「大阪物語」
1999年3月27日。
ジュリーが田中裕子と夫婦漫才を演じた映画。
釜山国際映画祭招待作品。
1999年キネマ旬報ベストテン第8位、読者選出第7位。
脚本:犬童一心
監督:市川準
キャスト:
- 霜月若菜:池脇千鶴
- トオル:南野公助
- 霜月隆介:沢田研二
- 霜月春美:田中裕子
- 霜月一郎:中野敬祐
- 霜辻千里:宮地あんな
- 重田カナ:ミヤコ蝶々
- 妙子:小林麻子
- 千田:辻中達也
- サチ:北川智子
- 立川:石井達矢
- ジョンジ:川崎択
- むつみ:関口まい
- 片腕の男:松本雄吉
- マジシャン:一陽斎蝶一
- 隣家の夫婦:隼ジュン、町野あかり
- アクセサリー売り:剣太郎セガール
- 警察官:町田康
- 大阪芸人:夢路いとし、喜味こいし、浜村淳、今いくよ・くるよ、中田カウス・ボタン、坂田利夫、原哲男、チャンバラトリオ、大木ひびき、千原兄弟
あらすじ:
中学2年の若菜(池脇千鶴)の両親である春美(田中裕子)と隆介(沢田研二)は、“はる美&りゅう介”という売れない夫婦漫才師である。
ふたりのネタはいつもワンパターンで、若菜と10歳になる弟の一郎は両親の真似をしてはご近所さんを喜ばせている。
そんな一家4人、決して裕福な暮らしではないが幸せな毎日を送っていた。
ところがある日、隆介が妙子(小林麻子)という20歳も年下の女性をはらませてしまった。
これまでも夫の浮気を大目に見てきた春美ではあったが、今回ばかりは堪忍袋の緒が切れた。
漫才師としてのコンビは解消しなかったものの、夫婦としてのコンビを解消する春美。
一方、春美に三行半を突きつけられた隆介は妙子と再婚すると、元の家から4軒先の家で暮らし始めるのだった。
年が明けて、妙子は千里という女の子を生んだ。
そして、春美と隆介は先々のことを考えて“カップル”というスナックをオープンした。
別れた筈なのに、結婚している時より仲の良い両親。
そんなふたりのややこしい関係を理解出来ないながらも、若菜は腹違いの妹の面倒をみたり、家事をよく手伝った。
だがその矢先、再び隆介の浮気の虫が疼きだした。
今度は、マジシャンの助手に手をつけたらしい。
これに呆れた妙子は、千里を置いて家を飛び出してしまう。
仕方なく千里を引き取って面倒を見ることになった若菜一家。
しかし、妙子に捨てられたことが余程ショックだったのか、隆介は酒に溺れるようになり、ある日、消息を絶ってしまった。
夏休みになると、若菜は隆介を探す旅に出た。
そんな中、彼女は登校拒否で学校に顔を出さなくなった同級生のトオル(南野公助)と再会する。
トオルと共に隆介を探して様々な大阪の町や風景を見て回る若菜。
やがて、彼女は人々が語る隆介の意外な一面や自分自身の内面を見つめ直すようになっていく。
しかし、肝心の隆介は一向に見つからなかった。
次第に隆介が大阪を離れてしまったのではないかと考えるようになる若菜。
だが、元夫婦漫才師の大先輩・カナ(ミヤコ蝶々)の「大阪に一度住んだ者は、大阪を離れられない」という言葉に、隆介がまだ大阪にいることを確信。
更に、古い知り合いの元に隆介から暑中見舞いが届いたことを聞いて一安心する。
ところが、そんな若菜とトオルの前に補導員とトオルの喧嘩相手が現れた。
橋で挟み撃ちにあうふたり。
追いつめられたトオルは、若菜に別れを告げると河へ飛び込んだ。
河の流れに逆らって泳いでいくトオルの姿を逞しく思いながら見送る若菜。
そんな彼女に、補導員は隆介が車の事故で入院したと知らせた。
急いで病院に駆けつけた若菜は、そこで久しぶりに家族と顔を合わせるのだった。
隆介が死んだのは、それから一ヶ月後のことだった。
葬式で、春美は夫婦の墓を隣同士に作る計画を若菜に話して聞かせた。
いろんなことがあった中学時代。
もうすぐそれに別れを告げ、若菜は未来へ向けて歩き出そうとしている----。
コメント:
関西の漫才夫婦の物語をジュリーと田中裕子が演じた名作。
スーパースター・ジュリーの沢田研二と実の妻の田中裕子の夫婦漫才シーンが最高に面白い。
ジュリーが京都の人のせいか、大阪的なダメおやじではなく京都的にはんなりしたダメおやじだったのがちょっと残念。
もちろん、田中裕子の演技力と魅力はハンパないが。
この映画がデビュー・主演作となった池脇千鶴。
大女優誕生の予感。
池脇千鶴は薄幸の美少女を演じさせたらピカイチだった。
童顔18歳の池脇が中学生を演じていて全く違和感がない。
大人たちのやるせない世界を受け入れないまでも、望むと望まざるとにかかわらず、知らず知らずのうちに徐々に接近しゆく若菜。
その瞳には薄っすらとした諦念や悔恨とともに、それらをやさしく押し包むおおらかな光が宿っていた。
大阪の下町が発する猥雑なバイタリティーが、市川準のリリカルで繊細な語り口と陰影深く混じり合った秀逸のローカルムービー。
画面からそこはかとなく滲む切なくも穏やかな余情が観る者の胸を衝く、とある少女の瑞々しい成長を描いている。
この映画は、TSUTAYAでレンタルも購入も可能: