「昭和残侠伝 血染めの唐獅子」
1967年7月8日公開。
上野の博覧会場建設にまつわるトラブルを背景とした侠客・高倉健の殴り込み!
昭和残侠伝シリーズ第4作
脚本:鈴木則文、鳥居元宏
監督:マキノ雅弘
出演者:
高倉健、池部良、藤純子、津川雅彦、金子信雄、加藤嘉、天津敏、河津清三郎、山城新伍
あらすじ:
昭和初期の浅草が舞台。
浅草界隈の左官、大工をまとめ信望を一身に集める鳶政(加藤嘉)は、今は病身で、後取りで小頭の秀次郎(高倉健)が兵役から帰還してくるのを待っていた。
そうした時、東京で博覧会が開かれることになり、会場が上野に決まった。
上野は鳶政の縄張りだったが、博徒・阿久根一家が札束をつんで工事の利権を譲れと言ってきた。
これを断った鳶政は阿久津の子分三日仏(天津敏)に殺された。
阿久津(河津清三郎)はその上、市の土木局長・高見沢(金子信雄)と結託し、鳶政傘下の業者を買収してしまった。
そんなやり方に、阿久津の代貸し重吉(池部良)とその妹・文代(藤純子)は心を痛めていた。
重吉は秀次郎とは親友だった。
やがて秀次郎が帰ってきた。
そして入札は無事に鳶政一家に落ち、会場建設の大工事が始った。
そんな時、音吉(山城新伍)が芸者染次を身請けするため大切な纒を質屋の岩源に渡し、それが阿久津の手に渡るという事件が起った。
音吉は責任を感じそれを取り返しに行って殺され、染次も阿久津に身を売る約束で纒を取り返したが、音吉の後を追って死んだ。
秀次郎たちは阿久津への激しい怒りに駆られたものの、今は工事の方が大切と会場建設に全力を注ぐのだった。
しかし阿久津たちはそんな鳶政一家に次々と工事の妨害を仕掛けてきた。
それをじっと耐えていた秀次郎たちだったが、工事現場に放火された時は勘忍袋の緒を切らした。
一方、度重なる阿久津の悪どいやり方に重吉は盃を叩き返し、秀次郎の許に駆けつけた。
ちょうど秀次郎は、ひとりで殴り込もうとする鳶政のひとり息子明夫を制し、自分で行こうとしていた。
かわりに秀次郎と重吉が阿久津一家に殴り込んだ。
二人は思う存分暴れ回り、たちまち修羅場と化したが、その中で重吉が三日仏に殺された。
しかし、唐獅子牡丹の刺青を背に暴れる秀次郎に、阿久津も三日仏も倒されていった。
最期の殴り込みまでの貴重な映像:
ご覧ください。
コメント:
今回は、監督がマキノ雅弘。
さすが男女の情を描いたら天下一のマキノの演出だけあって、高倉健を慕う藤純子の姿が美しい。
殴り込みの殺陣もひと際切れ味が良い。
「日本侠客伝」シリーズで見事な職人芸を発揮してきたマキノ監督だけあって見どころの多い娯楽作品になっている。
昭和初期の上野で開催される東京博覧会の工事請負を巡る浅草の鳶職と悪辣ヤクザとの闘いを描く。
秀次郎を頭とする鳶政一家が鳶職を守る義理人情の世界であるのに対し、入札制度を主張する阿久津組は新興産業の代表格。
したがって、ストーリーは伝統vs革新という対立構図になっている。
いつ見ても健サンと池部良のコンビのカッコよさには痺れる。
クライマックスとなる最後の14分間の映像には、健さんが歌う「唐獅子牡丹」の替え歌があり、これがまた良い。
昭和残侠伝の真骨頂が溢れている。