淡島千景の映画 「夏の庭 The Friends」 相米慎二監督作品 淡島千景の熱演が光る! | 人生・嵐も晴れもあり!

人生・嵐も晴れもあり!

人生はドラマ!
映画、音楽、文学、歴史、毎日の暮らしなどさまざまな分野についての情報やコメントをアップしています。

「夏の庭 The Friends」

 

 

「夏の庭 The Friends」 全編

 

1994年4月9日公開。

一人暮らしの老人と三人の小学生の交流を描く感動作。

 

脚本:田中陽造 

監督:相米慎二 

出演者:

三國連太郎 、 坂田直樹 、 王泰貴 、 牧野憲一 、 戸田菜穂 、 根本りつ子 、 笑福亭鶴瓶 、 寺田農 、 柄本明 、 淡島千景 、 矢崎滋

 

 

あらすじ:

小学6年生のサッカー仲間、木山諄(坂田直樹)、河辺(王泰貴)、山下(牧野憲一)の3人は、ふと人の死について興味を抱き、近所に住む変わり者の老人・傳法(でんぽう)喜八(三國連太郎)に目をつけ、彼がどんな死に方をするか見張ることにした。

荒れ放題のあばら家にひとり住む様子を観察する3人に気づいた喜八は最初は怒り出すが、やがてごく自然に4人の交流が始まる。

老人の指示通り子供たちは庭の草むしりや家のペンキ塗りを行い、庭にはコスモスの種を巻き、家は見違えるようにきれいになっていった。

子供たちは喜八から、古香弥生(淡島千景)という名の女性と結婚していたが別れたという話や、戦争中、兵隊をしていた時にジャングルの小さな村でやむを得ず身重の女の人を殺してしまった話などを聞く。

3人は喜八の別れた妻を探し出すことにし、やがてそれらしき人を探し当て老人ホームに訪ねるが、部屋には担任の静香先生(戸田菜穂)がいた。

先生は何と弥生の孫だった。

弥生はボケているのか夫は死んだと答えるばかりだったが、静香は喜八は自分の祖父に違いないと確信し、彼を訪ねる。

だが喜八はそれを否定した。

そんなある日、子供たちはサッカーの試合の帰りに喜八の家に寄ってみると、彼は既に息絶えていた。

葬儀の日、3人の子供たちや市役所の職員、遺産のことばかり気にする甥の勝弘(矢崎滋)らが見守る中、静香に連れられて弥生がやって来る。

じっと棺の中の喜八の顔を見つめていた弥生は、生きている相手に向かうかのように正座して「お帰りなさいませ」とお辞儀した。

数日後、取り壊しを控えた老人の家を訪ねた子供たちは、暗い井戸の底からトンボや蝶、ホタルが次々と飛んでいくのを目撃する。

それはまるでおじいさんが3人に別れの挨拶をしているかのようであった。

 

 

コメント:

 

「セーラー服と機関銃」など多くのヒット作品を世に送り出した相米慎二監督の映画。

真夏の神戸を舞台に、ワンパクざかりの男の子3人と老人との交流を描く感動のドラマ。

震災前の神戸を舞台に、戦争の影を引きずり荒れ果てた一軒家で独りで暮らす老人と、小学生3人組の交流を描いている。

 

 

きっかけは、小学6年生の「僕」(木山)が、6月のある日、山下という太ったクラスメイトが祖母の葬式に出席したという話を聞いてから、「死」について考えるようになるところだ。

すると、眼鏡をかけた友達の河辺<が、近所に1人で住んでいるおじいさんが死ぬのを目撃しようと提案し、3人はおじいさんの生活を見張ることになるのだ。

 

そのおじいさんの葬式で、おじいさんが遺産を弥生さん宛に残していたことが分かる。

やがて季節は過ぎ、「僕」は私立の中学校へ、山下は公立中学校へ、河辺は母親の再婚でチェコに行くことになる。

四つ角で、山下はもう1人でトイレに行けるようになったと言う。

「だってオレたち、あの世に知り合いがいるんだ。それってすごい心強くないか!」

「僕」は頷き、3人は違う道を歩きはじめる。

このエンドが良い。

 

老人を演じる三國連太郎が素晴らしい。

この人の遺作としてぴったりの様な気がする。

見送る方も今は亡き淡島千景である。

だが、本作での三國連太郎は釣りバカ日誌の後半の様にやせ衰えてはいない。

子供たちの兄貴分のような役割を果たしている。

「夏の庭」と言う題名が生きている。

 

 

三國連太郎が演じる喜八老人はなぜ一人暮らしをしていたのか。

実はこの老人は、戦争中に子供を宿した女を殺してしまったのだ。

その贖罪を背負い続けて、ずっと一人暮らしをしてきたのだ。
それが妻と生き別れとなった理由でもあるのだが。

 

老人の妻だった淡島千景が、葬儀の席にやってくる。

そして棺の中の三國連太郎の死に顔を見つめた後、生きている相手に向かうように正座して言う。

「お帰りなさいませ」と。

このあいさつのシーンは泣ける。

さすが大女優の淡島千景の渾身からのこの熱演はすさまじいものがある。

 

この映画は今ならYouTubeで全編視聴可能。

 

この映画は、TSUTAYAでレンタルも購入も可能: