三船敏郎の映画 第150作 「深い河」  遠藤周作原作の映画  三船敏郎の遺作! | 人生・嵐も晴れもあり!

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「深い河」

 

 

深い河 プレビュー

 

1995年6月24日公開。

1994年に毎日芸術賞を受賞 した遠藤周作の「キリスト教と日本人」の最終章となった作品の映画化。

三船敏郎の最期の出演映画。

 

 

監督・脚本:熊井啓

出演者:

秋吉久美子、奥田瑛二、井川比佐志、内藤武敏、菅井きん、沼田曜一、杉本哲太、香川京子、:三船敏郎

 

 

あらすじ:

成瀬美津子(秋吉久美子)は満たされぬ心を埋める“何か”を求めて、インドツアーに参加した。

観光客を乗せたバスは聖地ベナレスを目指し、大平原の中を疾走する。

美津子は自由奔放な学生生活を送りながら、耐え難い空しさに心を支配されていた10年前を回想した。

秋のある日、美津子はクリスチャンの大津(奥田瑛二)と出会い、彼を誘惑して、「神を捨てろ」と迫った。

彼女にとっては全てがゲームだったが、真剣に揺れ動く大津を眺めて、美津子は「自分は神に勝ったのだ」と思った。

たが心の空虚さは広がるばかりであり、結局彼女は大津を捨てた。

傷心の中で大津は神学を志し、フランスへと旅立っていく。

数年を経て、ふたりはリヨンで再会した。

美津子は実業家と結婚し、何不自由ない生活を送っていたが、心の空しさは満たされることはなかった。

神学校で学ぶ大津は「日本に戻ったら、日本人の心に合う基督教を考えたいんです」と夢を語る。

美津子は大津との再会で、かつて紙屑のように捨てた彼が自分の心に少なからぬ痕跡を残していることを意識し始めた。

満たされない心が癒えぬまま美津子は夫と別れ、病院でのボランティアを続けていた。

そんな彼女の下にインドのベナレスに行くことになったというイスラエルの大津から手紙が届く。

ベナレスへ向かう車中には美津子のほかにも、苦悩を抱き“何か”を求めるためにツアーに参加した日本人たちがいた。

家庭を顧みることなく一途に働き続けてきた壮年の男・磯辺(井川比佐志)の目的は、死んだ妻の生まれ変わりと思われる少女を探すことであった。

また、ビルマ戦線を経験した老人・木口(沼田曜一)もいた。

第二次世界大戦で出征した木口は、50年後に東大寺のお水取りを見に出掛け、かつてジャングルで沼地から自分を助け出してくれた戦友の塚田(三船敏郎)に再会した。しかし、久しぶりに会った彼は酒に溺れ、性格もまるで変わってしまっていた。
木口は体を壊して入院した塚田の見舞いに出掛け、彼の妻から話を聞くことになった。

塚田の妻によれば、終戦後に戦地で死んだ皆川の家族が訪れてから、塚田は酒に溺れるようになったという。
戦時中、皆川は手榴弾で自殺した。塚田は皆川の家族を見たことで、酒に逃げるようになった。

戦時下に起こった事件が塚田を苦しめたようだ。

やがて塚田は亡くなり、木口は複雑な想いを胸にインドを訪れることにした。

一行はベナレスの街に到着。

美津子はガンジス河とガートで一心に祈る人々に圧倒される。

彼女は磯辺や木口との交流を通じて、それぞれが人生の苦悩を背負い、ツアーに参加してきていることを知った。

ベナレスの街で大津を探す美津子は、突然背後から呼び止められる。

そこには薄汚れた身なりの大津が立っていた。

彼はベナレスの街で教会を離れ、今はヒンドゥー教徒たちと生活を共にしているという。

彼の心は昔と少しも変わっていなかった。

美津子は大津との再会の後、意を決したようにガンジス河に身を浸した。

自分が欲しかったものが何であったか、少しだけ解ったような気がすると、美津子は自らに語りかけた。

やがて美津子は、あらゆる人間の哀しみや苦悩、死までも包み込んで流れる“深い河”に、いつしか自分自身が溶け込んでいくような安らぎを憶えていくのだった。

 

 

コメント:

 

リヨンの古い街並み、ベナレスの雑踏、ガンジス河畔に集まる巡礼者……丁寧に描かれた美しい光景が印象に残る作品。

それぞれの人生の終着点をガンジス河に求める日本人たちの描き方は感動的だ。

日本人とキリスト教の関係を生涯のテーマにした遠藤文学の核心に迫ろうとした異色作。

秋吉久美子の熱演が光る。

性に奔放な女子大生から有閑マダム、そして満たされない人生にさまよう女性までを時系列に演じて素晴らしい。

サリーをまとい、ガンジス河で沐浴する姿は、神々しいまでに美しい。

 

 

この作品は、異国の地へと自分探しの旅に出る主人公をメロドラマチックに描いた物語である。

 

これが遺作となった三船敏郎の最後の雄姿に胸が熱くなる映画である。

 

三船敏郎を世界のミフネに育て上げた黒澤明監督を心から慕っていた鬼才・熊井啓監督が演出した作品が、三船敏郎の遺作となったということに、因縁浅からぬものを感じざるを得ない。

 

なお、本作で三船作品は150作目となるが、「三船敏郎全映画」(洋泉社/2018.8.)が他にも以下の3つの作品を三船敏郎の関連作品として挙げている:

 

 

 

第151作:「二人だけの朝」(1971年4月1日公開)

(主演」三船史郎。 制作:三船敏郎)

 

第152作:「映画スター 家庭訪問記」

(東宝スターの家庭を訪問した映像らしい)

 

第153作:「花の進軍」

(1951年4月誕生の俳優たちの東映誕生記念映像らしい)

 

しかし、三船敏郎が出演した正式な映画ではないので、具体的なレビューは省力することとした。

 

これにて、三船敏郎の全作品のレビューを終了させていただきます。

世界のミフネとなった、日本の映画界を代表する偉大なる俳優・三船敏郎よ、永遠なれ!