美空ひばりの映画 「たけくらべ」 樋口一葉の名作! 山田五十鈴・岸恵子の共演! | 人生・嵐も晴れもあり!

人生・嵐も晴れもあり!

人生はドラマ!
映画、音楽、文学、歴史、毎日の暮らしなどさまざまな分野についての情報やコメントをアップしています。

「たけくらべ」

 

ファイル:Takekurabe poster.jpg - Wikipedia

 

「たけくらべ」 全体の2/3程度

 

1955年8月28日公開。

樋口一葉の同名小説を映画化。

 

受賞歴:ブルーリボン賞助演女優賞(山田五十鈴)

 

原作:樋口一葉「たけくらべ」

脚本:八住利雄

監督:五所平之助

 

キャスト:

  • 美登利(みどり) - 美空ひばり
  • 伍助 - 中村是好: 美登利の父。
  • おりん - 吉川満子: 美登利の母。
  • 大巻 - 岸恵子: 美登利の姉。吉原きっての遊女。
  • 信如 - 北原隆: 竜華寺の息子。
  • 信道 - 佐々木孝丸: 信如の父。
  • おそう - 忍節子: 信如の母。
  • 大黒屋の主人 - 柳永二郎: 美登利一家が世話になっている。
  • 正太郎 - 市川染五郎: 金貸田中屋の息子。表町の頭。
  • 長吉 - 服部哲: 横町組の頭。
  • お吉 - 山田五十鈴: 荒物屋筆屋の主人。元吉原の遊女。

 

幻映画館(58)「たけくらべ」 : ふらり道草―幻映画館―

 

あらすじ:

明治二十八年。

吉原に近い大音寺界隈の子供達仲間では、金貸業田中屋の息子・正太郎(市川染五郎)を頭とする表町の一派と仕事師・長五郎の息子・長吉を頭とする横町組の一派とに二分し対立していた。

竜華寺の信如(北原隆)は、姉のお花が近々金持の家へ妾に行くことに決まったので胸を痛めていた。

美登利(美空ひばり)一家は、美登利の姉・大巻(岸恵子)が吉原きっての遊女である関係から大黒屋の世話になっていたが、大黒屋の主人は美登利も遊女として出すのを楽しみにしていた。

信如と美登利は思慕を寄せ合っていたが、田中屋の正太郎も美登利を思っていた。

筆屋という荒物屋の主人お吉(山田五十鈴)は、その昔吉原で鳴らした遊女であったが、美登利の将来を思って心を痛めていた。

姉の大巻も連日の過労に弱っていたが、笑顔で客に応じなければならぬ身だった。

一年一度の祭りがやって来た。

表町派は美登利を中心に集り、横町派は信如を中心に立てたが、信如は姉が家を去る日なので顔を見せなかった。

やがて大乱闘が始まったが、美登利は信如が横町組に味方するのが淋しく、偶々長吉に足蹴にされたのも口惜しく、漸く信如を探すと口汚くののしったが、信如は黙って立ち去って行った。

妾に出た信如の姉・お花は辛い日々にもどうすることもならず、一方大巻も薬をのみながらの苦闘であった。

やがて美登利もすべてをあきらめ花魁に出ることになった。

初見世の日、御本山に入って修行をするという信如とも別れを告げ、大黒屋の主人に連れられ吉原のはね橋を渡る美登利の手には、信如が置いて行った水仙の一枝が握りしめられていた。

 

映画感想: たけくらべ

 

コメント:

 

明治の女流作家として有名な樋口一葉の『たけくらべ』を映画化した作品。

 

たけくらべ | 樋口 一葉 | 日本の小説・文芸 | Kindleストア | Amazon

 

 

美空ひばりが主役になっているが、ここに登場する俳優たちはいずれも名だたる人たちである。

 

過労に悩む遊女を演じる岸恵子が美しく、遊女ならではの悩みを抱えている様子が分かる素晴らしい演技である。

 

当時13歳だった市川染五郎(現在の二代目・松本白鸚)も出演している。

 

本作でブルーリボン賞助演女優賞を受賞した山田五十鈴が扮する、昔吉原で大人気の遊女だったお吉の姿は素晴らしく、最大の見所である。

かつては売れっ子の花魁であったが、今では小さい駄菓子屋を営む病気がちな中年女性を演じている。

彼女の感情のふと見せる色気と、みすぼらしい格好とのギャップや言動が落魄した女性の姿を見事に表現し、華やかな世界の裏にある残酷な世界を見る人に伝えることに成功している。

そんなうらぶれた女性なのに不良少年の言動にキレて、ヤンキーばりのビンタと啖呵で少年をビビらせるシーンが笑える。

 

残念なのは、主役を演じた、当時18歳の美空ひばりである。

本作はひばりの当時の演技力が分かる貴重な作品となっている。

子役時代に人気沸騰したのが仇となって、本当の演技力が身についていなかったのか、こういう難しい役柄は演じることができていない。

 

人気だけでは映画にならないのだ。

おそらくひばりの母が売り込んで、こういうキャスティングになったのだろうが、身の程知らずとはこういうことを言うのだ。

 

樋口一葉×美空ひばり×五所平之助という異色の組み合わせに期待したようだが、結果は大コケだった。

樋口一葉の小説は観念的なので映像にしてみると現実と乖離しがちになり、そして映像化することで原作の美文によって紡がれる世界が失われるという悪循環にこの映画がなってしまったといえるかも知れない。

主人公の美登利を美空ひばりはどう演じていいのかわからないまま演じている。

姉が遊郭で働いていて自分も遊郭で働くことを理解しており、恵まれた生活をしていても心が晴れずアンニュイな言動や行動を繰り広げる少女という設定は、本当の芝居が見についていない子役には無理だ。

こういうあまりにも難解な役どころを掴むのは難しいのだ。

ひばりも、これに懲りて、その後は名作への挑戦は控えるようになった。

『伊豆の踊子』では好演していたが、遊女になる手前の微妙な立場の女性を演じるのは無理だった。

監督が、名匠・五所平之助であったにもかかわらずこういう映画になってしまったのは残念至極だ。

五所監督といえば、日本初のオールトーキー映画となった『マダムと女房』や、田中絹代主演の『煙突の見える場所』など多くの名作を生んだ著名な監督だ。

この人をもってしても、美空ひばりを『たけくらべ』の美登里役に仕立てることは出来なかった。

 

この映画は、YouTubeで全体の三分の二ほど無料視聴可能。

しかし、音声、映像共にきれいではない。

 

この映画は、TSUTAYAでレンタル可能(ただしVHS):