最近、映画を観ていなかったが、シネマの会員登録をしていて6回に1回、無料で観られるので久々に観に行った。
観たのがこれ。
原子爆弾の父と呼ばれるオッペンハイマー。
彼一人で原爆を作ったわけではないが、リーダーである。
映画は冒頭から、戦後、彼が「赤狩り」の対象となり、追求されるシーンから始まる。
彼の妻、弟が元共産党員であったこと、彼自身も共産党に近く、ソ連に情報を漏らしていないか疑われた。
アメリカ史をなぞる展開だが、そこがオッペンハイマーの「言い訳」に映る。
なにより彼は積極的に戦争に加担した。
原子爆弾製造に嬉々として携わった。
そして広島、長崎で何十万という人を殺戮した。
科学者というのは得てして、政治感覚が鈍い。
戦争に正義がないと気づけない。
ナチス、帝国日本憎しで手を貸し、一般市民を大量殺戮することに違和感を抱かないのがおかしい。
原子爆弾の威力を試験するシーンで科学者たちがその成果に感動し、称賛しあうシーンは「アホか」の一言だ。
リーダーだったオッペンハイマーは英雄とされ、「TIME」誌の表紙も飾る。
戦後、彼は冷戦に備えての水爆作りに反対し、原爆を製造したことに後悔を示し、ヒューマンな一面を見せるももはや手遅れ。
ヒューマニズムではなく、政治=戦争の本質を見抜けない愚かさに気づけないことが決定的にダメだ。
映画はそれなりに観られた。
しかしどこまで言ってもオッペンハイマーの言い訳が描かれる。
監督も所詮、言い訳ではないかとわかっている節もあるが、故人の名誉を汚すことにためらいもあるのか曖昧だ。
そこがいかにも「アメリカ」映画らしい。
広島、長崎から79年、まだ苦しむ人もたくさんいるだろうし、終わりはない。
彼らにとっても胸糞悪い映画に違いない。
もし彼がいなければあんな悲惨な死、悲しみは避けられたかもしれない。
彼が拒否すれば誰か別な科学者が原爆を製造したかもしれないが、そういう仮説は意味がない。
彼は大量殺戮兵器を平然と作ったのだ。
悪人としか思えない。