「男はつらいよ 寅次郎恋歌」
1971年12月29日公開。
マドンナは、池内淳子。
男はつらいよシリーズ第8作。
観客動員数:148万1000人
配給収入:4億円
脚本:山田洋次・朝間義隆
監督::山田洋次
出演者:
渥美清、倍賞千恵子、前田吟、穂積隆信、三崎千恵子、太宰久雄、吉田義夫、森川信、笠智衆、志村喬、池内淳子
あらすじ:
例によって車寅次郎は半年ぶりで故郷柴又へ帰ってきた。
一同は歓迎したつもりだったが、些細な言葉のゆき違いから竜造やつねと喧嘩となり、又もや旅に出ることになった。
寅が去って静かになったある日、博の母が危篤という電報が入り、光男を竜造夫婦に託した博とさくらは岡山へ急いだ。
博の父の風票一郎は元大学教授で、研究一筋に生きてきた学者だった。
葬式の日、驚いたことに寅がヒョッコリ現われた。
柴又に電話したことから、葬式のことを知り、近くまで来ていたから寄ったという。
しかし、旅先とはいえ、派手なチェックの背広姿である。
さくらは近所の人から借りたダブダブのモーニングを寅に着せ、葬儀に参列させるが、トンチンカンなことばかりやってその場をしらけさせてしまう。
岡山で生涯生活するという父・一郎を一人残して毅、修、博の兄弟は去っていくが、一郎の淋しい生活に同情した寅は一度は去った諏訪家に戻ってくる。
一郎も、自分のこれまでの人生をふりかえって、人間らしい生活をするよう寅に語った。
秋も深まった頃、柴又「とらや」で皆が集まって寅の噂をしているところに、題経寺山門の近くに最近開店したコーヒー店の女主人・六波羅貴子が挨拶に来た。
この美人を見て一同は身震いした。
もしこの場に寅が居合わせたらどうなることか、と考えたからである。
しかも、何たる不幸か、寅はその日帰ってきたのである。
みんなの予感は摘中し、寅は貴子に身も心も奪われて、そのまま柴又に滞在する仕儀と相成った。
貴子には、学という小学校四年になる男の子があった。
学は自閉症的な性格のうえに、新しい学校にも馴染めず、貴子も心を痛めていた。
しかし、学は寅にすっかりなつき、明るく元気になった。
貴子は寅に感謝した。
そして寅の貴子に対する思慕はますます高まり、三人一緒に生活する夢まで見るようになった。
さくらや竜造たちは、寅がいつ又失恋することかとハラハラしながら見守っていた。
みんなが、そろそろ二枚目が現われて例によって失恋する時分だと話しているところに寅が帰ってきて、旅に出るために荷物をまとめだした。
寅は、心配するさくらに「いくら馬鹿な俺だって潮時ってものを考えてるよ」と言い残すと、どこへともなく旅だっていった。
コメント:
「寅さんみたいになっちゃうよ」って子供が叱られるエピソードから始まる本作。
ひろしの母親が亡くなり岡山の実家へ葬式に出向くさくらだが、そこへ寅さんも現れる。
その後ひろしの実父親と交流し、平凡な暮らしこそ幸せだと教えられ、寅は柴又へ帰る。
その後、寅のような旅ガラスと、真っ当な生活のどちらがいいのかという話で展開する。
人生を考えさせるくだりも山田洋次ならではのヒューマンドラマだ。
今回のマドンナは池内淳子の演じる、帝釈天のすぐそばに新しく開店したコーヒーショップの美人ママ。
そして、いつものように恋が始まるのだが。
最期は、寅さんの失恋になるんのだが、今回は少し訳が違う。
相手の悩みはお金の問題なのだが、それを解決することが出来ない寅さんは、自ら身を引くという展開なのだ。
寅さんの失恋の仕方に工夫を凝らす山田洋次監督の知恵に脱帽!
今回が、初代おいちゃん役の森川信の最後になってしまった。
「寅は、ほんとに馬鹿だねえ」というあのせりふが懐かしい。
寅さん映画での貴重なわき役としていつも楽しませてくれた森川信の冥福を祈りたい。