「影狩り」
1972年6月10日公開。
さいとう・たかをの原作を映画化した忍者映画。
原作:さいとう・たかを「影狩り」
脚本:池上金男
監督: 舛田利雄
出演者:
石原裕次郎、浅丘ルリ子、内田良平、成田三樹夫、江原真二郎、本田みちこ、丹波哲郎、辰巳柳太郎
あらすじ:
徳川幕府も中期を過ぎその支配体制は次第に揺ぎつつあった。とくに封建制度のひずみは、財政の破綻となって現われた。
しかし、時の老中・田沼意次(丹波哲郎)は、最も卑劣な手段で、その窮地を逃れようとした。
それに地方藩の取潰しによる領地の没収である。
そのため、全国に隠密が放たれ、各藩の落度を暴くべく暗躍した。世人はこの隠密を“影”と称し、恐れおののいていた。
一方、これに対抗する各藩の自衛手段はただ一つ。
それは秘密裡に潜入してくる影を抹殺し、その口を封ずる事である。
その頃、“影狩り”と称して、幕府に狙われた藩に多額の金で雇われ“影”専門の殺し屋がいた。
室戸十兵衛(石原裕次郎)、乾武之進こと日光(内田良平)、日下弦之助こと月光(成田三樹夫)の三人である。
彼らは、彼らの藩を幕府によって取り潰され、流浪の身となった怒りと怨念を“影”抹殺へと向ける。
胆馬国出石藩は、五万八千石の貧乏藩である。
藩主仙石越前守が幼少であることから実権を握る家老・牧野図書(辰巳柳太郎)は、乏しい藩の財政を建て直すために、金山の開発を行い、すでに質のいい金を掘りあてていた。
影の情報により田沼は取潰しを画策する。
しかしふたつの壁があった。
ひとつは牧野図書の先祖が、家康から“永代本領安堵”のお墨付を拝領していること、そして、影狩りを雇ったことである。
出石藩に執拗に迫る影たち。
それを防ぐ影狩りの三人。
十兵衛の剛剣、日光の喧嘩剣、月光の正剣。
出石藩随一の切れ者である大目付・高坂蔵人(江原真二郎)は、なぜか三人に厳しく当り、十兵衛は気がかりだった。
計画が思い通り進まないことに焦ってきた田沼は、出石藩のお国替えの内示を下す。
そうすると“永代本領安堵”のお墨付を江戸に運ぶだろう、
胆馬から江戸までの道中は百五十里、その間にお墨付を奪う、という計画である。
図書は、お墨付を江戸まで運ぶ大役を、高坂に命じる一方、その護衛を三人に依頼する。
金箔の書状入れを携えて江戸へ向う高坂と藩士。
一行をつけ狙う影、伊賀三の組支配陣馬仙十郎と、くの一を含む配下。
そして馬を駆って護衛する十兵衛、月光、日光。
だが、道中にもう一人、十兵衛につきまとう鳥追い女・千登世(浅丘ルリ子)がいた。
コメント:
舛田利雄の監督なので、裕次郎とはまるで青春映画以来のコンビだが、原作さいとうたかをと言うことで、内容は実にハードな映画だ。
首が飛んだりちょっと血ドバが多すぎるのが気になる。
女好きの日光(内田良平)と冷静な月光(成田三樹夫)、それにリーダー格の十兵衛(石原裕次郎)の三人のアクション時代劇。
それに十兵衛の元許嫁で十兵衛の命を狙う千登世(浅丘ルリ子)が色を添える。
お家取りつぶしを狙う幕府と、家康の本領安堵のお墨付きを江戸に届けるミッションに雇われる影狩りの一味との暗闘。
なかなか面白いが、日光が槍で刺し貫かれたのに平気で動いているのが腑に落ちない。
今のようなCGもない時代のものとしてはアクション映画としてよくできている。
大御所の辰巳柳太郎まで招いて作り上げた時代劇だが、大ヒットというところまでは行かなかった。
裕次郎としては、以前のムード・アクションに戻ることも出来ず、新たな策として時代劇にトライしたつもりなのだろうが、自分自身での殺陣ができない以上無理な話だ。
その後も映画では新たなジャンル開発ができず、テレビでこの年7月スタートの『太陽にほえろ!』が大人気となったため、完全に軸足をテレビに置いた体制になってゆく。
したがって、本作で実質的には映画は終わりというのが実態だ。
一時期における日活の救世主であった裕次郎も、ムード・アクションが飽きられて、東映の網走番外地シリーズなどに完全に食われてしまった。
1968年には『黒部の太陽』で五社協定を崩すという快挙もあったが、その後は石原プロとして映画での継続的な成功は果たせなかったということになる。
すでに映画界全体がテレビに押されて斜陽化してきていたので、時代の趨勢には勝てなかったというのが妥当な評価だろう。
この映画は、今年になってようやくDVD化され、amazonで購入可能になっている。
レンタルはまだのようだ。
本ブログ記事にて、裕次郎の映画レビューは終了としたい。