たが、井上は何者かに殺されていた。
井上代造の妹・美沙子(磯村みどり)の話によると、彼は板倉彰英(木村功)という男に使われていた。
板倉は戦時中、軍需省の要員で、戦後隠匿物資で大儲けをし財界にのし上った人物だ。
弘吉は自分を殺人犯とした板倉の身辺を洗った。
板倉の書道教授・村田露石(三津田健)の話から井上、ムルチが板倉に殺害されたという推察がたった。
そして板倉の情婦・洋子もすでに殺されていた。
田舎者の頑張りで弘吉はなおも板倉を追った。
殺された大原は元憲兵伍長で元の上官・村田を尋ねて倒れたものと警察は発表した。
そんな頃、美沙子が姿を消した。
弘吉は、板倉の所有する鉱山に、隠匿物資とともに美沙子が監禁されていると睨んだ。
弘吉は鉱山にとんだ。
弘吉は、万一を思って駐在の協力を求めた。
その頃、警察も板倉をじりじりと追いつめていた。
坑道の奥に美沙子は監禁されていた。
そして隠匿物資も。
その時、鉱山主任の杉田が二人を狙った。
だが、かけつけた警官隊に二人は救われた。
その頃、板倉は村田露石と鉱山に車で急行していた。
戦時中、隠匿物資の件で板倉を拷問にかけたのは、大原と村田であった。
その上、村田は戦後になっても板倉を脅迫して多額の金を取っていたのだ。
二人が山についた時、警官隊の車をみた板倉は総てが崩れ去ったことを知った。
宝鉱山の隠匿物資は、今頃摘発されているだろう。
板倉は、助手席の村田を横目でみながら、車を断崖につっ込んでいった。
コメント:
原作は、松本清張の同名長編推理小説。
『週刊読売』に連載され(1960年4月3日号 - 1961年2月19日号)、1961年6月に角川書店から刊行された。
太平洋戦争中の日本に秘蔵された財宝、隠匿物資をめぐって発生する連続殺人事件を描くミステリー長編である。
主人公だと思われた鶴田浩二は序盤で殺されてしまい、彼に見込まれた江原真二郎が、鶴田の死と失踪したその妹(磯村みどり)の謎を追う筋書きになっている。
戦時中に軍が関係した物資をめぐる殺人事件を描く戦後ミステリー。
政治家と癒着して人を虫けらのように殺させる黒幕を演じる木村功が非情な感じを発揮している。
松本清張作品でもラストは警官との銃撃戦となるところが東映作品らしい。
この映画はソフト化がされていないようだ。
シネマヴェーラ渋谷やラピュタ阿佐ヶ谷などで、たびたび上映されている。