「忍びの者 続・霧隠才蔵」
1964年12月30日公開。
忍びの者シリーズ第5作。
家康の命を狙う細動の執念が実る。
脚本:高岩肇
監督:池広一夫
キャスト:
霧隠才蔵: 市川雷蔵
あけみ: 藤由紀子
志乃: 藤村志保
真田幸村: 城健三朗(若山富三郎)
徳川家康: 小沢栄太郎
真田大助: 小林勝彦
島津家久: 五味龍太郎
徳川秀忠: 島田竜三
真鶴: 明星雅子
島津義弘: 沢村宗之助
服部半蔵: 伊達三郎
あらすじ:
元和元年五月、大阪は落城した。
だが再挙の執念に燃える伊賀忍者・霧隠才蔵(市川雷蔵)は、名将・真田幸村(城健三朗)を助けて重囲を脱出した。
そして、海上に襲う服部半蔵(伊達三郎)ら徳川方忍者群の追撃を退けて、九州薩摩の島津家へ落ちのびた。
島津の当主家久(五味龍太郎)、隠居・義弘(沢村宗之助)らは、幸村の智謀を島津の勇武に加えることをよろこび、打倒徳川の機会をうかがった。
しかし、なぜかこれが駿府の家康の方に洩れた。
才蔵はひそかに探索の手をのぱし、自源流師範・海江田一閑斎、茶の宗匠宗全らが徳川方の隠密であることを見破った。
才蔵に対決を迫られた二人は、わが身を恥じて自殺した。
一方島津家の陰謀を知った家康は激怒し、服部半蔵に、幸村、才蔵討伐を命じた。
急を知った幸村と才蔵は鉄砲製造の秘法を探ろうと、種ケ島へ潜入した。
そんなある日、才蔵は浜に打ちあげられた若い女あけみ(藤由紀子)を助け、島の天守堂の神父に預けた。
やがて尼僧となったあけみは、しばしば才蔵や幸村を訪れるようになった。
だが、このあけみこそ大阪で才蔵に殺された忍者・武部与藤次の娘であった。
あけみは、才蔵をあざむき、さらに今は神をもあざむく身となり、罪の意識に責め悩まされた。
一方、家康はあけみの情報により幸村と才蔵が島津の被護下にあることを知り、家久に両人を駿府へ送りとどけるよう厳命した。
これをいち早く察知した幸村は、才蔵、あけみらと別れの宴をはった。
だが、その席上へ家康方の忍者がなだれこんだ。
あけみは、鉄砲で狙われた才蔵の危機を救った。
翌朝あけみは、服部半蔵に裏切りの責めを問われ殺された。
鶴丸城へ帰った幸村だが、事態は悪くなる一方。
幸村は早くも陰謀の壊滅をさとって自殺した。
才蔵は単身駿府城の家康の間に忍びこみ、毒針を吹きつけた。
やがて家康は世を去った。
才蔵は幸村の霊に向かって誇らしげにに叫んだ。
「殿、才蔵は勝ちました!」
コメント:
徳川家康が中村鴈治郎から小沢栄太郎に変わって登場。
才蔵は真田幸村と共に大坂城から薩摩の島津家へ逃げのびる。
鉄砲作りが盛んな薩摩・種子島に渡り、才蔵は家康の誅殺を図る。
いまだ真田や才蔵に再起の道があるように物語を進めるが、史実とは異なるストーリー。
すでに関ヶ原で政治状況は決定しているので、大坂城の陣は徳川の天下の仕上げ作業になる。
ラストシーンが極めて興味深い。
才蔵は家康の命を奪って、勝利を叫ぶ。
家康の体制はすでに二代・秀忠に引き継がれ、微塵のゆらぎもない。
家康は天寿を全うしたも同然なのだ。
この矛盾を、そのまま提示して幕となる。
忍びのプライドにこだわり続ける才蔵が哀しい。
終盤の家康毒殺までの手順は息が詰まるほど。
途中種子島での色恋と、忍者の仇討ちのエピソードはおまけ。
雷蔵が「陸軍中野学校」ばりのクールさを見せるのは好感が持てる。
ラストの暗殺成功時の喜び方は尋常ではない。
孤高の忍者・才蔵を演じる雷蔵の世界だ。
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https://www.youtube.com/watch?v=qCSX0BWQKc8