小原乃梨子『ドラドラ子猫とチャカチャカ娘』(1970年) | 昭和レトロサウンド考房

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小原乃梨子『ドラドラ子猫とチャカチャカ娘』(1970年)
作詞:水野礼子 作曲:橋場清

本作は『チキチキマシン猛レース』などで有名なハンナ・バーベラ・プロダクション製作のアニメ『Josie and the Pussycats』の日本語吹き替え版の主題歌である。

 

 


放映権者のNET(現テレビ朝日)は、一連のハンナ・バーベラ作品を放映するにあたり、日本独自の主題歌を各個に制作した。『チキチキ~』をはじめとして、このシリーズは味わい深い主題歌が多い。

ドラドラ子猫

さてこの『ドラドラ子猫とチャカチャカ娘』、歌うのは“のび太”の声を長らく演じられた小原乃梨子さん(当時35歳)。
けっして本格歌手ではない小原乃梨子さんだが、懸命に歌う声が60~70年代流行のエレキバンドなアレンジに乗ってたいへん印象深い。
チャカチャカ娘という語感もたまらないものがある。

冒頭の歌詞「いたずら大好き 冒険大好き」の箇所は、
  Dm-A7-A7-Dm (Ⅰm-Ⅴ7-Ⅴ7-Ⅰm)
という 旋律的短音階 特有の和声進行である。ちょいとレトロで悲しげな響きのする進行であり、古くはアンドリューズ・シスターズ『O Joseph,Joseph』(1938年)などにその進行を見ることができる。
※『O Joseph,Joseph』は後年、『ニューヨーク恋物語』(1989年フジテレビ)の主題歌として EVEがカバー。


ドラドラ子猫Aメロ


メロディーに短音階の導音(Leading-tone)を積極的に使うことにより旋律的短音階が持つ “モノ悲しさ” がより強調される(丸印参照)。
身近なところでは、 Mi-Ke『想い出の九十九里浜』(1991年)、美少女戦士セーラームーンの主題歌『ムーンライト伝説』(1992年)にも同様の手法が見られ、いずれも歌の冒頭(Aメロ部分)に使用されている。


ドラドラ子猫Bメロ


Bメロの前半4小節は、A7-Dm-Gm7-C7-F は、いかにも日本のポップスらしい進行。
特に Gm7-C7-F という4度進行部分は、戦後の日本人が好む響きのひとつだと思われる。
『ぼくらのバロム・1』『戦え! 仮面ライダーV3』『がんばれロボコン』など、あの菊池俊輔先生もBメロ導入(サビ導入)に多用するする和声進行である。

にゃー

このシリーズは他にも、『スカイキッド・ブラック魔王』『ペネロッピー絶体絶命』など記憶に残る良曲が多いが、これらを作曲した橋場 清 さんについての情報は驚くほど少ない。個性的な作風だけに、もっと評価されてもよい作曲家だと思う。

(後日、訂正・加筆する場合があります)