「寝ずの番」
2006年4月8日公開。
長門裕之が扮する上方落語界の重鎮の通夜を、実弟・津川雅彦が監督する異色映画。
マキノ雅彦第1回監督作品。
R15+指定。
受賞歴:
- 第16回日本映画批評家大賞・批評家特別監督賞 - マキノ雅彦(津川雅彦)
- 新藤兼人賞2006 金賞 - マキノ雅彦
原作:中島らも
脚本:大森寿美男
監督:マキノ雅彦(津川雅彦)
出演者:
中井貴一、木村佳乃、堺正章、笹野高史、岸部一徳、長門裕之、富司純子、高岡早紀、木下ほうか、桂三枝、笑福亭鶴瓶
あらすじ:
上方落語界の重鎮・笑満亭橋鶴(長門裕之)が亡くなった。
今わの際、「外が見たい」と言ったのを、一番弟子の橋次(笹野高史)が「そそが見たい」と勘違いした為に、橋太(中井貴一)の妻・茂子(木村佳乃)が恥を忍んで自分のおそそ(=女性のあそこ)を見せた。
そんなそそっかしい一門であるから、通夜の晩は無礼講である。
生前の師匠の様々な逸話で盛り上がり、遂には亡き骸を引っ張り上げて落語『らくだ』の“カンカン踊り”まで出る始末であった。
それから暫くして、橋次が亡くなった。
通夜の晩、想い出話に花が咲く。
験の悪さと言ったら群を抜いていた橋次。
お寺さんを借りての独演会では、行く先々で、本堂が火事になったり、住職が亡くなったり……とついてない。
だが、たった一度だけ、艶っぽいお姉さんとの一夜も、あることにはあった。
一年後、今度は橋鶴師匠の妻・志津子ねえさん(富司純子)が亡くなった。
通夜の晩、かつて今里新地の一番人気の芸妓だった志津子ねえさんの弔問に、鉄工所の元社長だと言う初老の男(堺正章)がやって来た。
果たしてこの男、師匠とねえさんを争った恋敵で、霊前にねえさんから教わった座敷歌を捧げたいと言い出した。
ところが、その歌がエッチで洒落ていたことから、そのうち橋太が負けじと歌い出し、終いにはみんなで歌合戦、となるのであった。
コメント:
敬愛する落語の師匠(長門裕之)の死に弟子たちが寝ずの番(通夜)で思い出を語る。
そしてその後も関係者がつぎつぎにあの世に・・・。
といってもホラーではない。
身内だけの通夜の席で語られる色々なエピソード。
落語家らしいハチャメチャな話をさもそれらしく語る。
極めつきは師匠の最後の高座と言って、息子自らが、「らくだ」を地で行くカンカンノウを踊らせる場面。
そして、その後も兄弟子(笹野高史 )の急死で、また兄弟子追悼の馬鹿話が始まる。
最後には師匠の女将さん(富司純子)まで亡くなり、その席では猥歌が飛び交う。
世にも滑稽な、3度にわたる通夜のお話。
マキノ雅彦(津川雅彦)の監督で兄長門裕之が出演するという映画。
師匠および弟子たちは芸達者な人ばかり。
そして兄弟子の通夜の場面では、桂三枝、笑福亭鶴瓶、浅丘ルリ子、中村勘三郎、米倉涼子などがちらりと顔見せなど豪華。
そのお通夜で、師匠の十八番だった「らくだ」に出てくる屍人のカンカンを師匠の死体を使ってみんなで踊る。
おふざけが過ぎる感があるが、死人に口なしで、師匠自身が文句を言いたくても無理。
こんな映画を良く作ったものだ。
極め付きは、富司純子の女将さんのお通夜での、マチャアキの下ネタの歌だ。
これは笑える。
やはりこの人は根っからのコメディアンであり、音楽家だ。
三味線も上手いし、歌も上手い。
志津子ねえさんを演じる富司純子は、落語界の重鎮の妻だが、結婚前は売れっ子芸者だったという設定。
当時マチャアキが相当入れあげていたのだ。
その想いを三味線を弾きながら歌に乗せて告白するシーンは味がある。
なぜこの映画が、文部科学省認定作品でありながら、猥語が頻出(70数回)することを理由にR15+指定を受けたかは全編見ると分かる。
映像的には、それほどすごくはないのだが、とにかく下ネタ満載の会話やどどいつなど、音声が度を過ぎている。
勉強になると思う人もいるかも知れないが。
本作は、映画監督マキノ雅弘の甥である津川雅彦が、「マキノ雅彦」の名義で映画監督として演出した。
ちなみに、本作を含めて演出した作品は以下の3本。
- 寝ずの番(2006年、光和インターナショナル / 松竹)
- 次郎長三国志(2008年)
- 旭山動物園物語 ペンギンが空をとぶ(2009年)
この映画は、今ならいくつかのシーンに分けてYouTubeで視聴可能。
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