「士魂魔道 大龍巻」
1964年1月3日公開。
原作:南條範夫「士魂魔道」
脚本:木村武、稲垣浩
監督:稲垣浩
出演者:市川染五郎 、 佐藤允 、 夏木陽介 、 三船敏郎 、 星由里子 、 久我美子 、 水野久美 、 草笛光子 、 戸上城太郎 、 稲葉義男
あらすじ:
コメント:
上記のあらすじがつまらないので、主なキャスティングから説明する。
深見重兵衛(市川染五郎):
中途半端な主人公。最後の生き残りの一人。
特に強いわけでもなく二度も捕まっている。
「竹を割ったような奴」とか言われているが、その性格もよくわからない。
完全に豊臣側というわけでもなく、商人になるわけでもなく辻斬りになるでもなく何やっているのかも不明。
何故あんなにモテるかも分からない。
あの大龍巻直撃の中で生きていたのはやはり主人公の恩恵かも。
奥野久之助(夏木陽介):
大阪冬の陣後、商人として成功を収める元豊臣側の武士。この作品の中では一番の勝ち組。
草薙修理(佐藤允):
大阪冬の陣後、全てに投げやりになり、辻斬りで生活を立てる元豊臣側の武士。
終わってみると夏木陽介と同じく、完璧に脇役で特にいなくてもいいような役だ。
小里(星由里子):
実はぼぼ主役。
水野久美と市川染五郎をかけてバチバチする役。
この関係は、『宮本武蔵』(稲垣版)のお通と朱実とほぼ同じなのだ。
もちろん星由里子がお通。
ストーリー中ほぼすれ違いで探し回っている作品ってところもそっくり。
甲賀流忍者・織江(水野久美):
父の仇である市川染五郎を殺そうと狙う忍者役。
だが、途中で何故か好きになっちゃって「あの男の子供が生みたい!!」とか言い出す始末。
星由里子に決闘を申し込んだりもしたが、大龍巻でうやむや。
市川染五郎と星由里子が両想いなのを知って身を引くけなげな役。
弟君は市川染五郎を殺そうと狙っていたはずだけど、やはり例の大龍巻でうやむやになったらしい。
菊里(久我美子):
星由里子の姉役で、佐藤允の元婚約者役。
大阪城が落城した折、さらわれて女郎にまで身を落とす。
最後まで救われることなく死亡。
明石守重(三船敏郎):
豊臣側の元武士で、今は虚無僧の姿で、主人公達のピンチに駆けつける助っ人的役。
三船敏郎がこんな映画でなくてもいいのに。
それにしても大龍巻で星由里子だけ助けて、市川染五郎を放置するのは流石に酷い。
大龍巻をいいことに星由里子と二人きりで抱き合うのが目的だったのではないか。
ストーリーはこんな感じ:
市川染五郎主演。
染五郎・佐藤允・夏木陽介が一応は物語の中心。
大坂夏の陣で豊臣方は徳川方に敗走し、切腹すると決めた染五郎は、若君を連れた星由里子を守るために死に損ない、やけになった佐藤允は辻斬りに身を落とし、夏木陽介は全てはカネ(金次第で兵器さえ売る)の商人になった。
ワルの戸上城太郎、稲葉義雄の二人の所為で、星由里子は苦難の連続の末に、尼寺に逃げ込むが、尼僧の草笛光子には、尼にはなりたくない、恋を成就させたいと訴える。
草笛光子には実は昔恋人がいて、それが虚無僧になつた三船敏郎だった。
しかし、染五郎と星由里子は悪に捉えられ、絶体絶命のピンチ。
そこへ大龍巻がやってくるのだ……
冒頭の大坂城の場面や、クライマックスの大龍巻のシーンなどは、特技監督・円谷英二の腕の見せ所の痛快娯楽時代劇。
はじめから終わりまで一切手抜きのない巨編。
大阪夏の陣、冒頭の落城寸前の戦の描写は見ごたえ十分。
負け戦に切腹を試みる若侍。
侍に未練はなく逃げの一手という友。
敵と刺し違えて華々しく散ろうとする侍大将。
戦の中、操を奪われた女。
秀吉の遺子を託された娘。
その子を奪い去ろうとする伊賀忍者。
謎の虚無僧。
豊臣の残党狩りのドサクサに陰謀をめぐらせる者。
などなどさまざまな登場人物が後の運命に翻弄されながらも再び一つの所によって来る。
戦の敗者という負を背負った人間たちのドラマが映画全体に緊張感を張る。
全ての要素が詰まって息もつかせず大団円に。
最後は善も悪も全てを飲みつくしてしまう大竜巻。
もちろん配役もいい。
骨太の奇想天外の時代劇といえるかも。
どう見ても、くノ一には見えない水野久美。
たった一人で馬に乗せられるまだ幼い若君。
奥目がいやに目立つ染五郎。
など、笑えるところも満載の楽しいアクション映画である。
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