「武士道ブレード」
(原題:The Bushido Blade )
米国公開:1981年。
日本公開:なし。
脚本:ウィリアム・オーバーガード
監督:トム・コタニ
キャスト:
- リチャード・ブーン : マシュー・ペリー
- 千葉真一 : 井戸守
- フランク・コンバース : ローレンス・ホーク
- ローラ・ジムスラー : 巴
- ジェームズ・アール・ジョーンズ : 捕鯨船乗組員
- マコ岩松 : 円次郎
- ティモシー·マーフィー : ロビン・ガル
- マイク・スター : ケイブ・ジョンソン
- 丹波哲郎 : 大和守
- 三船敏郎 : 林復斎
- 天津敏 : 山崎伝之進
- 浅野真弓 : ゆき
- 大前均 : 力士
あらすじ:
黒船来航で騒然としていた日本。
国交を望むアメリカ合衆国は条約批准を求めていたが、200年以上鎖国を続けていた日本では、開国派と尊皇攘夷派とで国論が二分されていた。
江戸幕府の特命全権大使である林復斎(三船敏郎)はマシュー・ペリー提督(リチャード・ブーン)が主催するパーティーに招かれていた。
ペリーは早く条約を批准しようと調印を迫るが、林は「両国の親睦の証として、国宝の日本刀をアメリカ大統領に贈呈したい。調印はその後だ」と応じていた。
ところが尊皇攘夷派の大名である大和守(丹波哲郎)に命ぜられた山崎伝之進(天津敏)に、その日本刀を奪われてしまう。
林は日本刀を取り戻すまで条約締結しないとペリーに伝え、開国派のサムライ・井戸守(千葉真一)に奪還を命じる。
ペリーは自分たちも手伝うと申し出るが、井戸守は国内の問題だからと断り、大和守の居城へ向かった。
条約を早く批准するため、ペリーはローレンス・ホーク大佐(フランク・コンバース)を呼び、井戸守に協力して日本刀を取り返すよう指令。
ホークはロビン・ガル士官候補生(ティモシー·マーフィー)とケイブ・ジョンソン水兵長(マイク・スター)を連れ、井戸を追いかける。
コメント:
三船敏郎、丹波哲郎、千葉真一という日本が世界に誇る名優陣が『地獄の戦場』のリチャード・ブーンらと共演した作品。
日米和親条約が結ばれた幕末の日本で、ペリー提督に贈呈する刀が何者かに盗まれるが、その裏には尊皇攘夷派の陰謀が絡んでいたというストーリー。
当時としては珍しい日米両国で活躍した「トム小谷」こと小谷承靖監督が手掛けた異色の時代劇アクション映画である。
三船敏郎が演じた林復斎(はやしふくさい)は、実在の人物。
安政元年(1854年)正月にペリー艦隊が再来。
復斎は家督を継いで間もない慌ただしい時期であったが、以前からの有能ぶりや異国との交渉史への通暁が買われて、町奉行井戸覚弘とともに応接掛として老中阿部正弘から任命され、横浜村で交渉にあたったのである。
実際の交渉は漢文の応酬で行われたため、復斎はその漢文力を買われ、主な交渉はすべて任されることとなる。
復斎はすでに当時の諸外国の動静を理解しており、鎖国(海禁)体制の現状維持は困難と考え、異国船への薪水食料の給与程度はやむを得ずと判断し、ペリー艦隊との交渉でも柔軟に対応した。
ただし、通商要求に関しては時期尚早として断固拒絶した。
長期にわたった交渉の中で江戸城に登城し、老中の阿部や海防参与の水戸藩主徳川斉昭などにも交渉経緯を伝えるなど、江戸と浦賀を往復した。
米国側からは「55歳くらい。中背で身だしなみ良く、厳粛で控えめな人物」と評されている。
何でこんな幕末の貴重な物語を扱った作品で、豪華キャストが出演しているのに日本劇場未公開で、未DVD化なのかと首をかしげたくなる。
だが、日本で配給されなかった映画は、興行収入の対象外なので、このように無視されたままになるのが通常だ。
なぜ三船敏郎という男は、こういう垂れ流し状態の外国映画作品を量産したのかが疑問だ。
所詮この人は役者バカだったのかも知れない。
とにかく、動画配信が待たれる。
千葉真一は、主役級で出演しているが、この当時はまだハリウッドへの本格的な進出はしていなかった。
千葉は、『海底大戦争』(1966年)と本作を除いてはハリウッドとは関係していない。
『ザ・サイレンサー』ではじめて1994年に日米合作作品に主役で登場している。
それ以前の千葉真一の海外作品は、台湾、香港、タイなどアジア諸国との提携だった。
そして、2003年に「kKill Bill」で一躍ハリウッドスターになるのだ。
本作は、日本人が多数携わっているのでヘンテコ日本描写は控えめで、大量消費文明への批判や精神文化や価値観の違いを力説するシーンは見もの。
また実際にGHQ通訳を担当した事のある丹波哲郎の流暢な英会話も堪能できる。
あのダースベイダーの声役で知られるアカデミー賞俳優のジェームズ・アールジョーンズが捕鯨船の乗組員役で出演している。
この映画は、TSUTAYAでレンタル可能(ただしVHS):