「黄色い風土」
1961年9月23日公開。
石井輝男監督による清張ミステリーの映画化。
原作:松本清張「黄色い風土」
脚本:高岩肇
監督:石井輝男
キャスト:
- 鶴田浩二(若宮四郎)
- 丹波哲郎(木谷)
- 佐久間良子(カトレアの女)
- 柳永二郎(島内輝秋)
- 須藤健(児玉)
- 曽根晴美(田原)
- 若杉英二(野村)
- 春日俊二(村田)
- 小林裕子(珠実)
- 内藤勝次郎(奥田正一)
- 吉川満子(正一の妻)
- 神田隆(桜井)
- 利根はる恵(バー・サチコのマダム)
- 故里やよい(島内婦人)
- 藤里まゆみ(村田の妻)
- 八代万智子(谷川由美)
あらすじ:
「週刊東都」の記者・若宮(鶴田浩二)は、女性問題の権威・島内輝秋氏(柳永二郎)の談話を取るため熱海に向う車中、見送人のいない新婚夫婦と、カトレアの匂いを漂わせて隣に座った美貌の女(佐久間良子)に興味を引かれた。
熱海で村田通信員(春日俊二)に迎えられた若宮は「鶴屋ホテル」に泊った。
その晩、431号室の彼の部屋に間違って黒い洋服を届けた男があった。
翌日、島内を訪ねた若宮は室内でカトレアの匂いを嗅ぎ、車中の女を思い出した。
その日錦ケ浦で自殺があった。
現場にとんだ若宮は、その死体が例の新婚の夫であって新妻は失踪、またその部屋が481号室であり、昨夜の男は自分の部屋の431号室と間違えたのだと判った。
若宮はこの自殺に謎を感じた。
編集長・木谷(丹波哲郎)も若宮と同じ意見だった。
若宮と同僚・田原(曽根晴美)は社会部を外され、遊軍としてこの事件を追った。
数日して、鶴屋ホテルのフロント係・春田が、名古屋の西山旅館で殺された。
やはり連れの女は逃げていた。
名古屋に飛んだ若宮は島内と偶然に逢った。
やはりこの部屋には微かなカトレアの匂いがあった。
東京へ帰った若宮は、新聞をみて驚いた。
倉田という男が真鶴岬でニセ札をポケットに入れて惨殺され、その男は、若宮の部屋に洋服を間違えて届けた男だったからだ。
若宮が真鶴に飛んだその晩、真鶴に大火があった。
印刷所が焼けたのだ。
真鶴-殺人-ニセ札印刷所、若宮のカンが閃いた。
印刷所主人の奥田孫三郎(内藤勝次郎)を追ったが、木曽川下流の犬山で奥田は水死体となっていた。
犬山へ行った四郎は奥田が月一回西山旅館と連絡を取っていたことを知った。
また程遠からぬ岐阜で島内が講演していた。
事件のあるところ必ず島内がいる。
その島内を訪ねたが、島内は講演中カプセル入りの青酸カリによって死んだ。
島内家の葬式の日、若宮はカトレアの女をやっとのことで横浜まで誘いだしたが、女は「アジサイ」という言葉を残して消えた。
防衛庁を訪れた若宮は、陸軍第九研究所が謀略用にニセ札を造り、それをアジサイ工作と呼んでいたこと、岩淵安男という警察側のスパイがこの事件を追っていたことを突き止めた。
熱海で自殺した男は岩淵なのだ。
そこへ熱海から村田通信員の電話があった。
西山旅館の主人が陸軍第九研究所所長・奥田大佐であり、その奥田が箱根にいるという情報だった。
若宮は村田と共に奥田の潜伏している建物に忍びこんだ。
そこには偽ドルが散乱し、女の死体があった。
熱海で消えた女・由美(八代万智子)であった。
若宮は村田の一寸した不注意の言葉から、この一連の殺人事件の主犯が村田であると知った。
村田は第九研究所の大尉で奥田の部下であり、偽ドルを作って莫大な儲けを挙げていたのだ。
だが、部下の数人が村田の目を盗んで偽五千円札を作ったことからこの一連の殺人事件が起きたのだった。
村田は若宮を殴り倒して富士原野に運んだ。
自衛隊の射撃演習が始まるからである。
だが、砲弾にやられたのは村田の方だった。
カトレアの女はそれをみて村田の傍に走り去った。
その後、またもや一斉射撃の砲弾が飛び、彼女もその犠牲となった。
若宮は呆然と見送るだけだった。
コメント:
原作は、松本清張の長編小説。
『黒い風土』のタイトルで『北海道新聞』夕刊他に連載された(1959年5月22日 - 1960年8月7日)。
『黄色い風土』に改題ののち、1961年5月に講談社から刊行された。
週刊誌の記者が、戦時中に端を発する秘密組織の謀略による連続殺人事件に挑むミステリー長編。
映画では、原作から小樽の事件をカットするなど、人物関係は簡略化されている。
原作における沈丁花の女は「カトレアの女」とし、主人公との接触場面を変更するなどのアレンジを加えている。
石井輝男監督による松本清張ミステリーの映画化。
娯楽活劇の色合いの濃い作品に仕上げている。
殺害された被害者の関係を整理する等、大衆にもストーリーが追いやすいように工夫がなされていることも見受けられる。
残念ながら、未ソフト化作品である。
週刊誌記者の周辺で起こる連続殺人事件。
次々と男が5人も死んでいく展開で、週刊誌記者に事件の鍵(情報)が集まってくる。
このあたりは、物語としては出来過ぎの感あり。
連続殺人と並行して、5千円札の偽札つくり事件も絡んで、軍隊時代の大佐・大尉などの登場人物も絡み合って、物語は進む。
ラストで、鶴田浩二が犯人と戦うが、犯人は自衛隊訓練の実弾で命を落とす。
そこに佐久間良子も登場して、悲劇の爆死を遂げるという悲しい結末になっている。
佐久間良子はまだデビュー3年目だったが、実に綺麗で、カトレアの香りのする謎の女を演じている。
この映画は、VHS、DVD共に存在しない。
数年前に都内の映画館やテレビ(東映チャンネル)で放映されたようなので、今後もどこかで観れる可能性はある。