81.やる気もなく 異国の海の前 | 1/4世紀~詐欺師とペテン師

1/4世紀~詐欺師とペテン師

事実は小説より奇なり
この言葉がピタッとハマる…

重め恋愛日記と日常の日記
2部構成って感じです。

仲良くしてくれると尻尾振ります。

華丸との最後の会話


マンションは友人に又貸ししたままで行く。
1,2年は住んでくれるって言うし
家具もこのままで良いし。

そう。

出発日だけどね…。

いいよ、向こうから15日に電話して。

…あ。そう。



あっけない会話だった。
私はこの感じだと
「帰って来い。」と言われるまで半年くらいだと思った。



観光でふらり旅を沢山していた私は
観光ビザだと延長して半年だと聞いていたので、
残高証明を銀行で取り、
まずは1年の長期ホリデービザを取得した。
実際に所持していたのはそう多くない金額だったので残高証明は知人に借りたお金を入金して発行。


1年迎えに来てくれなかったら?
ヒッチハイクの人達のように
転々と次の国へと
観光ビザのみで移動していけば違法ではないのかな。

どれくらいこの国に居るのかも、
居られるのかも分かっていない私は部屋も借りず、
街のバックパッカーの一部屋を
1日約1500円で借り、
一日中芝生の上で海を眺めるだけの日々を過ごした。


街ではお土産屋さんでバイトをする日本人が
「いらっしゃいませ〜」「見て行きませんか〜?」と観光客に声を掛けていた。

夢か何かを抱いて異国に来た同世代の人達。
海の見える芝生に座り何時間も
見えない太平洋の向こう側を見つめる空っぽの私。



約束の15日になった。


公衆電話から電話をした。




もしもし。

私。

うん。

元気?体調は?

頭痛い。

そっか…気をつけてね。

…うん、ありがと。じゃぁ切るね。




10秒もない電話だった。
華丸は経営する店を契約の事情からか、
まだ店を閉めれてなかったので仕事中。

後ろからはカラオケの音が聞こえる。
仕方ないといえばそこまでだが、
寂しくて電話の後は1人泣いた。




芝生の上では毎日イスラエル人が
ファイヤーダンスやドラムの練習をしていた。


ずっと誰とも会話していない寂しさからか
意を決して拙い英語で話しかけてみた。




難しいの?
一昨日よりは上手くなったよね。


ありがとう。
まだ火を点けたら火傷するだろうね(笑)


そのドラム…触っても良い?


もちろん。
脚で抱えて…こうだよ。



次の日も芝生の上で待ち合わせ。
ボロボロのバンに住むイスラエル人エゼルが、
私の異国での初めての友達になった。


少しブロンドがかったくるくる巻き毛
青い目エゼルは同い年。
黒髪のアハロンという従兄弟と2人
アジアをずっと旅して来て、
今はこの国を旅してる最中だと言った。



南は何してる人なの?
ココに2週間は座ってるよね?


何もしてないの。
何をしたら良いか分からないの。


……南、僕らと山に行かない?


……山?


うん。ここから7時間くらいのトコにね、
自由な人達が住む村があるんだ。
普通は入れない村なんだけどね、
来週から1週間だけ一般の人も入れてくれて…
キャンプ生活なんだけど…。



行く!!




自由な人達とか、普通は入れないとか、
全く意味は分からなかったけど。
初めての友達がいなくなるのがイヤだったのと
誘われた嬉しさで「行く」と答えた。




明日から行くんだけど…。



明日?  ……荷物。



下着2枚とTシャツ2枚、そんなモンで良いよ。
食べ物は用意するし。
寝袋もテントもある。
南のバッパーって▲だよね?
キャシーのトコだ。
キャシーに南のスーツケース預けよう。



キャシーって?



アハロンの恋人。受け付けの人だよ。
僕らベトナムでキャシーと出会って…
アハロンがキャシーとそうなって…。
で、キャシーを迎えにこの国に来たんだ。




翌日、キャシーの家にスーツケースを預け、
ボロボロのバンで出発した。




2人のヒッピーイスラエル人と、
キャシーの働くバッパーに泊まっていて「開かれる村」に興味を持っていたドイツ人女性2人。
ベトナム系オーストラリア人のキャシー。
そして日本人の私。



どこに行くのか、
自由な人達ってどういう事なのか、
何も分かってない私。