「霧笛」
1952年3月5日公開。
谷口千吉監督による映画。
脚本:八住利雄
監督:谷口千吉
出演者:
山口淑子、三船敏郎、ボッブ・ブース、志村喬、村上冬樹、柳谷寛、左ト全、千石規子、上山草人、河崎堅男、熊谷二良、瀨良明、廣瀨正一
あらすじ:
明治七年の横浜には、まだ居留地という治外法権の地区があった。
お花(山口淑子)は、由緒ある旗本の娘であったが、幕末の戦乱にすべてを失って一人淋しく暮らしていた。
そこへつけ込んだ悪官員が、彼女に無体にもいい寄って来たので思わず、彼を殺し、夢中になって逃げ出した。
そして、気を失って倒れている彼女を通りかかったドイツ人のギム(ボッブ・ブース)が助けて、連れて帰った。
そして居留地の貿易商の二階に匿われ手厚い保護を受けているうち、お花の美しさに惹きつけられたギム。
そして、彼の情けにほだされたお花は、心ならずも洋妾の生活におちて行った。
しかし、ギムの馬丁の千代吉(三船敏郎)と知り合ってから、彼の純真な熱情にうたれ、お花も強くなろうと決心した。
本国へ帰るギムがお花を連れて帰ろうといったとき、お花は愛する人があるからとことわった。
それが千代吉であると知ったギムは、船のお別れパーティへお花と共に千代吉も連れ込み、密航者と一緒に射殺しようとしたが、お花は千代吉が殺されれば自分も舌をかみきって死ぬと強い決意を見せる。
ギムはついに千代吉を殺すことは出来なかった。
朝霧の海を波止場へ漕いで行くボートに千代吉とお花の姿が見られた。
コメント:
殺人犯として追われる女・お花(山口淑子)を助けた外国商人ギム(ボッブ・ブース)はその女の美しさについ手を出して囲ってしまう。
しかし、武家の娘としての矜恃を持ったお花は、決して心を許さない。
やがて知り合ったギムの馬丁・千代吉(三船敏郎)が言う「ラシャメン」という言葉に傷つく。
「ラシャメン」とは、幕末から明治にかけて外国人の現地妻として提供された日本女性を指す、さげすみの言葉だ。
だがその後、お花と千代吉は、心を寄せ合うようになる。
ギムは心優しいところもあったのだが、不正工事がばれて日本から逃げ出すことになり、千代を無理矢理連れ帰ろうとする。
それを知った千代吉がギムと対決する。
最後には愛は勝つという恋愛映画だが、不正工事というスキャンダラスなサブストーリーもあってなかなか見せてくれる。
山口淑子は情念を燃やす美しい女を演じている。
三船敏郎のいかつさと山口淑子の女らしさが、いいバランスで描かれている。
明治初年の横浜が舞台。
ご都合主義満載な悪人で、治外法権の中で甘い汁を吸う外国人・ギム。
そんな男の妾になってしまう身の上の美女を演じる山口淑子が魅力的だ。
三船敏郎は、『馬喰一代』でも山口淑子とコンビを組んでおり、相性が良さそうだ。
ところが、この作品は、DVDもVHSも入手できない状況である。
だが、国立映画アーカイブや、時代劇チャンネルで視聴できることがある。
東京国立近代美術館フィルムセンターは2018年4月1日に東京国立近代美術館より独立し、新しい組織「国立映画アーカイブ」となっている。
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