「源氏九郎颯爽記 白狐二刀流」
1958年3月11日公開。
源義経の子孫が幕末の世に現れる物語。
原作:柴田錬三郎
監督・脚本:加藤泰
出演者:
中村錦之助 、 河野秋武 、 大川恵子 、 清川荘司 、 柳永二郎 、 八汐路佳子 、 岡譲司 、 上田吉二郎 、 岸井明 、 浜田伸一 |
あらすじ:
兵庫の港町に上陸した九郎は、尊皇攘夷の悪夢に踊る人々、貧乏公郷今出川兼親と許婚の志津子、浪人比嘉忠則に不逞の襲撃を浴びた英人船長の娘マリーと従者ジョンを救った。
そして、それを機に大阪奉行兵庫勤番所与力の富田と同心の幸田らと知己となり、同心長屋にしばしの宿を定めた。
一方兼親らも同じく尊皇攘夷を口にする浪人犬山と相識り、そのかくれ家に伴なわれた。
そこには、かつての海賊、今は大阪奉行をも篭絡する密貿易商播州屋十兵衛とその配下新海たちが義経の遺宝に眼を光らせていた。
兼親はかつて九郎に思慕を抱いていた志津子を彼の許に向け、京都より志津子の兄桜小路忠房を呼び寄せた。
志津子に誘い出された九郎は、犬山らの浪人たちに襲われたが、急を聞いて駈けつけた幸田、富田らに救われた。
だが、更に播州屋の手は九郎の仮住居同心長屋に及び、焼き討ちをかけてきた。
長屋の一同を逃した九郎は、秘剣揚羽蝶の活躍でその場を切り抜けた。
忠房を仲介に播州屋と顔を合せた九郎は、彼の卑劣な眠り薬の奸計に今はこれまでと思われたが、志津子の必死の働きにより脱出に成功した。
やがて、一味から離れた志津子を連れた九郎は源九郎判官義経の真の宝を見せようと無人島へ向かったが、二人の後を兼親と播州屋、新海がそれぞれつけていた。
宝庫の前、播州屋も新海も九郎に倒された。
宝物が無いことに呆然自失する兼親に九郎は、祖先義経が私に遣したのは観音慈悲の心だと言う。
涙する志津子や幸田たちを残し、九郎は再び何処ともなく去って行った。
コメント:
剣豪作家・柴田錬三郎の原作による「源氏九郎颯爽記」の第2弾。
悲劇の名将、源九郎判官義経の末裔・源氏九郎が持つ、義経が遺したという火焔剣・水煙剣の宝刀に秘められた財宝を巡る争奪戦。
神戸の港町、六甲の山を舞台に、尊皇攘夷の美名に踊る不逞浪人、貧乏公卿、海賊上がりの密貿易商、悲恋の美女、情熱の異国娘、貧しいながらも正義の道に生きる青年同心、悪奉行と、善悪、正邪入り乱れる。
その中で、源氏九郎が破邪顕正の秘剣揚羽蝶をかざして颯爽奮斗。
青春多感の人生模様が展開するアクション時代劇。
兵庫の港町に辿り着いた九郎(中村錦之助)は、貧乏公郷の今出川兼親(河野秋武)とその許婚の志津子(大川恵子)、浪人の比嘉忠則(清川荘司)に襲撃を受けたイギリス人船長の娘マリー(ヘレン・ヒギンス)と従者ジョン(ジョニ・ジャック)を救う。
そして、この事件を機に大阪奉行の兵庫勤番所与力の富田(杉狂児)と同心の幸田(里見浩太郎)らと知己を得て、同心長屋に住み始める。
一方、兼親たちは尊皇攘夷の同志である浪人の犬山(上田吉二郎)たちと共に、播州屋十兵衛(柳永二郎)のかくれ家でたむろしていた。
十兵衛は密貿易で富を蓄積しており、大阪奉行には賄賂を贈って、お目こぼしをしてもらっていた。
やがて、十兵衛の許に義経のお宝の一部が持ち込まれたことによって、源氏九郎の存在が知られる。
十兵衛は義経が遺したと噂される莫大な秘宝について並々ならぬ関心があり、九郎からその在処を探ろうとする。
一方、兼親もかつて九郎に思慕を抱いていた志津子を彼の許に差し向け、探りを入れようとする。
九郎は、攘夷派と佐幕派が死の商人から武器を購入することによって、日本が分断される危機感を抱き、富田や幸田に働きかけ、十兵衛の武器密輸と大阪奉行との癒着を幕府に告発しようとする。
そのことを知った伊藤紀伊守(明石潮)は、告発に協力する与力や同心たちを解任し、十兵衛は配下の新海(岡譲司)や浪人たちに同心長屋に焼き討ちをかけさせる。
本作は、源氏九郎颯爽記シリーズの第二作だが、第一作を観ていなくとも、十分楽しめる。
錦之助御大の美男子ぶりが際立ち、映画もそれを前面に押し出している。
源氏九郎は、ニヒルを削ぎ落した眠狂四郎の面持ちだ。
どんな苦境に陥ろうとも、常に冷静沈着な振る舞いを見せる。
主役はもちろん錦之助御大なのだが、物語を動かしているのは、欲に駆られた商人、公家、浪人、商人と癒着する役人、不正を糺そうとする与力や同心、その家族で、様々な人物を巧みに絡めた群像劇になっている。
そもそも九郎は、彼らと関わることはなかったのに、外国人を助けたことをきっかけに、一連の騒動に巻き込まれていく。
奉行所は外国人が襲撃されたことを調べるために、九郎はしばらく兵庫の港町に引き留められる。
彼は同心の幸田の長屋に落ち着くが、図らずも幸田と恋仲のお鈴(丘さとみ)が身売りされる話を聞いてしまう。
九郎は義侠心に駆られ、義経の財宝の一部を売ったことから、十兵衛に目をつけられる。
九郎にしてみれば、とんだとばっちりだ。
また、外国人を襲った公家や浪人どもは、十兵衛の隠れ家をねぐらにしており、彼らが襲った相手が十兵衛と取引があることを知らなかったのも、間抜けと言えば間抜け。
本作は、こうしたちょっとした運命のいたずらが、物語を面白くしている。
中村錦之助演じる九郎は、全身白装束で固めたイケメン侍。
着物はもちろん、刀の鞘も柄も白で統一、顔もくっきり白塗り。
必殺技は、大刀二本を両手に持ち、羽根を広げた蝶のようなポーズから繰り出す秘剣・揚羽蝶。
御禁制の短銃にも恐れず立ち向かい、人々の危機とあらば突然、長屋の屋根から飛び降りてくる。
この漫画的なヒーローを、至極真面目に錦之介が演じているところが面白い。
よくある定番のチャンバラにはおさまらない少しのズレがあって、奇怪な印象を残す作品になっている。
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