「座頭市果し状」
1968年8月10日公開。
座頭市シリーズ第18作。
脚本:直居欽哉
監督:安田公義
出演者:
勝新太郎 、 野川由美子 、 三木本賀代 、 待田京介 、 志村喬 、 井上昭文 、土方弘 、 北城寿太郎 、 小松方正
あらすじ:
秩父街道を旅する座頭市(勝新太郎)は、とある宿場町に着いた。
たまたま浪人者・弦八郎(待田京介)や松五郎一家に斬られた百姓を医者順庵(志村喬)にかつぎ込んだことから順庵と親しくなった。
順庵は何故か、娘お志律(三木本賀代)の心配をよそに酒びたりだった。
間もなく、順庵の家に世話になった市のところへ、松五郎(土方弘)から迎えが来た。
用心棒になってほしいというのだった。
断った市をやくざどもは斬りつけたものの、市の居合いの妙技には息をのむばかりだった。
そんな市に、弦八郎の女・お秋(野川由美子)は「気を付けな」と、警告した。
その直後、弦八郎は松五郎の依頼で、庄屋の徳左衛門を斬殺した。
この暴挙に市は一味の逃亡を妨げようとしたが、弦八郎と対峙した時、短銃で射たれ、肩先に弦八郎の刀を受けてしまった。
市の手当てをしたのはもちろん、順庵父娘だが、松五郎たちはすぐさま追ってきた。
しかし、市の姿は順庵の家から消えていた。
順庵とお志津は松五郎の機織場に連れこまれ、拷問を受けた。
一方姿を隠していた市は知らせを受けて松五郎一家に乗り込んだ。
傷口から血を流し、よろめきながらも市の闘いぶりはすさまじかった。
順庵とお志津を安全な場所に逃がすと、仕込杖を握り斬って斬って斬りまくった。
やがて阿修羅のように斬りまくるその市の前に、弦八郎が現われた。
間合いを計った弦八郎は大刀を一閃、とび違った市の仕込杖がキラリと光った。
倒れたのは弦八郎だった。
その時、様子を見に来たお志律と順庵は、倒れた弦八郎にすがりついた。
弦八郎はなんと順庵の息子だったのだ。
やむを得ない仕儀とはいえ、またしても人を斬り、順庵父娘を悲しみに追いやった市は自分がいやにならざるを得なかった。
宿場町を黙って去っていく市の肩は重い。
コメント:
本作は、志村喬、待田京介、野川由美子という個性豊かな俳優たちとの共演。
銃と刀で傷を負い、満身創痍の座頭市という珍しいシーンが展開する。
しかし、傷口が開き、血が吹き出しながらも、敵を全滅させる高速の居合斬りに瀕死の重傷感はない。
最後に敵役の待田京介との一騎打ちで勝負をつけるのだが、その相手が志村喬の息子だったという皮肉な結末になる。
医者を演じる志村喬のいぶし銀のような存在がこの作品の価値を高めている。
待田京介が扮するやヤクザに落ちぶれた流れ者の息子を持つ父親としての深い悲しみを秘めた演技が光る。
黒澤明監督の作品に数多く出演して世界的に有名になったこの役者のさりげないセリフが心に沁みる。
勝新の演じる座頭市というめくらでやくざの凶状持ちに語りかけるこの人の優しさは深く印象に残る。
冒頭の土砂降りの雨のシーン。
やっと民家の軒下に雨宿りできた座頭市。
そこに偶然居合わせた美女が、野川由美子。
そのあでやかな笑顔が色っぽい。
悪徳やくざの親分の女だが、最後は改心して市を助けるという役柄だ。
やはり何度も主役を張ってきた女優は存在感が違う。
次は、カンカン照りで大汗をかいた市が、木の下で一休みしているシーン。
すると木の上からヘビが市を目がけて落ちてくる。
と、一瞬の間に市は仕込み杖から居合でその蛇をまっぷだつにする。
そこを通りかかった男が、「見事だなあ」と言って立ち去っていく。
それが、待田京介が演じる敵役・弦八郎で、順庵の息子という設定。
このシーンがその後の展開を予感させるシーンとなる。
この映画は、YouTubeで全編無料視聴可能。