北野武映画「監督・ばんざい!」 映画製作のジャンルに悩む監督キタノ・タケシのウルトラバラエティ! | 人生・嵐も晴れもあり!

人生・嵐も晴れもあり!

人生はドラマ!
映画、音楽、文学、歴史、毎日の暮らしなどさまざまな分野についての情報やコメントをアップしています。

「監督・ばんざい!」

 

 

 

 

監督・ばんざい! 予告編

 

 

 

 

 

2007年6月2日公開。

ありとあらゆるジャンルの映画を手あたり次第に製作する北野武ワールド。

第64回ヴェネツィア国際映画祭特別招待作品。

北野武監督の第13作。

 

 

 

 

 

監督・脚本:北野武

 

キャスト:

主人公:

  • キタノ・タケシ - ビートたけし

ギャング映画

  • ヤクザ - ビートたけし
  • 若い衆 - 寺島進
  • 久松 - 菅田俊
  • 久松組若頭 - 石橋保

『定年』

  • 親父 - ビートたけし
  • 妻 - 松坂慶子
  • 娘・明子 - 木村佳乃
  • バーのマダム - 入江若葉

恋愛映画

  • 男 - ビートたけし
  • ヒロイン - 内田有紀

『コールタールの力道山』

  • マサオ - 髙道峻
  • マサオの父 - ビートたけし
  • マサオの母 - 藤田弓子
  • 子供 - 中嶋和也、三瓶憂拓、若林航平
  • 車を拾った男 - 有薗芳記
  • チンピラ - モロ師岡
  • 奥目ババァ - 福井裕子

『蒼い鴉 忍 PART2』

  • たけし忍者 - ビートたけし
  • 家老 - 谷本一
  • 家臣 - 新納敏正

『能楽堂』

  • 探偵 - ビートたけし
  • 能面男 - 渡辺哲
  • 家の主 - 田野良樹

『約束の日』

  • 吉祥寺太/天文学者・高橋 - ビートたけし
  • 東大泉大善 - 江守徹
  • 高円寺久美子 - 岸本加世子
  • 高円寺喜美子 - 鈴木杏
  • 女中 - 吉行和子
  • 白いベンツの紳士 - 宝田明
  • 東大泉の息子 - 桐生康詩(現:桐生コウジ)
  • 天文学者・山本 - 大杉漣
  • 井出博士 - 井手らっきょ
  • 空手道場の師範代 - 六平直政
  • 空手道場の太鼓係 - つまみ枝豆
  • 蝶天ラーメン店員A - 蝶野正洋
  • 蝶天ラーメン店員B - 天山広吉
  • 蝶天ラーメンの客 - 真壁刀義、邪道、外道、矢野通、マスクドC.T.U
  • 司会者 - 江口ともみ
  • 若者 - 福士誠治
  • 岩の上の男 - ゾマホン

 

あらすじ:

 

おバカな映画監督キタノ・タケシ(ビートたけし)は、次に撮る映画の内容で珍しく悩んでいた。

彼のこれまでの代表作で最も得意とするのはギャング映画だったが、あろうことか「暴力映画は二度と撮らない!」と宣言してしまったのだ。

後悔先に立たず、今度ばかりは心底参ってしまった。

とはいえ、ヒット作を世に送り出そうと、これまで手のつけてこなかったタイプの映画に片っ端から挑戦してみることに。

まずは海外の映画祭に受けそうな<小津安二郎風人情劇>。

しかし今のご時勢、平凡な庶民の幸福をのんびり描く映画に客が入るわけがない。

それじゃブームに便乗してノスタルジー溢れる<昭和30年代映画>。

ちょうど自分の生まれ育った時代だし、誰よりもうまく料理できるはず、と思ったのも束の間、リアリティーがあり過ぎて、暴力映画よりもひどい話になってしまった。

これもダメ。じゃあハリウッド・リメイクを期待した<ホラー映画>。

お涙頂戴の<ラブ・ストーリー>。

殺陣・ワイヤーアクション全開の<時代劇>。

さらには<SFスペクタクル>などに挑む。

しかしことごとく中断。

悲嘆し、追いつめられた監督は、“映画を愛する”全人類に向けて「これでも食らえ!」とばかり閃いた1本の映画にとりかかることにする。

金儲けのためなら何でもやる、ワル知恵だけが頼りのセコいがドジなサギ師の母(岸本加世子)とその娘(鈴木杏)。

2人が目をつけたのは、政財界の大物・東大泉(江守徹)の子息らしき学生服の男。

財産目当てにその男に娘を嫁がせようと目論んだのだが、実はこの男、東大泉に30年以上遣える生真面目な秘書、吉祥寺太(ビートたけし)。

しかも実は貧乏な家の息子だった。

そこから始まり、次々とめまぐるしく展開するあまりにも予測不可能な、空前絶後のストーリーに映画の神様もあきれ果てる。

地球には天地をひっくり返す、人類史上かつてない大異変が起きようとしていた……。

 

 

コメント:

 

伊武雅刀のナレーションで始まる北野監督の自己パロディが笑わせる。
前半は、コメディ映画というより、映画ネタのコント集。
このあたりはテレビでビートたけしのギャグに馴染んだ人は大受けだろう。

 

北野武が監督として世界的な評価を受けることと、興行的に成功することの両方をめざして苦心惨憺してきたことの独白の映画。
確かに興行的には苦しんだ北野監督は美意識やギャグ感覚など、映画館に足を運ぶ観客との微妙なズレにストレスを感じたのだろう。

自己解体の試みとも思える異色作。 

 

北野監督は、は第30回モスクワ映画祭特別功労賞を受賞した際に受けたインタビューで、前作『TAKESHIS'』とこの映画は自分が一番沈んだ最低の時に製作した映画だと語った。

自身が求める芸術と日本での低評価との間で悩み、同時に2つ手に入らないものを求める中で「自分の映画が自分自身を壊していく」と感じ、葛藤のなかで生まれた映画だという。

また、この映画はフェデリコ・フェリーニ監督の映画『8 1/2』の影響を受けているとも語っている。

 

どの名監督も、実は100%大成功しているという訳ではない。

あの巨匠・黒澤明にしろ、山田洋次にしろ、今村昌平にしろ、実際には売れなくて苦しんだ作品がいくつもある。

北野武という監督は、そんな映画製作の苦労の内輪話をもネタにしてしまう、観客の近くにいる芸術家だと言えるのではないだろうか。