岸恵子の映画 「早春」 小津安二郎作品! 丸の内サラリーマンを描くヒューマンドラマ! 全編視聴可 | 人生・嵐も晴れもあり!

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「早春」

早春 全編

 

1956年1月29日公開。

小津安二郎監督の第47作。

 

脚本:野田高梧、小津安二郎

監督:小津安二郎

出演者:

池部良、淡島千景、岸惠子、高橋貞二、笠智衆、山村聡、田浦正巳、杉村春子、浦邊粂子、三宅邦子、東野英治郎、加東大介、須賀不二夫、中村伸郎、宮口精二、長岡輝子

 

 

あらすじ:

杉山正二(池部良)は蒲田から丸ビルの会杜に通勤しているサラリーマンである。

結婚後八年、細君・昌子(淡島千景)との仲は倦怠期である。

毎朝同じ電車に乗り合わせることから、いつとはなく親しくなった通勤仲間の青木(高橋貞二)、辻、田村、野村、それに女ではキンギョというあだ名の金子千代(岸惠子)など。

退社後は麻雀やパチンコにふけるのがこのごろでは日課のようになっていた。

細君の昌子は毎日の単調をまぎらすため、荏原中延の実家に帰り、小さなおでん屋をやっている母のしげ(浦邊粂子)を相手に、愚痴の一つもこぼしたくなる。

さて、通勤グループとある日曜日江ノ島へハイキングに出かけたその日から、杉山と千代の仲が急速に親しさを増した。

そして杉山は千代の誘惑に克てず、ある夜、初めて家をあけた。

それが仲間に知れて、千代は吊し上げを食った。

その模様を千代は杉山の胸に縋って訴えるが、杉山はもてあますだけであった。

良人と千代の秘密を、見破った昌子は、家を出た。

その日、杉山は会社で、同僚・三浦の死を聞かされた。

サラリーマンの生活に心から希望をかけている男だっただけに、彼の死は杉山に暗い後味を残さずにはいなかった。

仕事の面でも家庭生活の上でも、杉山はこの機会に立ち直りたいと思った。

ちょうどその頃、地方工場への転勤の話を荒川総務部長から打診された。

千代との関係も清算して田舎へ行くのも、一つの方法かも知れないと杉山は思い始める。

一方、昌子は家を出て以来、旧友の婦人記者・富永栄のアパートに同居して、杉山からの電話にさえ出ようとしなかった。

その後杉山は、転勤を決意して、仲間と別れを惜しむ。

さらに、脱サラしてバーを経営している大先輩の河合(山村聡)の店にもあいさつに行った。

杉山の赴任先は岡山県の三石という田舎町にある工場だった。

杉山は一人で荷物をまとめ、三石に向かった。

途中大津でおりて、仲人の小野寺(笠智衆)を訪ねると、小野寺から「いざとなると、会社なんて冷たいもんだし、やっぱり女房が一番アテになるんじやないかい」と言われる。

山に囲まれたわびしい三石に着任して幾日目かの夕方、工場から下宿に帰った杉山は、そこに妻の昌子の姿を見た。

昌子も、杉山についてきたのだ。

二人は、もう一度夫婦としてやり直そうと誓い合うのであった。

 

 

コメント:

 

小津監督にしては珍しい、不倫を題材にした作品。

池部良は、妻・淡島千景がいながら会社の同僚・岸恵子に誘われるままに一晩をともにする。

岸恵子が不倫に誘うという役柄を演じるのも珍しい。

岸恵子が池部良に何度も往復びんたをかませて、家から出て行くシーンは迫力がある。

こういう演技も出来るようになったのだ。

 

 

正座して団扇をあおぐ淡島千景が何度も出るが、その凛とした美しさに惚れ惚れする。

池部が赴任した岡山県の三石に、突然現れる淡島のシーンは何度観てもいい。

やはり小津監督に気に入られた女優の一人だっただけに、淡島千景の演技は素晴らしい。

 

 

五反田でおでん屋を営む淡島の母親(おっかさん)浦辺粂子が実にいい。

小津映画の常連・杉村春子は、今回は池部夫婦の向かいの家に住む隣人。

その夫は宮口精二。

脱サラしたバーのマスターを山村聰が演じる。

その妻が、三宅邦子。

仲人の小野寺という高齢者を笠智衆が演じている。

これだけ多くの素晴らしい役者たちが出演した贅沢な不倫映画というのも珍しい。

 

 

昭和30年代の東京・丸の内のオフィスでの勤務シーンや、同僚たちとのマージャンのシーンが当時をしのばせる。

当時丸の内のビル内はエアコンが入っていたようだが、自宅はエアコンも扇風機も無く、暑い夜に皆が団扇を使っているシーンが何度も登場して、昔の夏は大変だったことがよく分かる。

 

小津映画は、当時の世相が非常に細かく描かれており、映画を観る中で日本の高度成長時代の様子が分かってくる。

当時からサラリーマンは他の職業の人たちから羨ましがられていたが、当人は未来に不安を抱いていたようだ。

満員電車での通勤の様子や、オフィスレディの当時の服装も参考になる。

自宅には風呂が無く、銭湯に通っていたらしいことも分かる。

 

最後は、小津安二郎監督ならではの、深い感銘と安ど感が味わえる秀逸な結末になっている。

やはり、この監督の脚色と演出の力は別格であることを強く感じる。

 

 

 

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