「拳銃王」
(原題:The Gunfighter)
1951年11月13日日本公開。
リンゴ・キッドをモデルにしたアウトローを演じた名作。
脚本:ウィリアム・ボワーズ、ウィリアム・セラーズ
監督:ヘンリー・キング
出演者:
グレゴリー・ペック、ミラード・ミッチェル、ヘレン・ウェスコット、スキップ・ホメイヤー、ジーン・パアカア
あらすじ:
西部きっての速射の名人とうたわれ、悪名一世に轟き渡っていたジミイ・リンゴ(グレゴリー・ペック)は、やくざから足をあらい、別れた妻と再縁して平和な生活に戻ろうと、彼女の元へ急いでいた。
途中、彼に喧嘩を売って名を揚げようとしたチンピラを正当防衛で射倒した彼は、被害者の3人の兄たちからつけ狙われつつ、妻の住むカイアンの町へ辿り着いた。
リンゴ来るの報に町は大騒ぎになったが、昔彼の仲間であった保安官のマーク(ミラード・ミッチェル)は、妻との話がつき次第、直ちに町を立退くよう、彼に忠告した。
しかし妻のペギイ(ヘレン・ウェスコット)はマークに向かって、夫とは会いたくないとつっぱねる。
一方酒場で事の成行きを案じているリンゴの所へは、やくざのハント(スキップ・ホメイヤー)が喧嘩を売りに押しかけて来た。
マークから妻の意中を聞いたリンゴはおとなしく町を去ろうとした。
だが、偶然旧い女友達の唄手モリイ(ジーン・パアカア)が彼をみつけ、妻をもう1度口説くことを約したので、彼も追手が迫るまで待つことになった。
保安官は気負い立つハントを町から去らせ、そしてやっとリンゴは駆けつけた妻と息子に会うことが出来、1年後の再会を約した。
その時3人の追手は酒場の外へ迫り、保安官がそれを発見して、出発しようとしたリンゴは間一髪で難を免れたが、瞬間、物陰からのハントの1弾が彼を倒した。
リンゴは、自分を射った青年に、死ぬまでやくざの苦しみをなめるがいいと叫びつつ、息を引き取った。
リンゴの葬式の日、町からは新しいやくざの英雄ハントが旅立っていく。
コメント:
グレゴリー・ペックが演じたジミイ・リンゴのモデルとなっているリンゴ・キッドは実在の人物らしい。
1939年公開の『駅馬車』でジョン・ウェインが演じた。
ワイアット・アープを東の横綱とすると西の横綱はリンゴ・キッドか。
当時から西部切っての有名人となっていたという。
映画ではジミー・リンゴという名前になり、アウトローの世界から足を洗い、かつての恋人ペギーと二人の間に出来た息子の住む町カイエンに向っているという設定だ。
すでにアウトローの世界には未練がないのだが、彼の早撃ちに勝って、名を上げたいという野心を秘めた若きガンマンにつきまとわれる。
とある酒場で、そんな若者を正当防衛で撃ち殺す。
リンゴは左利きで右腰のホルダーから銃を抜く。
不利なはずだが、彼の早撃ちにかなうものはいない。
しかし撃たれて死んだ男には、荒くれの兄が3人いるという。
カイエンの町には旧友のマークがいた。
彼は悪事からは足を洗い、保安官になっている。
彼としては、リンゴにはペギーに会ったら、すぐに去ってもらいたかった。
リンゴを狙う無鉄砲な輩が多いことを知っていたからだ。
台風の目に、有象無象のワルが集まってくる構図。
スリルとサスペンスが高まる。
まずは向かいのホテルからライフルで狙う夫婦者、末弟を殺されたゴロツキ三兄弟、早撃ちの若い天才を気取るハント、等々、リンゴの命はいくつあっても足りない。
非業の死が史実であるので、ハッピーエンドにする訳にはいかない。
若いハントに早撃ちの称号を贈ったのは、皮肉か。
ハントは次世代の命知らずのガンマンに追われる人生を送るだろう。
西部の非情を伝えるラストシーンとなった。
本作は、リンゴ・キッドという超有名な西部劇の主人公を知っていないと面白くない。
拳銃の使い手なのにほとんど銃を抜かない。
そして、最後にハントという若者にやられて、息を引き取ってしまうからだ。
グレゴリー・ペックという俳優の普段のキャラクターとは相当異なるガンマンの役どころだ。
あの『ローマの休日』のヘプバーンの相手役とは、全く違うのだ。
しかし、やはりハリウッドのトップスターであるペックは、こんなヤクザな西部劇の世界でもそのカッコいい姿を見せてくれる。
妻と息子に会えて、町を去ろうとしていたリンゴが、若者に射殺されてしまう。
そして、彼の葬儀が盛大に行われようとしているところに、妻が息子と共に駆けつけて、葬儀に加わる。
このラストが何とも悲しい。
西部劇におけるガンマンというヤクザの最期の虚しさが溢れている。
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