細川勝元邸(細川管領邸)推定再現ジオラマ制作 完成です! |  Kyotoから創造するARTBOX45°

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 歴史的建造物の模型・ジオラマなど当時の情景を蘇らせることに日々励んでいます。

宗秀斎です。

 

先月から制作していた細川管領邸推定再現ジオラマが遂に完成いたしました。

 
 
 
(洛中洛外図歴博甲本 細川管領邸部分)
(洛中洛外図上杉本 細川管領邸部分)
 

ここでおさらいをしてみることにします。

 
室町幕府花の御所再現ジオラマの連作として洛中洛外図の世界を模型にて再現を試みたものです。
同じく洛中洛外図上杉本の細川邸の構造と掛け合わせて制作しています。
洛中洛外図歴博甲本の制作年代は1520年頃とありますので、その時期の細川邸として推定再現しています。
この時期の細川家当主は15代の細川高国、16代稙国父子ですが、今回のテーマである「応仁の乱」の関連する建築物を焦点にあてて制作を進めているため、当主を11代細川勝元という設定で細川勝元邸として蘇らせています。正確には細川管領邸と呼びます。
 
この屋敷の正確な位置や規模について本格的な発掘調査はされておらず上記の洛中洛外図による検証というのが実情のようです。それによると京都市寺之内通りの南にあったといわれていますが、規模など具体的なことは現在も未知数のようです。
 
国際日本文化研究センター所蔵の京師地圖という明治34年に成立した室町時代中期頃の京都市内の古地図です。これによれば細川邸は足利将軍邸(花の御所)斜め向かいにあったようで意外にも将軍邸より規模が小さいようです。
 
またライバルだった山名宗全(やまなそうぜん)の屋敷も意外と近くにあったり…応仁の乱という大規模な戦で両軍の大将の屋敷がこんな至近距離だったことが驚きです…(゚ー゚;
 
この地図がどこまで信憑性があるか分かりませんが、少なくとも周辺の発掘調査もされているようですし、当時の残された資料かあるいは伝承でおおよそこの位置が示されていると思っております。
ただ…この規模だと断定することが難しく、今回の細川勝元邸の正確な縮尺や規模を算出できないのが実情です。
 
よって「日本建築学会計画系論文集」で示された細川邸復元配置図を元に制作しています。
細川邸の全容を図にしてみました。
 
個人的な調査ですが、この模型の制作実例として神奈川県立歴史博物館にございます。
これを制作されたのは京都で古建築模型を専門に制作されている株式会社さんけいhttp://www.m-sankei.co.jp/さんのみのようです。
おそらく個人として木製再現模型としては初ではないかと考えております。
 
室町時代中期の守護大名屋敷を再現された実例も少ないので、構造、情景を知るうえでも大変に意義のある試みであったと自負しています(^_^)
 

さて今回の主人公の細川勝元とは?どのような人物であったか簡単にまとめました。

 
前作の京都龍安寺を創建した人物でもあり、室町時代中期(1445〜)頃に足利幕府将軍に次ぐ管領(かんれい)という最高役職について長きに渡って実質的な最高権力者として君臨した人物です。かの有名な大戦「応仁の乱」の東軍総大将としても知られ、政敵で西軍の山名宗全と激しく争い、後の下克上(戦国時代)のキッカケを作った武将とも知られています。
 

テーマは「応仁の乱」

今回で「応仁の乱」関連の木製再現ジオラマでは「足利将軍邸」「京都龍安寺創建時」に続いて3作目となりました。
いずれも同時代に存在した建物であり、現在では当時の姿として残っているのは皆無に等しいです。
ちなみに現在ある龍安寺は応仁の乱で全焼しています。
 
当時の情景を意識した作風として仕上げているのでこの模型から当時の大名屋敷の風情など味わってもらえたらという意気込みで制作しました。数少ない資料から考証も困難でしたが何とか自分で納得のいく屏風の世界を模型にて引き出せたと考えています。
 

●作品詳細

 
●サイズは575mm×450 高さ約125mm(台座含め)です。
この模型の特徴として建物全体がほぼ板葺き屋根です。そのため今回の木製ジオラマは今までの中で一番制作費がかかっております…
 
 
 
この屋敷の特徴は回遊式庭園で特に屋根付渡り橋がポイントです。当時は戦国時代の宣教師ロイス・フロイスも絶賛するほど立派な庭園でした。
 
 
●主殿と常御殿との内苑
 
●中門と主殿前の広場
 
●常御殿前の庭
 
●常御殿中庭と回廊
 
●主殿から庫裏に向かう屋根付回廊と石庭
 
●裏門
 
●内郭の築地塀(完成前の撮影)外郭の築地塀により見えにくくなっているので、完成前の写真を掲載。ここは漆喰の築地塀です。目に見えない箇所まで作り込んでおります(^_^)
 
外郭の築地塀 絵図にもあるように土壁もリアルに表現してみました。
 
長刀を持つ門番と来客、対応する取次役。
 
 
 
門番や護衛の武士、遠侍から出る侍が来客に取次いでいる様子など侍フィギュアを作ってその様子を描いています。
 
主殿前の細川勝元(左)も登場。来客の知らせを受けているところです。
 
ネームプレートもアクリル版で制作。定番の装飾金具も取付。
 
 
いかがでしたでしょうか?簡単な完成作品の紹介でした。
他にも紹介しきれない写真がたくさんございますが、選別して写真を掲載しています。
 
それでも写真ではなかなか伝わりづらいのは難しいところですが…(゚ー゚;
 
尚、成り行きや個々の建物の詳細、制作過程など前回の記事で紹介しておりますので興味のある方は是非ご覧下さい。
 

まとめ

「応仁の乱」というテーマから走り出した木製再現模型。今年最後の作品になるものと考えていたので、難易度の高いモチーフに挑戦しました。妥協することもなく何とか完成させることができました。
また木製模型の制作時間も以前に比べると随分と早くなったように思います。それだけコツと経験、技術が幾分でも身についてきたのではと考えております。
でも、まだまだ…見直す所など課題も多いので今後も修練が必要です。
 
設計図や具体的な資料もなく絵図から模型で起こすという発想力、考察力が試される作品となりました。
 
細川邸という模型は認知度は薄いかもしれません。
しかし今回の模型は現存しない室町時代の大名屋敷を再現するということは、古来の建物を知るうえでも今後の再現模型を制作していく上で貴重な経験となりましたし、マイナーをメジャーに変えていくキッカケとして一躍担いたいという願望の一つでもあります。応仁の乱ブームもまさにその時期が来ていると僕は思っています。
 
調べていてもこの時代の大名屋敷を再現されている模型は大変少なく逆に言えば少ないからこそ当時はどんな構造だったのだろうかと興味を抱かずにはいられなくなったというのが正直な気持ちです。
今後も失われた建築物を再現し当時の情景を蘇らせ、その魅力を伝えていける作品を目指していきたいですし、それ以外でも興味あるものにどんどんチャレンジしていきたいと考えています。
 
 
これにて細川勝元邸(細川管領邸)推定再現ジオラマ制作は終了でございます。
 
次回作について決まり次第記事にしていきたいと考えております。
 
長い記事となってしまいました…
ご覧頂きまして有難うございました!!m(_ _ )m