黒澤明監督の映画 「椿三十郎」 三船敏郎の独壇場! 最後の仲代達矢との対決シーンはド派手! | 人生・嵐も晴れもあり!

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「椿三十郎」

 

 

椿三十郎 予告編

 

1962年1月1日公開。

興行収入:4億5010万円
(1961年度邦画1位)

 

 

映画業界での評価:

1961年度キネマ旬報ベスト・テン第5位にランクイン。

1999年にキネマ旬報社が発表した「映画人が選ぶオールタイムベスト100・日本映画編」では82位にランクイン。

1995年にイギリスのBBCが発表した「21世紀に残したい映画100本」に選出された。

 

 

脚本:黒澤明・菊島隆三・小国英雄

監督:黒澤明

出演者:

三船敏郎、仲代達矢、加山雄三、小林桂樹、志村喬、藤原釜足、土屋嘉男、田中邦衛、団令子、伊藤雄之助、小川虎之助、平田昭彦、入江たか子、清水将夫、久保明

 

 

あらすじ:

ある城下町の夜、薄暗い社殿で九人の若侍が密議をこらしていた。

城代家老・睦田(伊藤雄之助)に、次席家老・黒藤(小川虎之助)と国許用人・竹林(藤原釜足)の汚職粛清の意見書を差し出して入れられず、大目付・菊井(清水将夫)に諭されてこの社殿に集っていたのだ。

その真中に、よれよれの紋付袴の浪人者(三船敏郎)が現われて、九人をびっくりさせた。

その上、その浪人者は、城代家老が本物で、大目付の菊井が黒幕だと言って皆を仰天させる。

その言葉の通り、社殿は大目付輩下の手の者によって取りまかれていた。

青くなった一同を制してその浪人者は、九人を床下へ隠し、一人でこの急場を救った。

その時、敵方の用心棒・室戸半兵衛(仲代達矢)はその浪人者の腕に舌をまいた。

かしこまる若待をみた浪人者は、急に可哀そうになり力を貸すことにした。

城代家老は屋敷からはすでにどこかへ連れて行かれた後であり、夫人(入江たか子)と娘の千鳥が監禁されていた。

浪人者はこの二人を救い出し、若侍の一人寺田(平田昭彦)の家にかくまった。

寺田の家は黒幕の一人黒藤の隣だ。

黒藤の屋敷は別名を椿屋敷と言われるくらい、椿の花が咲いていた。

その浪人者は名を椿三十郎と名乗った。

皆は、城代家老の居場所を探すに躍起だ。

黒藤か菊井か竹林の家のどこかに監禁されているはずだ。

三十郎は敵状を探るため、室戸を訪ねていった。

室戸は三十郎の腕を買っているので、即座に味方につけようと、菊井、黒藤の汚職のことを話し、自分の相棒になれとすすめた。

三十郎を信用しない保川(田中邦衛)、河原は、三十郎に裏切られたら大変だと、三十郎の動向をうかがうことになった。

三十郎を支持する井坂(加山雄三)も、あの二人には任せておけないと三十郎の後をつけた。

しかし室戸と三十郎に見つけられ、当て見を食らって捕えられた。

三十郎は室戸の隙をみて、番人を斬り倒し、自分を縛らせて彼らを逃がした。

三十郎はこれで室戸から用心棒稼業を首になってしまった。

寺田の家に帰って来た三十郎は若侍をどなりつけた。

その時、夫人が椿屋敷から流れてくる川の中から意見書の紙片を拾って来た。

この川は寺田の庭の隅を通っているのだ。

家老は黒藤の家に監禁されていると決った。

三十郎は、黒藤の警固を解かせるため、むほん人の一味が光明寺に集っていると知らせに行くことになった。

その留守になった合図に椿の花を川に流すというのだ。

計略は図に当った。

警固の一隊は光明寺に向った。

だが、光明寺の門の上に寝ていたという三十郎の言葉で、嘘がばれてしまった。

光明寺には門がないのである。

三十郎は捕えられた。

しかし、臆病な竹林は三十郎の罠にかかって、川に椿の花を流した。

若待の必死の斬込みで城代家老は救われた。

三十郎と半兵衛の一騎打は・・・・・・。

三十郎は若侍九人の見送りをうけて静かに去っていった。

 

 

コメント:

 

激しく迫力のある斬り込みと、切り過ぎの椿三十郎(三船敏郎)を戒める女性陣のゆったりとした雰囲気の、絶妙なバランス。

若い若い加山雄三の井坂伊織達と百戦錬磨の椿三十郎のやりとりがなかなか面白い。

椿を流すエピソードもなかなか痛快。
随所にみられるアクションとユーモアが、この作品に奥行きを与えていて、本当にいい話になっている。
公開当時大人気となった、三船敏郎の椿三十郎と、仲代達矢の室戸半兵衛との最後の対決は、今観ても衝撃的で凄い。


とにかく、三船敏郎の存在感が圧倒的な映画。
三十郎こと三船は、劇中で二度ほど大あくびをする。

渦中にないときの三十郎はどこかつまらなそうにしていて、よく寝そべっており、大あくびを引きずっている。

神社の拝殿の奥の暗闇から登場し、荒野の光の中に「あばよ」と消えていく暴れん坊の来訪神だ。

寝ていないときの彼はいつも悪さをするか悪だくみをしており、人間を斬り殺すことに全く躊躇をみせない。

三船敏郎を使った黒澤映画の最盛期を代表的な作品だ。

 

これは黒澤映画最高のコメディ+アクション巨編だ。

血しぶき飛び散る凄惨なクライマックスシーンや、いきなり画面に登場するや他を圧する三船敏郎の役にはまった独特の演技。

上を下へのお家騒動を、時にユーモラスに、時にサスペンスフルに紡ぎ出す黒澤明の硬軟織り交ぜた語り口。

出色のエンタメ時代劇であることは間違いない。。

 

ラストの三船と仲代の決闘シーンで、ポンプを使う手法で斬られた仲代の身体から血が噴き出すという特殊効果が用いられた。

この手法自体はすでに『用心棒』で使われていたが、夜間シーンで画面が暗く、出血の量が少ないために『用心棒』では目立たなかった。

今回ピーカン (快晴)で撮った『椿三十郎』での印象があまりにも強かったため、殺陣において最初にこの手法を採用した映画は『椿三十郎』だと一般に誤解されるきっかけとなった。

とはいえ、血飛沫が噴き出す表現が、この映画以降の殺陣やアクションシーン等で盛んに模倣されるようになったのは事実。

他にも三十郎が、わずか40秒で30人を叩き斬るシーンなど殺陣の見所が多い。

 

『椿三十郎』以降の日本の時代劇映画で黒澤の手法を用いた描写が流行してしまったため、一時は欧州の新聞が映画祭のルポで、「日本の時代劇のヘモグロビンの噴射は、もうたくさんだ」などとして悪口を書きたて、この種の時代劇作品が「ヘモグロビン噴射剤」などと皮肉を込めて呼ばれることとなってしまったという。

これに黒澤監督は強い罪悪感を抱き、「人を斬る音と、血の噴出を日本の時代劇で流行させてしまった本家本元は、自分だ」と言って、本作の後、黒澤監督は派手な殺陣をみせる豪快なチャンバラ映画を作らなくなってしまった。

『赤ひげ』での廓の用心棒たちを相手にした乱闘は、武道を使った素手によるもので、これは黒澤の反省の表れだった。