「BROTHER」
2001年1月27日公開。
ロスへ渡った日本の極道が、マフィア相手にのし上がっていく姿を描いたカルチャーギャップ・バイオレンス。
監督・脚本:北野武
音楽:久石譲
出演者:
ビートたけし、オマー・エップス、真木蔵人、寺島進、大杉漣、加藤雅也、石橋凌、ジェームズ繁田、渡哲也
あらすじ:
抗争の果てに日本での居場所をなくしたヤクザ・山本(ビートたけし)は、留学したまま消息が絶えてしまった弟・ケン(真木蔵人)のいるロスへ向かった。
ところが、やっと捜し当てた弟は、仲間のデニー(オマー・エップス)らとジャンキー相手のドラッグ売人に成り下がっており、しかもドラッグ・トレードのトラブルに巻き込まれていた。
そんな彼らを持ち前の度胸と無謀さで救う山本。
そしてそれを機に、彼は自分の組を組織し、マフィア相手に実力でのし上がっていくのだった。
やがて、日本から山本の腹心・加藤(寺島進)も駆けつけ、組織は拡大、絆を深めていく。
デニーも、そんな山本たちの日本流のやり方が理解出来ないなりにも、彼のカリスマ的魅力に惹かれていった。
だが、そんな日々も長くは続かなかった。
やがて巨大なイタリアンマフィアとの抗争の末、壊滅に追い込まれてしまう。
そして、たったひとり生き残ったデニーは、愛すべき山本のことを思いながら、ひとりメキシコへ向けて車を走らせるのだった。
コメント:
ある男の暴力と死への疾走。
以前「銃を使う人間は不幸になる」との考えを北野武が話していたが、本作もそれで間違いなく傑作といえる。
タイトルの「BROTHER」。
意味はもちろん、兄弟だが、誰と誰のことだろう。
たけしが扮する主人公・山本と、彼の実の弟(真木蔵人)、義兄弟の加藤(寺島進)、そして黒人のデニーのことだ。
日本人同士の兄弟仁義とは異なる、この男たちの物語を描いているのだ。
山本とケンのグループはほとんど全員が死んでしまう。
ということは主要な登場人物がほぼ全滅ということだ。
この映画には北野監督の死生観のようなものが漂っていて、暴力の中に無常を感じさせる。
これまでの北野作品の中には登場人物が無邪気に遊ぶシーンが出てくる。
この映画でも、山本の弟分・加藤がバスケットで皆からおちょくられるシーンとか、山本がデニーといかさまのサイコロ勝負をするシーンとか、子どものおふざけのような、一瞬の安らぎがある。
この緩急が映画全体をびしっと締めたものにしている。
山本とデニーの関係に、たけし監督独特の人との距離感を感じる。
気に入った信頼できる相手には最後まで信じて尽くすのだ。
それがエンドでデニーの流す涙に現れている。
人が生き、働き、遊び、死んでいく、ヴァイオレンスの形を借りて、男の人生を見せてくれた映画である。
オープニングと、中盤で白いリムジンの斜めショットは斬新である。
また、屋上から投げた紙ひこうきを追いかけるカメラが素晴らしい。
アメリカでのマフィアとの闘いでのドンパチシーンをフラッシュの光で表現する映像センスが素晴らしい。
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