「武士道残酷物語」
1963年4月28日公開。
武士の世界での残酷極まりない掟やしがらみを江戸時代に遡って中村錦之助が演じ切る異色作。
配給収入:2億7500万円。 |
原作:南條範夫『被虐の系譜』
脚本:鈴木尚之、依田義賢
監督:今井正
キャスト:
- 第一話(慶長15年-寛永)
- 飯倉次郎左衛門:中村錦之助 (萬屋錦之介)
- 堀式部少輔:東野英治郎
- 松平信綱:那須伸太朗
- 浅井嘉兵衛:徳大寺伸
- 家老:明石潮
- 家臣:青木義朗、中村錦司、長島隆一、和崎俊也
- 第二話(寛永15年)
- 飯倉佐治右衛門:中村錦之助 (萬屋錦之介)
- 佐治衛門の妻・やす:渡辺美佐子
- 下僕・吾平:織田政雄
- 下僕・六助:波多野博
- 堀式部少輔:東野英治郎
- 寺田武之進:片岡栄二郎
- 北沢弥左衛門(側用人):北竜二
- 第三話(元禄年間)
- 飯倉久太郎:中村錦之助 (萬屋錦之介)
- 久太郎の母・しげの:荒木道子
- 堀丹波守宗昌:森雅之
- 堀丹波守の妻:東恵美子
- 萩の方:岸田今日子
- 上月源左:香川良介
- 七三郎:沢村精四郎
- 家臣:鈴木金哉
- 第四話(天明3年)
- 飯倉修蔵:中村錦之助 (萬屋錦之介)
- 修蔵の妻・まき:有馬稲子
- 修蔵の娘・さと:松岡紀公子
- 修蔵の嫡子・十次郎:島村徹
- 野田数馬:山本圭
- 堀式部少輔安高:江原真二郎
- 静田権之進:柳永二郎
- 近藤三郎兵衛:佐藤慶
- 江戸家老:水野浩
- 田沼意知:成瀬昌彦
- 佐野政言:国一太郎
- 田沼の側用人:有馬宏治
- 村の若者:河原崎長一郎
- 老女:松浦築枝
- 第五話(明治4年)
- 飯倉進吾:中村錦之助 (萬屋錦之介)
- 堀高啓:加藤嘉
- 井口広太郎:木村功
- ふじ:丘さとみ
- 下田:川合伸旺
- 巡査:小田部通麿
- 第六話(昭和20年)
- 飯倉修:中村錦之助 (萬屋錦之介)
- 特攻隊指揮官:原田甲子郎
- 特攻隊員:蜷川幸男、花上晃、牧口徹
- 第七話(昭和38年)
- 飯倉進:中村錦之助 (萬屋錦之介)
- 人見杏子:三田佳子
- 山岡部長(進の上司):西村晃
- 木原重役(杏子の上司):小川虎之助
- アパート管理人・初子:山本緑
- 救急病院の医師:杉義一
あらすじ:
日東建設の営業部員、飯倉進は婚約者の人見杏子が自殺を計ったとの知らせに、眠っていたある記憶を呼びおこした。故郷信州の菩提寺で発見した先祖の日誌に記された、世にも残酷な話のことである。
第1話:
【飯倉次郎左衛門の章】
関ヶ原合戦後、浪々の身であった飯倉次郎左衛門は信州矢崎の小大名堀式部少輔に拾われた。
寛永十五年主君と共に島原の役に服した次郎左衛門は、一揆勢に黒田屋敷を焼かれた科で幕僚から叱責を受けた式部少輔の罪を被り、本陣門前で割腹して果てた。
第2話:
【飯倉佐治衛門の章】乱後三年、近習に取立てられた伜佐治衛門は衷心をもって病床の式部少輔に仕えたが、勘気にふれて閉門を命ぜられ加増分を召上げられた。
しかし、佐治衛門の忠心は変わらず、ほどなく死亡した式部少輔の後を追って切腹した。
第3話:
【飯倉久太郎の章】
時代は元禄、江戸遊学中の佐治衛門の孫久太郎は時の藩主丹波守宗昌の眼にとまりお手付小姓となった。
だが側室萩の方との仲を疑われ、男色に狂う宗昌の命で羅切りの酷刑にかかり、果てには萩の方を妻にもらいうけ信州に帰った。
第4話:
【飯倉修蔵の章】
天明期に移り、全国各地天災地変がおこり農民達は苛斂誅求に苦しんでいた。
時の飯倉家当主修蔵(中村錦之助)は奉納試合で秘剣“闇の太刀”を披露し、藩主・安高(江原真二郎)に褒美を貰い、娘さとと野田数馬(山本圭)の祝言も決まるなど幸福の絶頂にあった。
同じ頃、藩を脱け出した農民五名が江戸の老中・田沼意知に直訴した。
安高は国家老の勧めに従い美貌のさとを賄賂として献上、五人の農夫を鋸引きの刑に処し、その上、修蔵の妻・まき(有馬稲子)を慰みものにしようとしたため、まきは自害した。
閉門蟹居中の修蔵のもとに意知の死でさとが下って来たが、数馬との邂逅が安高の目にふれ二人は不義密通の科で捕えられた。
耐えかねた修蔵は諌言を決意して陣屋に赴くが、安高は修蔵が得意の“闇の太刀”で罪人を斬れば許してやると目隠しをし、剣を握らせた。一瞬、見事打ち落した首はさとと数馬だった。
修蔵は太刀を腹に突き刺すとその場に伏した。
第5話:
【飯倉進吾の章】
時代は明治と変り、時の飯倉当主進吾は青雲の志を抱いて上京。
気が狂った最後の藩主高啓の面倒を見て車曳をしながら勉学に励んでいたが、将来を誓いあったふじの体を高啓に奪われてしまった。
進吾は悩んだ揚句病床の高啓の元へふじを通わせる決意をするが、その時、高啓は階段からころげ落ちた。
その後、進吾はふじと所帯を持つが、身重の妻を残して日清戦争で戦死した。
第6話:
【飯倉修の章】
その子、つまり進の父に当る多津夫は満州事変で戦死。
進の兄修も第二次大戦に特攻隊員として戦死した。
第7話:
【飯倉進の章】
そして現代。
進は上司山岡営業部長に杏子との仲人を頼んだところ、信州ダムの入札に関する競争会社飛鳥建設の情報を盗むよう言われた。
飛鳥建設のタイピストを勤める杏子はしぶしぶ承知した。
程なく入札は進の日東建設の勝利に終わった。
乾杯の席上で進は山岡に結婚を延期するように勧められた。
理由は式場に飛鳥建設の木原重役が出席するというだけのことだ。
杏子の悲しみと怒りは睡眠薬服用というかたちで進を責めた。
あの残酷な歴史、かくは生きまいと誓った進がそれをくり返していたのだ。
進は意識を取り戻した杏子と二人だけで結婚する決心をした。
コメント:
武士道とはかくも残酷なものか。
繰り返し、繰り返し、飯倉家の代々の先祖たちが、関ヶ原合戦後より現代に至るまで味わってきた涙の歴史を描いている。
その七代にわたる飯倉家の男たちを全て中村錦之助一人が演じ切っている異色作。
有馬稲子は、第4話で、江戸時代の天明の時代に生きた飯倉家当主・修蔵の妻であるまきを演じている。
殿様のご機嫌取りにのため、当主・修蔵の命により、慰みものにされることになったが、それを不服として自害する。
こんなことが江戸時代には本当になされたのだろうか。
信じられない。
まきの娘・さとも、殿様にその美貌を注目されて、すでに賄賂として老中に献上されてしまっていた。
その後、老中が亡くなり、閉門蟹居中の修蔵のもとに彼女が戻ってきた。
だが、元の夫・数馬に再会したことが露見し、不義密通の科で捕えられる。
耐えかねた修蔵は、諌言を決意して陣屋に赴く。
すると殿様は、修蔵が得意の“闇の太刀”で罪人を斬れば許してやると目隠しをし、剣を握らせる。
一瞬、見事打ち落した首は、娘のさとと、その夫・数馬だった。
修蔵は太刀を腹に突き刺し、同時に自害して果てたのであった。
これぞ武士道残酷物語の極みだ。
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