「最後の博徒」
1985年11月16日公開。
広島の任侠の世界で生きる一匹狼を描く実録映画。
原作:正延哲士
脚本:村尾昭
監督:山下耕作
出演者:
松方弘樹 、江夏豊 、泉谷しげる、 鶴田浩二 、 丹波哲郎 、 千葉真一 、 梅宮辰夫 、 中村錦之助 、 成田三樹夫 、 品川隆二 、 岡田奈々 、 待田京介、 萬屋錦之介 |
あらすじ:
昭和52年4月、北陸最大の組織で北陸の帝王と呼ばれた川名組・川名勇組長が越前三国で殺害された。
福井県警はその日のうちに刺客4人を逮捕。
さらに殺人教唆の黒幕として、荒谷政之(松方弘樹)を逮捕した。
荒谷には懲役二十年の判決が下りた。
荒谷は、少年時代から呉の素人賭場に出入りし、石岡博(梅宮辰夫)の子分となっていた。
そこで博徒の行儀作法を学んだ。
一年後には若中(子分)に成長した彼に目をかけてくれたのは兄費分の大松義寛(江夏豊)である。
昭和21年8月、大松は愚連隊を叩き潰した。
その中には後の大原組組長・大原勝(泉谷しげる)がおり、彼は後に呉一帯をしきる山辰信男(成田三樹夫)と親交があった。
石岡は大松を怒った。
朝鮮戦争勃発直前、新興の運送業者・山辰は勢力を伸ばし、山辰組を拡大していく。
そんな時、呉駅近くで博徒のいざこざが起り、山辰組の若い者に突然現われた加納良三(千葉真一)が助っ人をした。
山辰は警察に捕まった加納を見込んで5万円の保釈金を積み、子分にした。
だが加納は刑務所内で大松と兄弟分の盃を交わしていた。
荒谷と加納もすぐ親しくなった。
昭和24年9月、加納は石岡を撃つ。
だが命までは取れず、刑務所入りとなった。
この事件が山辰の命令と知った荒谷は単身山辰の命を狙うが、彼をかばうために出て来て命を落してしまったのは大松だった。
この抗争は、山辰が加納を破門にするという条件を加え、広島の大親分・清島春信(萬屋錦之介)の仲介で手打ちとなる。
荒谷は山辰を狙って逮捕される。
昭和27年6月、大原によって石岡が刺殺された。
この仇は荒谷の若い者杉本が打ったが、山辰はのうのうと毎日を送っていた。
荒谷はいつかは山辰を殺ると決心した。
そんな荒谷に脅えて、山辰は刑務所内にまで刺客を送り込んできた。
だが、荒谷の命はなかなか取れなかった。
昭和34年2月、荒谷は出所。
彼は神戸の神岡組の三代目・田城一正(丹波哲郎)の最高幹部の菅田組組長・菅田猛雄(鶴田浩二)と兄弟分の盃を交わした。
その頃、山辰は呉を一本化、共栄会という組織を作り、初代会長におさまっていた。
昭和45年9月、加納の出所の時が来た。
加納と荒谷は手を握り合い、打倒山辰をめざす。
そんな二人の前に清島が現われ、山辰を引退させるから、彼から手を引いてくれと言うのだった。
加納は足を洗い、荒谷は幼な馴染の道代(岡田奈々)を妻にして、大阪で一匹狼としての組を組織した。
昭和50年9月、菅田組内の川名組と浅井組が戦争に突入。
菅田は神岡組から絶縁状を送られてしまう。
そんな時、荒谷のところに川名殺害の殺人教唆の逮捕状がきた。
彼は菅田に最後の言葉を送った。
菅田と神岡組三代目は和解した。
昭和59年9月、最高裁は荒谷の原判決を破棄した。
コメント:
広島・呉を舞台に、広島中のヤクザを相手にして非情な世界へ飛び込んでいく男の姿を描く。
正延哲士の同名のドキュメンタリー小説の映画化。
組織に属さない一匹狼の姿を描いた任侠映画。
広島のヤクザ抗争の渦中にいながら、義侠心だけで壮絶な人生を生きぬく男を松方弘樹が迫力たっぷりに演じる。
東映の任侠映画の常連のみならず元野球選手・江夏豊なども出演する豪華俳優が出演している。
ドキュメンタリー小説をベースとした異色の作品。
正延 哲士(まさのぶ てつし、1931年(昭和6年) - )は日本のルポライター、小説家、ジャーナリスト。
日本史や任侠界に関わるドキュメンタリー作品を多く執筆している。
広島ヤクザや山口組をテーマにしたものが多い。
「仁義なき戦い」のアナザーストーリー的な内容の作品で、任侠映画や実録路線でヒットを飛ばした東映も路線変更は避けられなくなり、記念碑的な作品。
本作は任侠映画のレジェンドの鶴田浩二の遺作でもあり、時代劇トップスターの萬屋錦之助を始め、東映オールスターが惜別の想いを刻もうと加わっている。
刑務所での面会シーンでの鶴田浩二と松方弘樹の語らいは、かつての栄光との決別とも重なり、東映任侠路線へのレクイエムとして心に響く。
この映画は、TSUTAYAでレンタルも購入も可能。