「お吟さま」
1978年6月3日公開。
千利休の娘・吟の悲恋を描いた映画。
原作:今東光『お吟さま』
脚本:依田義賢
監督:熊井啓
キャスト:
- 志村喬 - 千宗易利休
- 中野良子 - お吟(利休の娘)
- 梅野泰靖 - 千道安
- 高橋長英 - 千少庵
- 岩崎加根子 - 千宗恩
- 二代目 中村吉右衛門 - 高山右近
- 三船敏郎 - 豊臣秀吉
- 伊藤孝雄 - 石田三成
- 清川新吾 - 浅野長政
- 千葉敏郎 - 増田長盛
- 松本朝夫 - 長束正家
- 伴勇太郎 - 前田玄以
- 殿山泰司 - 安国寺恵瓊
- 加藤武 - 施薬院全宗
- 三井魔乎 - おみの
- 原田大二郎 - 万代屋宗安(利休の弟子・娘婿)
- 原健策 - 今井宗久
- 井口海仙 - 天王寺屋宗及
- 千政和 - 細川三斉
- 伊東亮英 - 住持
- 西村晃 - 神屋宗湛
- 中村敦夫 - 山上宗二
- 岡田英次 - 小西行長
あらすじ:
秀吉の茶頭・千利休(志村喬)の娘・吟(中野良子)は、五年ぶりにキリシタン大名・高山右近(中村吉右衛門)を、父の名代で高槻城へ訪ねた。
吟は二十歳になる今日まで嫁入りもせず、幼なじみの右近を慕い続けてきたのだったが、妻のある右近はキリシタンの教えにそむいてまで、吟の思いを受け入れようとはしなかった。
利休は大阪城で、石田三成(伊藤孝雄)から吟の縁談を持ちかけられる。
気の進まぬ吟は、高槻から明石へお国替え中の右近に心中をうちあけるが、彼は冷たくあしらうのだった。
万代屋宗安(原田大二郎)に嫁いだものの、吟の右近に対する思いは増すばかりであった。
天正十五年十月、北野の大茶の湯が催された際、吟の美貌に秀吉(三船敏郎)は激しく心を動かされる。
三成と宗安は、吟を秀吉に差し出し、おのれの栄達を画策する。
一方、キリシタン禁制の布令で身を隠していた右近のもとへ、吟は馬を走らせ、御身の危急を知らせる。
そして、九州まで一緒に連れて行ってくれと哀願する吟に、右近は困惑しながらも、彼女と添い寝する。
しかし、右近は吟に心を残しながらも、彼女を置き去りにし、絶望の淵にたたき込む。
天正十八年、秋深き大阪城に迎えられた吟は、黄金の茶室で秀吉から求愛の言葉を受けた。
翌年一月、卑怯極まる秀吉の横恋慕に、利休は命に代えても吟を守ろうと、身をひそめていた右近に、吟の加賀への同行を頼む。
その夜、利休一家は揃って別離の宴をはったが、千家はすでに秀吉の軍勢に包囲されていた。
逃れるすべのなくなった吟は、白無垢の死装束に身を正し、右近に別れの書状を残し離れ座敷へと姿を消す。
二月二十八日、太閤秀吉の命により、利休は切腹する。
高山右近はルソンに追放され、マニラでその生涯を閉じた。
コメント:
今東光原作の「お吟さま」の映画化。
信仰に生きる高山右近(中村吉右衛門)と愛を貫くお吟(中野良子)の悲恋の物語だ。
右近のストイックな宗教への信念と、人の心を思いやれないお吟の恋の情熱とがぶつかり合う見応えのある映画だ。
1962年に有馬稲子主演ですでに映画化されたが、本作は中野良子主演でリメイクされたものである。
公開当時、利休を演じた志村喬は73歳、お吟を演じた中野良子は28歳だった。
志村喬の貫禄のある風貌、演技は堪能できる。
お吟が恋慕う高山右近を演じたのが、つい最近亡くなったばかりの中村吉右衛門である。
中野良子と吉右衛門との異色の取り合わせの妙が、今となっては懐かしい。
この頃の中野良子は、もっとも気品に溢れていた。
嫁ぎ先から「千の家に帰れ」といわれた時のお吟のうれしさをかみ殺した表情は何とも言えない。
この映画では秀吉(三船敏郎)と戦う千利休(志村喬)とお吟との表現力の勝負だ。
三船敏郎の秀吉も傲慢さが出ていて良かった。
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