「ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌」
2008年7月12日公開。
「ゲゲゲの鬼太郎」の実写版映画第2作。
緒形拳の遺作となった映画。
興行収入:14.5億円。
原作:水木しげる
脚本:沢村光彦
監督:本木克英
キャスト:
- 鬼太郎:ウエンツ瑛士
- 比良本楓:北乃きい
- 猫娘:田中麗奈
- ねずみ男:大泉洋
- 砂かけ婆:室井滋
- 子なき爺:間寛平
- 目玉おやじ:田の中勇(声の出演)
- 一反木綿:柳沢慎吾(声の出演)
- ぬり壁:伊集院光(声の出演)
- 文車妖妃:中川翔子(友情出演)
- 濡れ女(なみ):寺島しのぶ
- 海人:萩原聖人
- 濡れ女の子供:友安一翔
- 閻魔大王:津嘉山正種(声の出演)
- 井戸仙人:笹野高史
- つるべ火:軽部真一
- 竹切り狸の夫婦:ブラザートム、星野亜希
- 琵琶牧々:河本準一(次長課長)
- 赤子鬼太郎:秦来陽
- 三つ木霊:(長女・ハルカ)向井地美音(現AKB48)、(次女・ヒビキ)佐々木麻緒、(末っ子・ワタル)荒木博斗
- 雨の中の女性:稲葉さゆり
- 枕返し:中野美奈子
- 友子:岡本玲
- エリ:夏生さち
- マーチングバンド部の部長:山下結穂
- 漁師:田村泰二郎、有福正志、小豆畑雅一
- 長老:梅津栄
- さとり:上地雄輔
- 夜叉:ソ・ジソブ
- 鬼道衆頭目:京極夏彦
- 蛇骨婆:佐野史郎
- ぬらりひょん:緒形拳
あらすじ:
子高生の楓(北乃きい)は、妖怪・濡れ女(寺島しのぶ)によって手にウロコができる呪いをかけられた。
このままでは、全身にウロコができて死に至ってしまう。
そんな相談を受けた鬼太郎(ウエンツ瑛士)たちは、その呪いを封印するためには、古の楽器を集めて“護人囃子の儀”を行わなければならないと知る。
早速、猫娘(田中麗奈)やねずみ男(大泉洋)、砂かけ婆(室井滋)と子なき爺(間寛平)らで楽器を探す鬼太郎だが、その過程で千年前の濡れ女の悲劇を聞かされる。
人間の海人(萩原聖人)に恋をした濡れ女は、人間となって夫婦関係に結ばれた。
しかし、彼女が妖怪であると知った村人たちは、“鬼道衆”として二人の仲を引き裂き、濡れ女を封印したのだった。
そして、楓は“鬼道衆”の末裔であり、それゆえに封印を解かれた濡れ女から呪われたのであった。
自身の家系の行為を知った楓は、激しいショックを受ける。
さらに、人間でも妖怪族でもない“幽霊族”である鬼太郎も先祖は同じように、人間から滅ぼされたという事実をぬらりひょん(緒形拳)から聞かされる。
彼もまた衝撃を受けるが、それでも楓をはじめとする人間たちを妖怪の魔手から守りたいと考えた。
異国の妖怪である夜叉(ソ・ジソプ)から攻撃を受け、猫娘も倒れた。
鬼太郎チームは絶体絶命のピンチに、楓は自分を犠牲にして、ぬらりひょんの怨念ゾーンへと旅立つ。
そこで濡れ女と対面した楓は、人間のことも信じて欲しいと伝える。
鬼太郎の配慮で、甦った海人(萩原聖人)と再会を果たした濡れ女は、彼の真実の愛情をようやく知った。
人間の怨念から生まれた妖怪ガシャドクロは倒れ、楓も現世へと戻ることができた。
そして、鬼太郎への恋心も隠せない楓だが、二人の間にある壁も思い知る彼女は、後ろ髪をひかれる想いで別れを告げるのだった。
コメント:
テーマは人間と妖怪の共生。
ここは人間と自然、又は日本人と異人種と置き換えても成立するだろう。
元々の争いの原因というのが、自分達とは違う存在への無知、無理解から始まる。
魚が捕れなくなった原因が分からないので、それをよそ者のせいにして憂さを晴らす。
それでことの決着を付ける。
もし、それでも解決しない場合は、また他の理由を探し出すのだろう。
そしてそれが、たまたまヒットしてしまった場合、延々とその愚かな行為が繰り返されてしまう。
この作品では、人間・海人と結婚してしまった妖怪・濡れ女に、白羽の矢が突き刺さる。
濡れ女の呪いが、陰の悪しき妖怪の口車に乗せられて現代社会に甦る。
人間が妖怪を恨み残酷な仕打ちをし、その仕返しに妖怪が人間を恨み呪いをかける。
このままではこのような恨みの連鎖が、未来永劫続けられる。
どこかで断ち切らなければならない。
楓は自分に呪いがかけられたことを知り、当初は鬼太郎たちのことも疑っていた。
しかし、過去の濡れ女の真実を知り、彼女を何とか助けたいと行動を起こす。
鬼太郎もまた、過去での人間の仕打ちを知り苦悩する。
二人がそれらの苦悩を乗り越えた時、新たな道が開けた。
「助けるのに、理由はいらない」。
そして海人の真実の気持ちに触れた時、禍の連鎖に終止符を打つことができるのだ。
お馴染みの妖怪たちの活躍も楽しい。
子なき爺、砂かけ婆、ぬりかべ、一反木綿、猫娘。
各々の持ち場で懸命に闘う姿は、おかしみもあり頼もしくもある。
ねずみ男を演じる、大泉洋がもらす一言が、いちいち笑わせてくれる。
敵方のぬらりひょんの緒方拳が、やけに活き活きとしていた。
その他、蛇骨婆(佐野史郎)、夜叉もキャラが立っている。
みんな楽しそうに演じていた。
緒形拳が演じるぬらりひょんという妖怪が、ゲゲゲの鬼太郎の出自を本人に向かって初めて明かすシーンが印象的だ。
これが本作における本当の意味でのクライマックスなのかもしれない。
鬼太郎は、人間でも妖怪族でもない“幽霊族”とされているが、実は彼の先祖もまた、人間から滅ぼされたのだという。
本作が緒形拳にとって遺作映画となってしまった。
妖怪としての役柄が最後というのは、緒形拳らしくて良いのかも知れない。
警察官、女衒、浪人、悪代官、詐欺師、殺人犯、脱獄囚、ドラキュラなど、ありとあらゆるキャラクターを演じ切った俳優であった。
これだけの幅広い演技力を持っている俳優は、今後もう出てこないのではないか。
緒形拳よ、永遠なれ!
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