「みな殺しの歌より 拳銃よさらば!」
1960年11月29日公開。
大藪春彦のハードボイルド小説を映画化。
原作:大藪春彦『みな殺しの歌』
脚本:寺山修司
監督:須川栄三
キャスト:
- 衣川恭介:水原弘
- 衣川耕三:平田昭彦
- 衣川真美子:島崎雪子
- 由利子:北あけみ
- 坪田:仲代達矢
- 舟橋:田武謙三
- 小田:有木山太
- 高橋:宮口精二
- 大村:仲谷昇
- 田辺:丹波哲郎
- サリー:岸田今日子
- のぶ:中北千枝子
- 伊津久:八色賢典
- 佐野刑事:松本染升
- 岡島主任:西条悦朗
- 木谷:天本英世
- 仁太:八木沢武治
- 夜の女:宮田芳子
- 波岡:ジェリー藤尾
あらすじ:
刑務所帰りの衣川恭介(水原弘)を、自家用車で兄・耕三(平田昭彦)が迎えた。
その夜、田辺(丹波哲郎)という男に呼び出された耕三は、何者かに轢き殺された。兄嫁の真美子(島崎雪子)の誘惑を恭介は拒んだ。
恋人のストリッパー・由利子(北あけみ)を訪ねた恭介は、彼女のヒモのチンピラ・波岡ジェリー藤尾に叩きのめされた。
恭介は兄の親友・坪田(仲代達矢)に、兄や田辺のことを聞いたが何もいわない。
兄の残した財布の鍵でロッカーをあけた。そこにはドイツ製の拳銃ワルサーP38があった。
坪田は一人の男と口論していた。
田辺だ!
坪田は遂に真相を語った。
耕三、坪田、田辺ら七人は一年師銀行を襲い千五百万円を強奪した。
その時使用したワルサーと金を田辺家の墓に隠した。
そして恭介の出所の日、田辺は仲間の反対をふりきって墓をあけた。
金もワルサーもなかった。
田辺は耕三を疑った。
坪田はワルサーについては語らない。
恭介は兄の仇をワルサーでとると誓った。
田辺が死んだ。
彼にはアリバイがあった。
残った男たちは--外車セールスマン・大村(仲谷昇)、ナイトクラブ支配人・舟橋(田武謙三)、落ちぶれた流行歌手・小田(有木山太)、時計商・高橋(宮口精二)。
大村は羽田空港で死んだ。
警察も同一のワルサーが臭いと捜査に乗りだした。
坪田は舟橋に、耕三には恭介という弟がいることを話した。
舟橋は真美子と共謀して恭介を狙った。
だが、二人は逆に殺られた。
連続殺人を小田の仕業と思った高橋は、公園に彼を呼び出した。
対決する二人のうしろにもう一人の男が忍びよった。
小田も高橋も死んだ。
目的をはたして恭介は坪田のところに戻った。
坪田はサンドバッグを切り開いた。
耕三が隠した千五百万円が入っていた。
ワルサーをはさんで二人はにらみあった。
血を呼び死を誘う兇銃ワルサーは、残った二人をも倒した。
コメント:
心の支えであった兄を殺されてしまった若者・恭介。
遺品であるワルサーP38を片手に、復讐を始める。
大藪春彦のハードボイルドならではの、皆殺しの作品だ。
銀行強盗の隠し金を奪ったのは誰か。
疑心暗鬼の仲間割れ、殺し合い。
金を奪ったのは意外にも…。
最後はワルサーの暴発で全員死亡。
墓地のシーンには、寺山修司の脚本らしさがうかがえる。
仲代達矢と共に本作で主演しているのは、水原弘。
この人は、『黒い花びら』などのヒットで有名な歌手として一世風靡した。
だが、映画でも20本以上に出演した当時大人気スターだった。
この映画でもその苦み走った存在感を存分に示している。
「拳銃ワルサーP38」という拳銃は、数多くの映画に登場している。
『ナポレオンソロ』、『ダーディハリー』などの海外作品にも出てくる有名なドイツ製の銃だ。
カール・ワルサー社製の9mm軍用自動式拳銃。
1937年にHeeres-Pistole(HP)の名で開発され、翌1938年にP38としてドイツ国防軍の制式拳銃に採用された。第二次世界大戦中はルガーP08と共にドイツ軍によって広く使用され、終戦までに約120万挺が製造されたという。
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