今井正監督の映画 「真昼の暗黒」 実際の冤罪事件を映画化した今井正の代表作! 各賞総なめの名作! | 人生・嵐も晴れもあり!

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「真昼の暗黒」

 

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「真昼の暗黒」 全編

 

1956年3月27日公開。

各賞総なめの大ヒット作。

 

受賞歴および順位:

キネマ旬報ベストテン第1位、監督賞。

毎日映画コンクール日本映画大賞・監督賞・脚本賞・音楽賞。

ブルーリボン賞作品賞・脚本賞・脚本賞・音楽賞。

チェコスロバキアでのカルロヴィ・ヴァリ国際映画祭「世界の進歩に最も貢献した映画賞」。

 

原作:正木ひろし「裁判官・人の命は権力で奪えるものか」

脚本:橋本忍

監督:今井正

 

キャスト:

 

植村清治
演 - 草薙幸二郎
小島の友人。小島の証言によって殺人事件の首謀者に仕立て上げられる。
小島武志
演 - 松山照夫
殺人事件の犯人。複数犯を疑う刑事から問い詰められ、仲間の4人を共犯に仕立てる証言をする。
青木昌一
演 - 矢野宣
小島の友人。小島の証言によって殺人事件の共犯に仕立て上げられる。
宮崎光男
演 - 牧田正嗣
小島の友人。小島の証言によって殺人事件の共犯に仕立て上げられる。
清水守
演 - 小林寛
小島の友人。小島の証言によって殺人事件の共犯に仕立て上げられる。
近藤弁護士
演 - 内藤武敏
冤罪事件で有名な弁護士。
永井カネ子
演 - 左幸子
植村の内縁の妻。
雄二
演 - 山村聡
清水保子の兄。
山本弁護士
演 - 菅井一郎
清水保子
演 - 夏川静江
清水守の母。
植村つな
演 - 飯田蝶子
植村清治の母。
宮崎里江
演 - 北林谷栄
宮崎光男の母。
松村宇平
演 - 殿山泰司
白木検事
演 - 山茶花究
西垣幸治巡査
演 - 下元勉
大島司法主任
演 - 加藤嘉
及川裁判長
演 - 中村栄二

 

あらすじ:

瀬戸内海に近い三原村で小金を貯めこんでいるという噂のある仁科老夫婦が惨殺され、その翌朝、皆川、矢口両刑事は笠岡市の遊廓から小島武志を検挙した。

ジャンパーの血痕、指先の血糊--動かぬ証拠をつきつけられた小島は流石に色を失っていた。

だが捜査本部では単独犯では片づけられない種々の事情から判断して、小島の口から共犯の事実を吐かせようと躍起になった。

そして小島と同じ土工仲間の植村、青木、宮崎、清水の四人が浮び上った。

連日の厳しい訊問に心身共に疲れ果てた小島は、夢遊病者のように四人も共犯だと自白させられた。

緊急手配によって四人は次々に挙げられ、植村の内妻カネ子も取調べを受けた。

一年後の秋、食堂の給仕女として働くカネ子は、そこではからずもこの事件を担当する近藤、山本両弁護士に逢い、植村の証しを立ててくれるようにと懇願し、差入れのために乏しい給料の中から数枚の紙幣を渡すのだった。

結審の日、多数犯を強調する鋭い検事の最終弁論を、訥々と反発する近藤弁護人の額には、脂汗が滲んでいた。

彼は小島の遊興費欲しさの単独犯だと主張するのである。

その主張は理路整然とし、今や小島の単独犯は動かすことのできない事実であるかに思われた。

しかし、判決の日、小島のでたらめな陳述と西垣巡査の保身の証言のため、弁護人の努力、家族たちの嘆きをよそに、植村は死刑、小島は無期、青木は十五年、清水と宮崎は十二年の懲役が宣告された。

複雑な気持で食事に出かける近藤弁護士は、最高裁判で闘う決意を固めていた。

拘置所の面会室では、植村と母が顔を見合わせていた。

黙って走り去る母の背後に絶叫した。

「お母さん、まだ最高裁判があるんだ」と。

 

真昼の暗黒:今井正

 

コメント:

 

1951年に山口県熊毛郡八海村で実際に起きた老夫婦惨殺事件「八海事件」の弁護をした正木ひろしの「裁判官・人の命は権力で奪えるものか」を原作として、社会派の巨匠・今井正が映画化した作品。

 

3.真昼の暗黒 | グリムニュース

 

 

現実に公判中の実話で、罪状が確定しない段階での、思い切った冤罪の告発という映画である。
八海事件の裁判は、この後も最高裁と高裁の間を2往復し、結審したのはこの映画の11年後になった。

そういう事情から、いろいろと圧力がかかり物議もかもした問題作。

映画では、完全に冤罪という結論に振り切れており、警察の違法捜査の場面をこれでもかと流し続け、権力の横暴を訴え続ける形になっている。

この映画の果たした役割も一定のものがあったのだ。

決意と気合の入っている映画だけに、凄まじい迫力を感じる。

前半は、拷問の場面や警察の捜査の人権を無視した違法性が次々と描かれ、後半は冤罪を受けた家族の苦しみや、それでも警察組織の為に偽証をする巡査の葛藤など、心情に迫って来るエピソードで固められていく。

クライマックスは、近藤弁護士の最終弁論。雰囲気が変わって弁舌さわやか、被告たちからも笑いが出てくるといった雰囲気。

その流れで無罪を確信する母親たち。

そしてラストの飯田蝶子の力強い場面は、プロレタリア映画のような、心情に突き刺さる迫力だ。

被告5人を演じているのは、劇団からの新人俳優であった。

草薙幸二郎が主人公だが、松山照夫も面白い演技をしている。

ベテラン俳優陣は、女優陣では飯田蝶子と北林谷栄が凄い。

若手では何と言っても左幸子。

近藤弁護士を演じる内藤武敏の熱のこもった姿が素晴らしい。

 

ヒツジの映画鑑賞「真昼の暗黒」(1956年) | ひつぞうとおサル妻の山旅日記

 

植村のお母さん(飯田蝶子)は、冤罪事件に強い近藤弁護士(内藤武敏)に弁護を依頼する。

冤罪を確信した近藤は、次々と証拠を並べて、でっちあげを論破して行く。
誰が聞いても、小島が単独犯だとわかる内容で、無罪判決が下ると思わせる展開に。

 

しかし、判決の日、小島のでたらめな陳述と巡査の保身の証言が採用され、植村は死刑、小島は無期、青木は十五年、清水と宮崎は十二年の懲役が宣告される。

死刑判決が下りてしまった植村の顔を見て耐えられなくなり、その場を去ってしまう母親(飯田蝶子)の悲しげな眼が忘れられない。

植村は「おっかさん、まだ最高裁がある!」と叫ぶ。

 

この事件については、本作公開後の1957年10月に、最高裁は事実誤認として広島高等裁判所に差し戻し、広島高裁は1959年9月に弁護側の主張を認め、阿藤ら4人を無罪とした。

しかし検察側が上告、最高裁は原審を破棄差し戻して1965年の広島高裁は再び阿藤に死刑判決を下し、最終的に真犯人(すでに無期懲役が確定)の出した上申書が決めとなって1968年10月に最高裁が阿藤ら4人を無罪としてようやく確定した。

 

日本国憲法下の刑事裁判において、二審で死刑判決を受けて最高裁に上告された数は多いが、最高裁が二審の死刑判決を破棄・差し戻した例は12例(11件・16人)と少ないという。

本作は、実際に審議中の事件を扱い、その後の判決にも影響を与えたという点で、今井正の作品の中でも傑出したものであるといえよう。

 

主犯とされた植村清治の母を演じる飯田蝶子の熱演が光る。

飯田蝶子といえば、加山雄三主演の『若大将シリーズ』での、元気でいつも笑みを絶やさない若大将のおばあちゃん役を思い出すが、このシリアスな物語における彼女の涙溢れる姿は、この映画における最大のクライマックスだ。 

実は飯田蝶子という女優も凄い演技力の持ち主だったのである。

 

ヒツジの映画鑑賞「真昼の暗黒」(1956年) | ひつぞうとおサル妻の山旅日記

 

共犯とされる宮崎光男の母を演じる北林谷栄。

この女優は、『大誘拐』での誘拐される大金持ちの老婆を演じたことで知られている。

だが、この映画においては、自分の息子が殺人事件の共犯者にでっちあげられてしまう母親を演じている。

親しくしていた巡査に対する証言撤回を求めて、必死に食い下がる場面では、息子の無罪を願う母をしっかり演じ切っている。

 

 

 

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