「恋文」
1985年10月5日公開。
第91回直木賞を受賞した短編集《恋文》(1984年)を映画化。
配給収入:1.5億円。
受賞歴:
- 毎日映画コンクール
- 録音賞(橋本文雄)
- 主演女優賞(倍賞美津子)
- キネマ旬報
- 主演女優賞(倍賞美津子)
- 助演男優賞(小林薫)
- 日本アカデミー賞
- 録音賞(橋本文雄)
- 主演男優賞(萩原健一)
- 主演女優賞(倍賞美津子)
- 助演男優賞(小林薫)
原作:連城三紀彦「恋文」
脚本:高田純、神代辰巳
監督:神代辰巳
キャスト:
- 竹原将一:萩原健一
- 竹原郷子:倍賞美津子
- 竹原優:和田求由
- 田島江津子:高橋恵子
- 神谷哲史:小林薫
- 副院長:仲谷昇
- 看護婦長:左時枝
- カウンセラー:橋爪功
- 留置場の男:工藤栄一
- 神父:有馬昌彦
- 教頭:三谷昇
- 看護婦:秋元恵子
- 警官:平野稔
- カメラマン:北見敏之
- 編集部員:山川豊
あらすじ:
竹原郷子(倍賞美津子)33歳。
女性雑誌の編集部につとめるキャリアウーマン。
夫の将一(萩原健一)はひとつ年下で、中学の美術教師をしており、二人の間には優という一人息子がいる。
その将一が、ある朝突然女性からの手紙を残して家出した。
手紙の差出人は田島江津子(高橋恵子)。
将一のかつての恋人だったが今は白血病に犯されあと半年の命だという。
将一は、身よりのない彼女が死の時を迎えるまで自分の全てをかけて看病しようと、学校もやめた。
郷子は憤然とした。
彼女の境遇には同情するが、なぜ学校をやめ、家出までしなければならないのか。
じゃあ私と優はどうなるの?
数日後、郷子は将一に乞われ、従姉という立場で江津子を見舞った。
二人はなごやかに談笑し、将一という男を間に奇妙な友情が芽ばえ始めた。
その夜、郷子は息子に「長く生きられるお母さんは、死んでいく江津子さんのためにお父さんを半年貸してあげるの」と説明した。
そうは割り切ったものの、夫はもう戻ってこないかも知れないという不安におびえる毎日が始まった。
その夜、郷子は胸の痛みに耐え切れず昔の恋人・神谷哲史(小林薫)を訪れ、身体を開いた。
忍耐が限界に達した郷子に追い討ちをかけるように将一が離婚話を持ち出した。
元気なうちに結婚式だけでも挙げさせたいので離婚届けにハンを押してくれ……。
郷子の怒りは凄まじかった。
なぜ本当に離婚までしなければならないのか、理解できなかったのだ。
翌日、江津子が自殺をはかった。
江津子は将一と郷子が本当の夫婦であることを知っていたのだ。
二人の女は初めて本心をぶつけ合った。
そして郷子は心を決めた。将一と別れよう。
今、江津子さんにウエディング・ドレスを着せなければ将一は一生後悔する。
将一と江津子の結婚式の日、郷子は離婚届けを差し出した。
将一は「俺、こんな凄いラブレターをもらったのは初めてだよ」とつぶやいた。
コメント:
連城三紀彦の直木賞受賞作品を映画化。
ロマンポルノ界の神代辰巳監督が、一般映画のメガホンを取った。
クズ夫に徹する萩原健一。
作り笑顔が物悲しく、どこか憎めない。
妻の行動は、理解の範疇を越えているが、倍賞美津子の演技が素晴らしく、不思議と心に染み入る。
強靭な精神は、女性の強さそのものだった。
後半へ行くに従って、どんどん凄みが増していく。
あり得ないストーリーだが、ショーケンだからこそ受け入れられてしまう不思議なメロドラマだ。
ぶっ飛んだ人生を走り続ける個性派俳優ならではの映画になっている。
常識を重んじる正統派の俳優には絶対似合わない作品。
「もどり川」、「離婚しない女」と合わせ、連城三紀彦原作、ショーケン主演の三部作の2作目となる。
仕事も家庭も捨てて白血病で余命わずかの元恋人に献身する男と、そんな夫に苛立ちながらも受け入れていく妻の心情を描いている。
昔の恋人が余命いくばくもないと知った男が、妻子を捨てて女のためにいちずに尽くす物語。
倍賞美津子が捨てられた妻を好演している。
この女優は、当時39才。
神代辰巳監督の最高傑作。
夫(萩原健一)は、突如、窓ガラスに桜を描いて消えた。
妻(倍賞美津子)は、夫が居なくなると、息子を連れて、おいしい料理を食べに行く。
しかし、今回は様子がおかしい。
夫は何日経っても帰ってこず、会社にも出社していない。
調べてみると、夫は元恋人(高橋惠子)の元に居た。
元恋人は白血病を患い、あと半年の命。
夫は、元恋人の看病に専念したいという。
妻は夫が帰ってくることを信じて、半年間、元恋人の死を待つことにする。
通帳からほぼ全額を下ろして、夫に渡す。
妻「これで、個室へ移してあげて。雑居部屋で死ぬのは見たくない」
預金残高は18円。
妻「この18円が今の私の気持ち。預かっておくわ」
たびたび、元恋人の病室に訪れる妻。
ざわつく心を鎮めるために。
元恋人は徐々に精神を病んでいく。
苦しむ姿に寄り添い友情を深める。
妻が夫に渡した恋文(ラブレター)…それは!?というお話。