三船敏郎の映画  第24作 「金の卵」  バックステージもの オールスターのカメオ出演 | 人生・嵐も晴れもあり!

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「金の卵」

(Golden Girl)

 

1303本目「金の卵」(1952) | 習字の先生のブログは書くことなくて観た映画の話ばかり

 

1952年5月14日公開。

 

 

脚本:井手俊郎 

監督:千葉泰樹 

出演者:

島崎雪子、 香川京子、 小林桂樹、 瀧花久子、 沢村貞子、 見明凡太郎、 小泉博、 杉浦春子、 中北千枝子、 岡田茉莉子、 若山セツコ、 二本柳寛、藤原鎌足、 三國連太郎、 大谷友右衛門、 原節子、 越路吹雪、 杉葉子、 池部良、 三船敏郎、 上原謙、 山本嘉次郎、 稲垣浩、 谷口千吉 

 

金の卵 1952年 東宝 - 日本映画1920-1960年代の備忘録   

 

あらすじ:

三島藍子(島崎雪子)は東京の下町の電気工場の女事務員だったが、叔父・野村惣平(見明凡太郎)の息子・大助が、藍子には内緒でそっと東邦映画会社のニュー・フェイス募集に彼女を推せんしたのが、嘘から出た誠で、数多い応募者の中から彼女も合格者の一人にえらばれた。

激しい訓練期間が済んだとき、同期の藤村芳子(香川京子)が「港の花嫁」という作品の主演にえらばれ、藍子たちの羨望の的であった。

だが、その芳子が病気のため出演不可能になったとき、藍子が幸運にもその役をふり当てられた。

彼女の第一回作品は大成功で、三島藍子も新スターとして売り出し、一年足らずで、第一線スターとしてもてはやされるようになった。

ファン・レターが毎日山のように舞い込み、白亜の洋館の家も建てられた。

しかしそう良いことばかりではなかった。

母と兄夫婦と弟の、貧しかったが楽しい円楽は失われ、弟・俊夫は工場をやめて大学入学を夢みていたが、競輪や競馬にこって不良になった。

藍子のマネージャーとなった叔父夫婦も虚栄の権化のようになり、恋人・瀬川勉(小泉博)とも気まずくなった。

藍子の生活はすさんで来た。

しかし、ある日彼女の自動車がトラックと衝突して、負傷し、再起不能を伝えられたとき、彼女にとっては初めてこれ迄の生活を反省する時間が与えられた。

温泉で松葉杖をついて療養生活をする彼女の許へプロデューサーは足の不自由な役を持って来た。

彼女は松葉杖を棄てて立派に歩いて見せた。

彼女の反省の期間にはそうした偽装が必要だったのである。

見事にカム・バックした彼女は、人間として一皮脱皮した立派なスターであった。

 

金の卵 1952年 東宝 - 日本映画1920-1960年代の備忘録

 

コメント:

 

いわゆるバックステージものである。

映画制作の現場を描いており、当時の映画俳優が総出で顔見世している。

カメオ出演のオンパレードになっている。

 

当時は、脚本が井手俊郎のオリジナルということで関心が高まった。
普通にOLとして勤めていたヒロイン(島崎雪子)が、オーディションを経て女優になり、同期入社の女優(香川京子)が倒れて代役を射止め、スターにのし上がる。

ルーティンワークのコマとして使われ、多忙に振り回され、次第に虚飾の中で人間らしさを見失っていく。

OLの頃からの恋人(小泉博)も去っていく。

その顛末が丁寧に書き込まれている。この辺りはさすが井手俊郎である。

撮影所風景として、実名のままで、原節子、越路吹雪、山根寿子、池部良、三船敏郎、大谷友右衛門(中村雀右衛門)、榎本健一、山村聰が登場して撮影風景が描かれる。

この辺りは劇中劇として結構面白い。

 

監督たちも稲垣浩、山本嘉次郎、谷口千吉、豊田四郎らがこれまた実名のまま出演している。

面白い趣向で記録として良い資料になる。

映画全盛期だった当時は、それなりに興味を引く題材の作品だったかも知れない。

 

日本映画専門チャンネル on Twitter: "📽️明日放送 「金の卵」未ソフト化✨ ◇10/7(水)よる8時~ほか #島崎雪子  が自身と重なる役を熱演😌🌼 舞台となる撮影所で #三船敏郎 #原節子 #三國連太郎 #池部良 ら 映画人の姿を収めた貴重作🎬✨  芸能界に公私ともに翻弄される ...


多くの俳優や監督が実名で登場することによって、ドキュメント風の現実性が増してくる。

すると、その分、ドラマ部分の虚構性というか嘘臭さが目立ってしまう皮肉な結果となった。

それに加えて、ヒロインの人格崩壊を強調するために、彼女の実家の人々の清く正しく美しい場面がエセ自然主義文学風であざとく見えてくる。要するに実名の映画関係者を登場させるなら、明るく楽しい夢の話にしておけばよかったのではないか。

ヒロインのマネージャーがピンハネしてだんだん肥え太っていく変化を描いて、かなりリアリティがある。

マネージャーが見明凡太郎で、その妻を澤村貞子が演じている。

戦後の一時期、撮影所の中を闊歩してギャラや出演作品の選定など、本人の知らない間に会社と駆け引きするマネージャーが居たらしい例えば、高峰秀子の随筆の中に、知らない間に出演交渉が成立していた話が登場する。

リアリズムと虚構性が巧く統合されていない。

折角、島崎雪子が東宝スターたちに支えられて頑張っているけれど、映画自体は中途半端の出来栄えになった。

 

この映画は、日本映画専門チャンネルなどで放送されたことがあるようだ。

DVDやVHSは発見できていない。