三船敏郎の映画 第99作 「日本のいちばん長い日」 終戦の日・八月十五日正午に玉音放送が! | 人生・嵐も晴れもあり!

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「日本のいちばん長い日」

 

 

日本のいちばん長い日 予告編

 

 

1967年8月3日公開。

終戦の日までの最後の長い一日を描く記念作。

興行収入:4億4195万円。

 

 

 

原作:大宅壮一『日本のいちばん長い日』

脚本:橋下忍

監督:岡本喜八

 

 

 

キャスト:

内閣
  • 鈴木貫太郎男爵(内閣総理大臣) - 笠智衆
  • 東郷茂徳(外務大臣) - 宮口精二
  • 米内光政(海軍大臣) - 山村聡
  • 阿南惟幾(陸軍大臣) - 三船敏郎
  • 岡田忠彦(厚生大臣) - 小杉義男
  • 下村宏(情報局総裁) - 志村喬
 
官邸
  • 迫水久常(内閣書記官長) - 加藤武
  • 佐藤朝生(内閣官房総務課長) - 北村和夫
 
外務省
  • 松本俊一(外務次官) - 戸浦六宏
 
情報局
  • 川本信正(情報局総裁秘書官) - 江原達怡
 
  • 森赳中将(第一師団長) - 島田正吾
  • 水谷一生大佐(参謀長) - 若宮忠三郎
  • 渡辺多粮大佐(歩兵第一連隊長) - 田島義文
  • 芳賀豊次郎大佐(歩兵第二連隊長) - 藤田進
  • 古賀秀正少佐(参謀) - 佐藤允
  • 石原貞吉少佐(参謀) - 久保明
陸軍省
  • 若松只一中将(陸軍次官) - 小瀬格
  • 吉積正雄中将(軍務局長) - 大友伸
  • 荒尾興功大佐(軍事課長) - 玉川伊佐男
  • 井田正孝中佐(軍務課員) - 高橋悦史
  • 椎崎二郎中佐(軍事課員) - 中丸忠雄
  • 竹下正彦中佐(軍事課員) - 井上孝雄
  • 畑中健二少佐(軍事課員) - 黒沢年男
  • 小林四男治中佐(陸軍大臣副官) - 田中浩
 
参謀本部
  • 梅津美治郎大将(参謀総長) - 吉頂寺晃
 
第一総軍
  • 杉山元元帥(司令官) - 岩谷壮
 
近衛師団
 
児玉基地(陸海混成第27飛行集団)
  • 野中俊雄大佐(飛行団長) - 伊藤雄之助
  • 児玉基地副長 - 長谷川弘
  • 少年飛行兵 - 大沢健三郎
 
横浜警備隊
  • 佐々木武雄大尉(隊長) - 天本英世
 
航空士官学校
  • 黒田大尉 - 中谷一郎
 
憲兵隊
  • 東京放送会館警備の憲兵中尉 - 井川比佐志
 
海軍関係者
海軍省
 
厚木基地(第三〇二海軍航空隊)
  • 小園安名大佐(司令) - 田崎潤
  • 菅原英雄中佐(副長) - 平田昭彦
  • 飛行整備科長 - 堺左千夫
 
宮城関係者
  • 清家武夫中佐(侍従武官) - 藤木悠
  • 藤田尚徳(侍従長) - 青野平義
  • 徳川義寛(侍従) - 小林桂樹
  • 戸田康英(侍従) - 児玉清
重臣
  • 木戸幸一(内大臣) - 中村伸郎
 
侍従
 
日本放送協会関係者
  • 大橋八郎(日本放送協会会長) - 森野五郎
  • 矢部謙次郎(国内局長) - 加東大介
  • 荒川大太郎(技術局長) - 石田茂樹
  • 館野守男(放送員) - 加山雄三
  • 和田信賢(放送員) - 小泉博
 
その他
  • 原百合子(鈴木首相私邸女中) - 新珠三千代
  • ナレーター - 仲代達矢

特別出演

  • 昭和天皇 - 松本幸四郎(八代目)

 

 

あらすじ:

1945年8月。

戦局が次第に不利になってきた日本に無条件降伏を求める米、英、中のポツダム宣言が、海外放送で傍受されたのは昭和二十年七月二十六日午前六時であった。

直ちに翌二十七日、鈴木総理大臣官邸で緊急閣議が開かれた。

その後、八月六日広島に原爆が投下され、八日にはソ連が参戦し、日本の敗北は決定的な様相を呈していたのであった。

第一回御前会議において天皇陛下が戦争終結を望まれ、八月十日、政府は天皇の大権に変更がないことを条件にポツダム宣言を受諾する旨、中立国のスイス、スウェーデンの日本公使に通知した。

十二日、連合国側からの回答があったが、天皇の地位に関しての条項に「Subject to(但し書き)」とあるのが隷属か制限の意味かで、政府首脳の間に大論争が行なわれ、阿南陸相はこの文章ではポツダム宣言は受諾出来ないと反対した。

しかし、八月十四日の特別御前会議で、天皇は終戦を決意され、ここに正式にポツダム宣言受諾が決ったのであった。

この間、終戦反対派の陸軍青年将校はクーデター計画を練っていたが、阿南陸相は御聖断が下った上は、それに従うべきであると悟した。

一方、終戦処理のために十四日午後一時、閣議が開かれ、陛下の終戦詔書を宮内省で録音し八月十五日正午、全国にラジオ放送することが決った。

午後十一時五十分、天皇陛下の録音は宮内省二階の御政務室で行われた。

同じ頃、クーデター計画を押し進めている畑中少佐は近衛師団長森中将を説得していた。

一方厚木三〇二航空隊の司令小薗海軍大佐は徹底抗戦を部下に命令し、また東京警備軍横浜警備隊長佐々木大尉も一個大隊を動かして首相や重臣を襲って降伏を阻止しようと計画していた。

降伏に反対するグループは、バラバラに動いていた。そんな騒ぎの中で八月十五日午前零時、房総沖の敵機動部隊に攻撃を加えた中野少将は、少しも終戦を知らなかった。

その頃、畑中少佐は蹶起に反対した森師団長を殺害、玉音放送を中止すべく、その録音盤を奪おうと捜索を開始し、宮城の占領と東京放送の占拠を企てたのである。

しかし東部軍司令官田中大将は、このクーデターの鎮圧にあたり、畑中の意図を挫いたのであった。

玉音放送の録音盤は徳川侍従の手によって皇后官事務官の軽金庫に納められていた。

午前四時半、佐々木大尉の率いる一隊は首相官邸、平沼枢密院議長邸を襲って放火し、五時半には阿南陸相が遺書を残して壮烈な自刃を遂げるなど、終戦を迎えた日本は、歴史の転換に伴う数々の出来事の渦中にあったのである。

そして、日本の敗戦を告げる玉音放送の予告が電波に乗ったのは、八月十五日午前七時二十一分のことであった。

 

 

 

コメント:

 

玉音放送に関して、1945年(昭和20年)8月15日のラジオ放送は下記の6回であった。

  1. 7時21分(9分間)
  2. 正午(37分半、玉音放送を含む)
  3. 15時(40分間)
  4. 17時(20分間)
  5. 19時(40分間)
  6. 21時(18分間)

玉音放送の、読み下し全文は以下の通り:

 

  朕深く世界の大勢と 帝国の現状とに鑑み 非常の措置を以って時局を収拾せんと欲し ここに忠良なる汝臣民に告ぐ

朕は帝国政府をして 米英支蘇四国に対し その共同宣言を受諾する旨通告せしめたり

そもそも帝国臣民の康寧をはかり 万邦共栄の楽しみを共にするは 皇祖皇宗の遺範にして 朕の拳々措かざる所
先に米英二国に宣戦せる所以もまた 実に帝国の自存と東亜の安定とを庶幾するに出でて 他国の主権を排し領土を侵すが如きは もとより朕が志にあらず
然るに交戦既に四歳を閲し 朕が陸海将兵の勇戦 朕が百僚有司の励精 朕が一億衆庶の奉公 各々最善を尽くせるに拘らず 戦局必ずしも好転せず
世界の大勢また我に利あらず
しかのみならず 敵は新たに残虐なる爆弾を使用して しきりに無辜を殺傷し 惨害の及ぶところ真に測るべからざるに至る
しかもなお交戦を継続せんか 遂に我が民族の滅亡を招来するのみならず 延べて人類の文明をも破却すべし
かくの如くは 朕何を以ってか 億兆の赤子を保し 皇祖皇宗の神霊に謝せんや
是れ 朕が帝国政府をして共同宣言に応せしむるに至れる所以なり
朕は帝国と共に 終始東亜の解放に協力せる諸盟邦に対し 遺憾の意を表せざるを得ず
帝国臣民にして戦陣に死し 職域に殉し 非命に倒れたる者及び 其の遺族に想いを致せば五内為に裂く
且つ戦傷を負い 災禍を被り 家業を失いたる者の厚生に至りては 朕の深く軫念する所なり
思うに今後帝国の受くべき苦難はもとより尋常にあらず
汝臣民の衷情も朕よく是れを知る
然れども朕は時運の赴く所 堪え難きを堪へ 忍び難きを忍び 以って万世の為に太平を開かんと欲す
朕はここに国体を護持し得て 忠良なる汝臣民の赤誠に信倚し 常に汝臣民と共に在り
もしそれ情の激する所 濫りに事端を滋くし 或いは同胞排せい 互いに時局を乱り 為に大道を誤り 信義を世界に失うか如きは 朕最も之を戒む
宜しく 挙国一家 子孫相伝え かたく神州の不滅を信じ 任重くして道遠きを念い 総力を将来の建設に傾け 道義を篤くし 志操を堅くし 誓って国体の精華を発揚し世界の進運に後れざらんことを期すべし
汝臣民それ克く朕が意を体せよ

御名御璽

昭和二十年八月十四日

内閣総理大臣鈴木貫太郎

 

この映画は、日本がポツダム宣言を受諾し、終戦を迎えるその一日の出来事を時間軸に沿って描いている大作。

モノクロの画面、躍動する人物、軍部の暴走を体を張って阻止しようとする人たち、すごい迫力で一気に突っ走る。
天皇陛下は正面から映さず、常に障害物を前に置いて撮っているが、それはこの当時の天皇陛下に対する矜持であろう。

2015年にこの映画(というよりも原作)は再映画化されるが、その時には天皇陛下は本木雅弘が演じ、しっかり自分の意見を言っている。時代の変化を感じさせる。

 

阿南陸相を演じる三船敏郎の圧倒的な存在感。

鈴木貫太郎首相を演じる笠智衆の老獪な狸芝居。

畑中健二少佐を演じる黒沢年雄の鬼気迫る突出した演技。

 

「終戦」という、究極の「プロジェクトX」ともいうべき超過密スケジュールの中で展開された終戦ドラマを、緊迫感溢れる映像とスピード感に満ちた演出で描き切った日本映画界の記念碑的な大作である。

 

東宝のオールスターが出演し、その厚みが映画をしっかり支える。

それにしても豪華俳優陣である。映画会社が多くの俳優を抱えていた時代だからこその厚みだ。

主演の三船敏郎も頑張っているが、それよりも、脇の笠智衆、小林桂樹、加藤武、島田正吾などが印象に残る。

加山雄三は、最後に放送局の職員として登場。

青年将校の黒沢年男が狂気をはらんだ芝居で吠えたてるが、それがこの映画の基調となっている。

もし、黒沢年男のあのオーバーアクションがなければ、映画のトーンは変わっていただろう。

 

「堪え難きを堪へ 忍び難きを忍び 以って万世の為に太平を開かんと欲す」

と述べられた昭和天皇の御心を現代の国民や政治家たちはどう思っているのだろう。

三船敏郎が熱演した阿南陸相の最期の切腹のシーンが痛々しい。

 

 

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