「姐御」
1988年11月9日公開。
元宝塚女優・黒木瞳の極妻作品。
本作は、極道社会の中で、ギリギリの哀しみを引き受けた女を描いた異色作だ。
監督・鷹森立一、脚本・中島貞夫、撮影・木村大作といったベテランスタッフと、黒木瞳をはじめとする豪華キャストが結集した、愛と情念の極道映画。
『極道の妻たち』シリーズのような単純な娯楽映画ではない。
舞台は大阪。
古溝組の若頭・紺野淳一が、敵対する田ノ浦組の客分・杉本昇治に襲撃された。
その時、昇治の白刃を素手で遮る女がいた。
淳一の妻・愛は、不幸を承知で極道の妻となり、彼を愛するあまり、自分の白い背中に、夫と同じ鯉の入れ墨を入れるほどの女。
彼女の真っ直ぐな愛に守られた淳一だったが、再び田ノ浦組のだまし討ちにあい、凄絶な死を遂げる。
しかも、彼女の目の前で…!
その瞬間から、愛の復讐が始まった。
夫の無念を胸に秘め、女だてらに、たった一人で復讐を誓い、幾度の失敗にも諦めることなく本望を遂げようとする凄烈さ。
一途な想いが、鮮血に満ちた衝撃ドラマを紡ぎ出していく。
ヒロイン・愛に黒木瞳、夫・淳一に松方弘樹。
敵対する組の客分でありながら、愛に惚れぬき愛の復讐に手を貸す極道・昇治にビートたけしが扮する。
原作:藤田五郎「女侠客」
脚本:中島貞夫
監督:鷹森立一
出演者:
黒木瞳 、 香山美子 、 白都真理 、 高部知子 、 寺田農 、 石橋蓮司 、 綿引勝彦 、 ビートたけし 、 荒井注 、 志賀勝、名高達郎、松方弘樹
あらすじ: 大阪・道頓堀で古溝組の若頭・紺野淳一(松方弘樹)は田ノ浦組の客分・杉本(ビートたけし)に襲われ重傷を負った。 淳一の妻・愛(黒木瞳)は死にものぐるいで杉本の白刃に飛びつくのだった。
数日後、田ノ浦組から手打ちの申し入れがあったが、それは罠で、淳一は殺されてしまう。
愛はかつて極道の妻だった澄江(香山美子)の店を手伝いながら田ノ浦(石橋蓮司)への復讐を狙っていた。
そして彼が愛人の亜矢子(白都真理)といるところを襲うが、失敗して刑務所に入れられてしまう。
愛は獄中で女児を出産。
幸子と名付けて澄江に預けた。
四年後に愛は出所し、古溝組三代目・弘(名高達郎)に迎えられた。
しかし、澄江の店も田ノ浦によって地上げされようとしていた。
田ノ浦は悪どいやり口で弘まで殺し、幸子を誘拐する。
澄江は幸子と引き替えに店を立ち退くのだった。
愛はついに田ノ浦を殺す決心をし、杉本を味方につけ、田ノ浦のマンションの合い鍵を手にした。
そして、田ノ浦と亜矢子を待ちぶせ、淳一の仇をとるのだった。
コメント:
1988年のバブル時の東映やくざ作品。 本作は、バリバリの任侠路線の現代版だ。
キャストの松方弘樹とビートたけしと言えば、この時代だとやはり「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」。
この縁によるキャスティングなのだろう。 たけしは、まだ演技はつたないながらも独特の存在感がある。 この翌年には「その男、凶暴につき」を監督して、絶賛されるようになる。
だが、この作品ではこの二人は主役ではない。
主役となるのは、黒木瞳。
この黒木を支えるように、また見守るように、抑えた演技を松方もたけしもしているのが印象的だ。
この「姐御」という映画は、原作が藤田五郎の「女侠客」で、以前も映画化されている。
こちらは日活で1969年に公開された扇ひろ子主演作。
さらに本作後、2003年にも高島礼子主演でリメイクされている。
本作では、時代柄バブルの臭いがプンプン漂われており、景気よく、ベンツに大穴を開け、キャデラックは炎に包まれる。
これは、松方さんの見せ場のシーン。 「俺たちに明日はない」のオマージュかも。
彼の復讐に黒木さんが静かに燃える女を演じています。
そして、彼女を支える男に我らがたけしが扮している。
その他には、敵役に白都真理に石橋蓮司。
東映の「極道の妻たち」シリーズの2作目が公開された後の作品だが、この映画は趣が異なる。 黒木瞳の健気で凛とした「姐御」は美しい。
理にかなっているかは別として、さすがは「宝塚出身」だ。
魅せる「殺陣」は、バッチリきまっている。 『極妻』シリーズのような強い女性が威勢のいい啖呵をきってスカッとするタイプの作品ではないが、我が強そうなイメージの強い女優が家族愛を糧に意志を貫くという作品もありなのかも。
ビートたけしが、最初と最後で重要な役を演じており、ちょっとしたスパイスになっている。 やはり、たけしの存在感はハンパない。 この映画は、TSUTAYAでレンタルも購入も動画配信も可能:
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