「緋牡丹博徒シリーズ」
(ひぼたんばくとシリーズ)
藤純子主演で、東映によって制作されたヤクザ映画シリーズ。全8作。東映京都撮影所製作。
藤純子の代表的シリーズとして知られる。
任侠映画で日本一の地位をキープしていた東映の、鶴田浩二、高倉健と並ぶ女任侠スターである藤純子の人気を不動のものにした任侠シリーズ。
シリーズは、藤純子引退の直前まで、通算4年にわたって第8作まで続き、女優として初めてのやくざ映画のシリーズとして、今でも邦画界に燦然と輝いている。
では、第1作からレビューして行きたい。
「緋牡丹博徒」
1968年9月14日公開。
緋牡丹博徒シリーズ第1作。
脚本:鈴木則文
監督:山下耕作
出演者:
藤純子、高倉健(特別出演)、若山富三郎、待田京介、大木実、山本麟一、若水ヤエ子、金子信雄、清川虹子、山城新伍
あらすじ:
九州の博徒、矢野組の組長、矢野は一人娘の竜子(藤純子)をどこに出しても恥ずかしくない、まっとうな娘にと手塩にかけて育てた。
その甲斐もあり、竜子は堅気の男との縁談がまとまっていた。
しかし、矢野が闇討ちに会って死ぬと、結婚も破談になった。
竜子は一家を解散し、父の亡骸のそばに落ちていた財布を手掛かりに、犯人を探す旅に出る。
竜子が全国津々浦々の賭場を流れ歩くうち、いつしか五年の歳月が過ぎていた。
明治十八年の晩春、すでに“緋牡丹のお竜”の異名をとっていた竜子は、岩国のある賭場で胴師のイカサマを見破る。
いざこざに巻き込まれた竜子は旅の博徒、片桐(高倉健)に助けられた。
片桐の人柄に惹かれた竜子は一部始終を打ち明けるが、何故か片桐は無言だった。
やがて片桐は立ち去るが、その時には証拠の財布は消えていた。
一方、竜子の唯一の子分で矢野殺しの犯人の顔を覚えているフグ新(山本麟一)が道後でいざこざを起し、岩津一家と熊虎一家の喧嘩騒ぎにまで発展した。
それを知った竜子は早速道後に向う。
単身乗り込んだ竜子の気っぷの良さに、大阪堂万一家の女親分・おたか(清川虹子)が仲裁に入り、喧嘩は治まる。
竜子とフグ新はおたかの勧めで大阪に出て、不死身の富士松(待田京介)の元に身を寄せる。
大阪は千成一家二代目の加倉井(大木実)の勢力下にあった。
富士松と約束を交わした芸妓の見受けを巡って、竜子と対した加倉井は、卑劣な手段で彼女を手寵めにしようとするが、そこに片桐が現れる。
片桐は加倉井の兄貴分で、竜子の父を殺した犯人は、加倉井だった。
だが、片桐は博徒の義理から、弟分の加倉井をかばい、真相を打ち明けなかった。
そんな時、犯人の顔を知るフグ新が加倉井に会い、すべてを知る。
しかし、そのフグ新は加倉井の部下に斬られ、瀕死の所を片桐に救われる。
加倉井は兄弟分の杯を返すと片桐に告げ、片桐も同意する。
フグ新は竜子に事の真相を打ち明けると、皆に看取られながら息を引き取る。
竜子は不死身の富士松と共に千成組に殴り込む。
富士松はダイナマイトを投げつけ、竜子は加倉井と対峙する。
そこに片桐が現われ、加勢する。
片桐は加倉井と刺し違えて倒れる。
瀕死の片桐は竜子に抱かれながら「竜子を人殺しにはしたくなかった」と言い残し、息を引き取った。
後日、矢野組再興二代目襲名の口上を述べる竜子の姿があった。
コメント:
よっ! お竜さんっ!
と、思わず声をかけたくなるほど、お竜さんのカッコ良さ!
藤純子の代名詞となる緋牡丹博徒の記念すべきシリーズ第一作。
日本特有の「女賭博師」という生業。
普通の女の幸せとは無縁の、気風のいい凛々しさの裏にある哀愁が美しくもあり、悲しくもある。
このような仁侠映画は、昨今ではとんと見られなくなったが、勧善懲悪と義理人情という日本人好みの分かりやすいストーリーも人気のひとつだ。
やはり、登場する男と女のカッコ良さにしびれるファンが多い。
お竜さんがカッコいいのはさることながら、彼女を助けるヒーロー役の存在は大きい。
本作の高倉健は、いつもながらに義理人情に厚く、物静かで心優しい男を演じている。
さすがお竜さんが惚れるだけあるいぶし銀の輝きを放つ。
女渡世人に幸福はない。
父の仇は討ったが、惚れた男は、命を落とし、白い牡丹はますます緋色に染まる。
そうして彼女は次の賭場へと去っていくのだ。
次回作への期待が高まる素晴らしいエンドになっている。
藤純子が22歳の作品。
若々しい美貌に加えて、仁義の切り方、目の据わり方など、さすが今の駆け出しの女優とは一枚も二枚も違う。
偉大だった昭和の象徴のようにも思える凛々しい女渡世人だ。
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