89. 5回目の電話 | 1/4世紀~詐欺師とペテン師

1/4世紀~詐欺師とペテン師

事実は小説より奇なり
この言葉がピタッとハマる…

重め恋愛日記と日常の日記
2部構成って感じです。

仲良くしてくれると尻尾振ります。

異国に来て5ヶ月。


私はバックパッカー宿暮らしではなく
ヒッピー村で出逢った
明るいイタリア人らの家に間借りしていた。


素っ裸で川で泳いだり、
上半身はビキニでトマト摘んだり、
夜はファイヤーダンス…
そんなヒッピー村でで知り合ったご機嫌な人達



シェアハウスというよりは居候。


家賃をというと
「良いって。それよりワイン飲む?」笑う人達


家賃と言っても
生活の時間帯が極端に違う5人が住む家は
3ベッドルームで眠い奴がベッドで寝る。
もしくは誰かの寝ているベッドに潜り込む。
ソファーや庭のハンモックだったり。


マリファナと煙草とお香の香り、
誰かのビール、ワイン
もしくはコーヒーがテーブルの上にはいつもある。


それぞれバイトが休みの日は浜辺でドラムを叩き、ポイに火を点けクルクル踊る。

(詳しくは前の方の日記読んで下さい。)



誰かがご飯を作る
もしくは誰かがご飯を持って帰ってくる。



まさしくヒッピー風な生活。





その1人、ニーナがある日…


モカ。この英語のメニューさ、日本語に出来る?


バイト先のレストランから
メニュー表を持って来たニーナ。
(ヒッピー村の後、モカと言う名が定着した私)


うん、出来るよ。
PCあればキレイに仕上げれるけど。


ホント?超助かる!
日本人の注文取るの大変なの! 




ニーナの働くレストランのオーナーの家で
パソコンを借りて
日本語フォントを入れてメニューを作った。



モーカ!! 本当にありがとう‼
コレは助かる‼ 愛してるよ‼︎



イタリアおっさんは私の3回頬にキスをした。

そして1ページにつき…と言って250ドル。


この国に来て初めてのちゃんとした収入。




嬉しかったと同時に
こんな事で3万円以上も!?と驚いた。

水商売の金銭感覚はだいぶ薄れていた。




数日後、
他の同居人からも同様の仕事を依頼された。

また収入になった。




「モカの事を話したらさ〜」
メニュー作りの依頼は後を絶たなくなった。



日本人観光客で溢れる街だったが、
日本語メニューを置いてある店は皆無だった。


リーマンショックだとか
韓流ブームが来るとか想像も出来なかった時代。



ピザ屋の路上黒板に書き入れたり、
ホットドッグを売るバンの中の壁に書いたりもした。



観光客用の商店街の
買い物地図を作るというお手伝いもした。


何度も会う看板屋さんとも知人になった。


ハチミツ、サプリメント
その効用を書いたブローシャや
ワインの産地説明のチラシ、革製品の手入れ方法。






〜シシリアの風に乗せて
〜ローマの古き良き香りと共に
~神話世界の響きを添えて



イタリアン、ギリシャ料理、
何軒分作ったか定かでないのだが、
こんな一文もを付け足して書く様になった(笑)





プリペイド式の携帯とノートパソコンを買った。


5ヶ月目にして荷物が少しだけ増えた。

華丸が迎えに来るのにと微妙な気分だった。




海をボーッと眺めていると携帯が鳴り、
今日のオススメを黒板に書くと
その日のランチは無料になった。


日々のディナーも
多くのレストランが知人の店になっていたので然り。




そして

この国に来て5回目の15日が来た。


もう半年が経ったという事。


愛しい彼との約束の15日。




「彼氏に電話してくるね。」

同居人らに告げ
家を出て暗い夜道を公衆電話に向かった。




5回目の電話。


8個目のコイン投入。


12個目のコイン。


コインが無くなると
お札を崩して1ドル玉を作り公衆電話に戻る。



13個目。


17個目。


23個目。



ポケットに入っていたお金は無くなった。




冷たい公衆電話は
1ドルを飲み込み続けただけだった。




何度掛けても同じだった






1ドルを飲み込んだ電話から聞こえる声




「お掛けになった電話番号は現在使われておりません。」