「日本独立」
2020年12月18日公開。
敗戦後の日本復活を描いた異色作。
監督・脚本:伊藤俊也
キャスト:
- 白洲次郎 - 浅野忠信
- 白洲正子 - 宮沢りえ
- 吉田茂 - 小林薫
- 松本烝治 - 柄本明
- 幣原喜重郎 - 石橋蓮司
- 近衛文麿 - 松重豊
- 吉田満 - 渡辺大
- 吉田ツナ - 浅田美代子
- 美濃部達吉 - 佐野史郎
- 楢橋渡 - 大鶴義丹
- 小林秀雄 - 青木崇高
- 麻生和子 - 梅宮万紗子
- 昭和天皇 - 野間口徹
- ダグラス・マッカーサー - アダム・テンプラー
- ロバート・D・ヒース・Jr.
- ベネディクト・セバスチャン
- ローレンス・マックラウド・マッドクス
- 語りー奥田瑛二
あらすじ:
ケンブリッジで学び外国生活が長い白洲次郎(浅野忠信)は、開戦前から日本の敗戦と食糧難を予見し、実業の第一線を退いて東京郊外に移住して農業を始める。
1945年8月15日、白洲が終戦を知ったのは、畑仕事をしていた時だった。
その頃吉田茂(小林薫)は大磯の邸宅で、「遂に来るものが来候」と手紙に書いていた。
日本はGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の占領下に置かれ、8月30日には連合国最高司令官マッカーサーが厚木に降り立った。
正装の昭和天皇(野間口徹)とラフな姿のマッカーサーが並んだ写真が新聞を飾り、人々は敗戦の事実に改めて衝撃を受けた。
間接統治とはいえGHQの力は絶対的で、日本の民主化と非武装化を求めて占領政策に着手。マッカーサーは天皇に近い人物から民主的な憲法案を出させるべく、元首相で公爵の近衛文麿(松重豊)に憲法改正を勧めた。
そんな中、外務大臣・吉田茂はGHQとの交渉役である終戦連絡事務局の仕事を白洲に任せようとする。
吉田と白洲は24歳も年が離れているが馬が合い、遠慮なしの激論を交わすこともしばしばあった。
やがて白洲は、日本の再出発のために吉田の力になることを決意。
吉田の「占領はすぐに終わる。だが、その間の対応を日本が間違えると、一度負けたどころか、二度も三度も負けることになる」との言葉を胸に、白洲は熾烈な交渉の最前線に身を置き、彼の堂々とした態度はGHQの度肝を抜いた。
憲法改正に意欲的に取り組んでいた近衛だったが、近衛の戦犯指定が濃厚になり、GHQは憲法改正を託した事実を否定。
近衛は巣鴨プリズンへ入る日の早朝、自殺する。
一方、憲法問題は内閣の仕事であるとして、国務大臣・松本蒸治(柄本明)もまた憲法学者を集め憲法改正に着手していた。
しかし水面下でGHQはソ連が参加する極東委員会に干渉されぬよう、極東委員会の発足前に憲法改正案を仕上げる必要に駆られ、自ら憲法草案を作成する極秘プロジェクトを開始。
他国主導で憲法が作られるという非常事態に、白洲は外相公邸に寝泊まりしながらこの勝負に勝つ方策を見出そうと苦悩するが、それを見出せぬ現状に怒りを募らせる。
そんな彼に吉田は、日本の独立という未来を見据えたある本音を明かす……。
コメント:
オリジナル脚本による、日本の敗戦から日本国憲法制定までを描いた異色作である。
第二次大戦直後に日本の独立回復を目指しGHQと渡り合った吉田茂と白洲次郎を活写した人間ドラマ。
外務大臣・吉田茂は白洲次郎を呼び出し、GHQとの交渉役を依頼。
親子ほども年の違う二人だったが、日本の再出発のため激論を交わしながら国の難局に立ち向かう。
結論は、現憲法はアメリカの押しつけで噴飯もの、ということだろうか。
吉田茂、白洲次郎らが頑張ったが、GHQに押し切られた。
二回目の敗戦だ。
劇中、自衛のための戦争も禁じられるのか、と閣僚が絶句したシーンがあった。
深読みすると、現在の保守政権が目指す憲法改正に則ったプロパガンダのような気もする。
象徴天皇は変えられない。
現在の自衛隊を新しい憲法の中に明記したいだけなら戦争放棄は残る。
民主化を進めるGHQが検閲に励む。
吉田満の「戦艦大和ノ最期」は占領下では日の目を見ることはなかった。
また、憲法改正にGHQの拙速を非難気味に描く。
マッカーサーの目は、極東会議に参加するソ連の動向に注目し、いち早くアメリカ寄りの憲法を要求した。
すでに冷戦は始まっている。
1949年は中国共産党の中華人民共和国の成立。
1950年は朝鮮戦争勃発で、アメリカのアジア戦略は反共に硬化した。
映画は憲法一本槍で、安全保障問題は棚上げになっている。
アメリカのアジア戦略が基本で、日本の形は変わる。
ちなみにマッカーサーのドイツと自分たちを45歳の成熟した人間とすると、日本人の精神年齢は12歳だ、
と言う発言が引用されているが、映画としては何を言いたいのか判らない。
1945年の77年前にはチョンマゲ姿で刀を振り回していたのだ。
異文明を比較するのが間違っている。
白洲次郎の妻・正子を宮沢りえが演じていて存在感がある。
白洲正子という人は、ハイカラで、ずばずばものを言う先進的な女性だったようだが、宮沢りえはそのイメージにピッタリだ。
良いキャスティングだと言えよう。
小林薫の吉田茂も素晴らしい。
特殊メイクで、みごとに変身している。
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