Japan Rail Pass - 1 ~2015年 ジャパンレールパスの旅~ | 私の回想録 

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レミニセンス - 回想録。
過去の記憶を呼び返しながら、
備忘録として残したい。
記事が長いが何とぞご容赦ください。

海外からの旅行者に対する特別な周遊券として、指定期間中のJR全区域と新幹線(のぞみを除く)、特急(寝台は除く)、が乗り放題になるジャパンレールパスがある。7日間、14日間、21日間での期日指定での購入ができる。7日間であれば、現行料金でUS$272(29,110円)、グリーン車に乗れるパスはUS$364(38,880円)と非常にお得である。海外から日本への外国人旅行者が増えているのは、このレールパスが使えることが大きな支えになっていると思われる。

 

 

私の13年間のアメリカ赴任中、私達家族はPermanent Residence Card (Green Card)=永住権を取得し、米国に滞在していた。市民権、永住権を所持していれば、日本人であってもこのレールパスの購入が可能であった。残念なことにビザで滞在している駐在員はこの権利がなく、購入することはできない。更に最近、グリーンカード所持者に対しても購入資格がより厳しくなり、グリーンカードを持っていることに加え、10年間以上の米国在留証を在外公館に発行してもらわねばならなくなった。

 

幸いなことに私と家族は、過去2回、レールパスを購入することができ、日本への一時帰国時に7日間の贅沢な旅をした。

最初は西へ旅をした。グリーン車利用可能なレールパスである。この時は全日程のスケジュールを点と線の如く事前に列車を決めて指定席を確保した。

 

初日.新横浜 -(ひかり)- 新大阪 -(さくら)- 博多

 

何故かこのレールパスは新幹線のぞみには使えないので、少し時間はかかるが、ひかりで新大阪へ行き、タクシーで道頓堀観光に向かった。昼食は今井できつねうどんをいただいた。大阪の甘めの昆布だしのうどんも美味である。つるっとした舌ざわりの大阪うどんは、かたい歯ごたえの讃岐うどんとは違い、実は私好みなのである。さらっと道頓堀、法善寺横丁をぶらつき、時間に余裕もあったので梅田まで歩き、地下鉄で新大阪に戻る。新大阪駅の"くくる"で、たこ焼きを買い、博多行き新幹線車内のビールの友とした。

 

 

博多到着、駅近くのホテルにチェックインし、地下鉄で1駅、天神へ向かった。今晩の食事は博多水炊き、活いかの姿造りである。コラーゲンたっぷりの白濁した鶏スープにしっかりとした歯ごたえの鶏肉、鶏団子、砂ずり、たっぷりの野菜、そして〆の雑炊。たまらん。

 

 

そして驚くほど透き通る呼子イカの姿造りも博多名物。欠かすことはできない。生きているのでぴくぴく動いて、げそは吸盤が舌に絡みつく。これもたまらん。

ごま鯖。これも博多に来たら外せない。

 

二日目 博多 -(バス)- 大宰府 - (西鉄) - 天神 - 福岡国際センター - 中州

 

 

今日の午後は大相撲九州場所観戦である。そこで午前中は太宰府天満宮へ行くこととした。2度目であるが、初回の記憶があまりない。本堂を参拝した後、伊勢ケ浜部屋が天満宮内で巡業部屋を持っているということなので探してみたが、稽古はすでに終わっていた。横綱の暴行事件があり、今は消沈しているが、この当時の伊勢ケ浜部屋は絶頂期であった。横綱に日馬富士、大関に照ノ富士、関取に宝富士、安美錦(両関取とも元関脇)を擁し、この日、日馬富士は白鵬に勝ち、この場所、日馬富士が優勝した。そして元横綱の北の湖理事長がこの翌日に突然死去した場所でもある。

 

西鉄の大宰府駅に向かう参道に大正ロマンの喫茶店、風見鶏があり、興味をそそられお茶をする。また近くにあったスターバックスも外観が洒落ていて、みんなが写真を撮っていた。

 

 

 

天神駅に着いたら、お昼でありここは九州とんこつラーメンである。長浜ナンバーワンという屋台から転じた店に入った。骨臭いドロッとしたラーメンかと思っていたら、さらっと上品で食べやすいラーメンであった。九州ラーメンの発祥は久留米の南京千両という屋台であり、火加減を間違えたことから偶然できた白濁スープのラーメンと聞いている。そこは現在も本店、屋台とも繁盛しているそうだ。

 

     

 

大相撲九州場所は券が手に入りやすい。満員御礼が出ているが空席が目立つ。そしてヤジが下品でうるさいのが特徴と思った。(結構面白いが)そして、観客席が狭いので力士のすぐ近くまで近づくことができる。

本日の結果は前述のとおり伊勢ケ浜部屋絶好調、安美錦も勝ち、加えて最後の取り組みで照ノ富士も鶴竜に勝った。日馬富士が白鵬に勝った時は、座布団が飛ぶは飛ぶは。結構危なかった。

 

この日の取り組みが終了後、バス、タクシーは混んでいるので、福岡国際センターから中州に歩いて向かう。お目当ては屋台である。運河に面して屋台が並んでいるが、結構どの屋台も混んでいて、空席ができたらもぐりこむような感じである。ラーメン、おでん、串焼きを出す店が多く、料理の種類のわりに値段が結構高い。観光地価格と言える。期待していたのでちょっとがっかりである。管理は大変なのかもしれないが、もっと多く出店させて味、値段、サービスを競い合わせた方がいいように思われる。

 

この日は西鉄利用で、レールパスを使用することはなかった。

 

三日目  博多-広島-宮島口 -厳島神社

 

博多駅周辺はどこへいっても500円くらいで充実した朝定食が提供されているが、今日は博多のあの柔らかいうどんを食べておく。確かに柔らかい。これもありか。

 

新幹線で広島に向かい、JR在来線に乗り換え厳島神社の対岸の宮島口駅で降り、JRフェリーで厳島神社に渡った。

朝は干潮、鳥居まで歩けるほど潮が引いていた。参道で名物の焼き牡蠣を買って鳥居に向かうと、もう潮が上がってきて、鳥居までは歩いていけなくなっていた。

 

 

 

満潮時は水に浮かぶ赤い境内を一通り回り、昼食とする。やはりここは広島お好み焼きか。我社のアメリカの倉庫でもお世話になっているオタフクソースの旗を掲げる店に入る。観光地でもあるので普通においしかった。厳島神社は、海辺の赤い境内だけでなく、島の上部まで広がる広大な敷地と五重塔など様々な建物を持つ。ぐるっと回れば夕方となり、フェリーで宮島口へ戻り、部屋から湾の景色が一望できるホテルに一泊する。

 

本日の交通費はフェリーも含めすべて レールパスが使えた。

 

四日目 宮島口-広島-新尾道-きららエクスプレスバス-松山-道後温泉

 

私はこれまで四国に渡ったことがなかった。ようやく瀬戸内海の島々に架かる橋を通ることとなった。新幹線で新尾道駅に向かい、ここから中国バスのきららエクスプレスで、愛媛県松山へ向かう。しまなみ海道という、尾道から因島、大三島、大島、そして伊予今治と、島と橋が見事に結ばれている。このバスはレールパス適用外。

 

 

松山市は路面電車がシンボルで、道後温泉、松山城へも路面電車を利用する。坊ちゃん電車というレトロな車両もあって、どの車内も結構込み合っている。道後温泉に向かい、旅館に荷物をおいて、ふたたび路面電車に乗り、松山城に向かう。本丸は山の上にあるので、ロープウェイとスキー場にあるようなリフトが山頂まで敷かれている。歩いて登ることもできるが、結構な急坂である。松山城は本丸、二之丸、三之丸を有する日本三大連立式平山城の一つである名城である。江戸から昭和までの度重なる火災で、現存の建物はほとんどが復元、建て替えられたものであるが、数々の重要文化財を有している。

 

   

 

 

今日の宿は道後温泉中心近く、古民家のような古い建物で、食事、風呂なし、温泉は外湯を利用する。有名な建物、道後温泉本館は共同浴場として利用するには古くて汚いと聞いていたので、まず近くの新しめの共同温泉で湯あみを済ませる。道後温泉本館の周りには色々な店があり、本館はちょうどデコレーション、ライトアップが施されていた。今ではやっぱりここの温泉にも入っておくべきだったと後悔している。

 

 

 

湯上りにはやはりビール、そして松山名物じゃこ天の揚げたてを肴とする。晩飯も外食になるが、名物鯛めしの店はどこも混んでいて、結局何を食べたか覚えていない。松山の鯛めしは、焼き鯛1尾を丸々米飯に炊き込んで分け合う料理であるが、宇和島あたりの鯛めしは鯛の刺身を醤油だれに和え、生たまご、ごま、きざみネギを混ぜたものを白飯に乗せるというまったく異なる鯛めしになる。

 

  これがじゃこ天

 松山の鯛めし

 

  宇和島の鯛めし

 

 

五日目 道後温泉-松山-(JR特急しおかぜ号)-岡山-姫路-姫路城

 

この日は松山から特急しおかぜで、四国予讃線から、香川に入り、宇多津から瀬戸大橋線、岡山まで行き、新幹線に乗り換えて姫路、そして姫路城の見学である。レールパスを使ったグリーン車での快適な列車旅である。

  松山駅のじゃこ天うどん 

 

朝早く道後温泉の旅館をでて、松山駅でじゃこ天うどんをいただく。当初の予定では、宇多津か、丸亀で一旦降りて讃岐うどんをと思ったが、姫路での時間を優先してそのまま岡山に向かった。特急しおかぜは、造船所の見える今治、新居浜と瀬戸内海沿いを走り、川之江を過ぎて香川県に入る。多度津、丸亀、宇多津から線が分かれ、瀬戸大橋を渡っていく。橋梁が邪魔して眺めはそれほどでもない。

 

 

岡山で新幹線に乗り継ぎ姫路に。駅前の今晩のホテルに荷物を置いて、改修工事が完了した姫路城に向かう。駅前から堂々とした真っ白な大天守が見える。城前の広場でフードフェスタが催されていたが無視して、お昼の店を探していると、城の入り口前にたまごやという名の店があった。卵かけごはんを提供する店であった。夢そだちという自家製の新鮮なたまごを提供するということで、ごはん、味噌汁、お新香にお代わり自由の生卵がついているだけである。これはこれで商売としてよく考えたと思った。サイドメニューが数点あり、明太子と焼きあなごも注文した。

 

 

 

姫路城は、改修工事直後の異様に真っ白かった天守も少し馴染んで自然になっていた。姫路城はその歴史の中で、基本は補修のみで、江戸時代の築城以降、焼け落ちず、そのままの構造が保たれた本物の城である。初めて天守の中を見学した時は感動したものである。

この日は祭日だったので非常に混んでいて、説明文までじっくり読んで観察できた前回とはだいぶ勝手が違い、急ぎ足で本丸の順路を巡るしかできなかった。そこで前回は行かなかった三の丸を廻ってみる。広大な庭と回廊を持つ三の丸は、あの千姫が大坂夏の陣以降に本多家に嫁いだ際に一時住んだ場所でもある。

 

 

その晩は旧友と会い、姫路の高級料理店で瀬戸内料理をご馳走になる。

 

六日目 姫路-新大阪-(JR特急サンダーバード号)-金沢-(JR特急能登かがり火号)-和倉温泉

 

この日も全線、レールパスが適用のグリーン車で姫路から金沢経由和倉温泉へ向かう。新幹線で新大阪、JR特急サンダーバードに乗り換え、金沢へ行く。途中の湖西線を走っているとき、虹が美しかった。

 

    

金沢到着後、昼食として目星をつけていた駅構内の寿司屋で、のどぐろも付いた握り寿司をいただく。酒は手取川。その後も家族が買い物をしている間、土産物屋の中にある利き酒コーナーでも、加賀の日本酒3種飲みを楽しむ。今晩の宿は和倉温泉。金沢-和倉温泉をオンライン予約する時、特別特急列車の花嫁のれんを取ろうとしたが、運行開始直後で人気が高かったのであろう、一瞬で取られてしまった。次の特急、能登かがり火号で和倉温泉に向かう。

 

この日の宿は、あの有名な加賀屋も考えたのだが、その隣の大正浪漫の宿、夜のライトアップが美しい、渡月庵に宿泊する。二間続きの24畳はあろうかという広い和室に、渋い内装。窓からは七尾湾と加賀屋新館が見える。全10部屋の宿なので、風呂はそれほど大きくないが十分と思えた。料理は部屋食ではないが、カニやアワビ、のどぐろといった特別料理を頼まなくても十分な種類の夕食であり、係の方が丁寧に料理の説明をしてくれた。

この日、あいにくの強風で周辺を探索することはやめておいた。

 

最終七日目 和倉温泉 -(特急サンダーバード号)- 金沢 (北陸新幹線)- 富山 (北陸新幹線)- 上野

 

朝は宿で充実した朝食を取り、比較的ゆっくりしてからチェックアウト。和倉温泉まで乗り入れた特急サンダーバード号で金沢に向かう。2度目になるが兼六園を散策する。前回は5月であったが、紅葉が美しいこの季節はまた格別の美しさである。昼は園内の茶屋で治部そばなるものを食したがあまりうまいものではなかった。

 

 

     

 

  富山名物 ますの寿司

 

近江市場も寄りたかったのであるが、富山にも寄りたいということもあり、金沢土産を買ってから富山に向かう。この日もあいにくの雨だったので、富山の市電(トラム)で市内を一周回ったのみで、駅弁ますの寿司を買って乗り込んだ北陸新幹線が今回のレールパスの最終利用となる。しかし、北陸新幹線は非常に込み合っていて、グリーン車が取れなかった。一般指定席も見事に満席である。もう日が落ちているので車窓から景色も見えず、上野までの退屈な睡眠旅で今回のジャパンレールパス旅行がしめくくられた。

日暮里の安宿(であるが広い和室と大浴場あり、悪くなかった)に泊まり、翌日は京成スカイライナーで成田空港へ向かい約10時間のフライトでロサンゼルスに帰った。

 

  京成スカイライナー  成田エクスプレスより早くて安い

 

思い返してみると結構ハードな旅だったが充実していた。心休む列車の旅であるからできたのだと思う。ロサンゼルスでは車か飛行機、またはその両方の旅になり、まず列車に乗ることはない。毎日の車の運転から解放され、安心な日本の列車旅は本当にいいものだ。それに日本各地の地域の名産物による美味な食事が楽しめたのは最高であった。

 

      ~ 2度目のレールパス旅行に続く